住まいの今と未来をつたえる

リフォーム

バリアフリー・リノベーション講座3 トイレ編

2019.01.11


年齢を重ねていくと、トイレに行く頻度が増えていきます。
一日に何度も使う場所だからこそ、トイレはきれいに、かつ身体を思うように動かせなくなったとしても使いやすい仕様にすることをお勧めします。

そこで、今回のバリアフリー・リノベーション講座は「トイレ」について、ご紹介します。

▼「ポータブルトイレ」を使用する問題について

トイレはバリアフリー化・リノベーションしなくても、身体が不自由になったらポータブルトイレ※を使えばいい。高額な費用の掛かるリノベーションだからこそ、近年開発されている安価な製品を利用したい、と考える方も多いかと思います。
※ポータブルトイレとは
介護を受けている方が、部屋を移動することなく排泄を行うための介護用品。

トイレまで移動しなくても排泄が可能という利便性で普及してきたポータブルトイレですが、利用者の中には、以下のような不満の声もあります。
・ポータブルトイレを使うたびにバケツを洗わなくてはならず、手間はもちろん、感染症などに気を使わなくてはいけない。
・家族に排泄物の処理をしてもらうことになるのが、恥ずかしい、申し訳ない。

さらに2013年8月に内閣府が行ったアンケート調査によると、「介護の際に苦労すること」として、62.5%の在宅介護経験者(696人)が「排泄(特に排泄時の付き添いやおむつの交換など)」と回答しています。
このように、介護者側への負担が大きいだけではなく、排泄物を自分で処理できない介護受給者の「尊厳」も傷つけられてしまうデメリットがあります。
「要介護者にも使いやすいトイレ」をリノベーションで実現することは、要介護者と介護者が気持ちよく暮らせる家づくりにつながると言えるでしょう。

▼実際、どんなリノベーションが必要なの?

要介護者にとって、使いやすいトイレをつくるための要素は、以下の通り。

・手すりの設置
・出入口の作り替え
・床の貼り替え
・便器の付け替え

今回は、それぞれの項目に、どんなリノベーションが必要かどうかを確認していきましょう。

▼手すりの設置


トイレをひとりで行える、ということは、要介護者の人間としての尊厳を守るうえでとても大切な行為です。
歩行が困難になった方でも、手すりを使って排泄ができる配慮をすることで、精神的な安定だけではなく、介助してもらい続けることでの筋力低下を防ぐこともできます。

手すりを設置するべき場所は、3つ。

・ドア開閉の補助のための手すり(縦型)
足腰が弱くなってくると、ドアのノブに体重をかけてしまい、なかなか開けられなかったり、時にドアに重心を預けすぎて転倒してしまう危険性が高くなります。そこで、ドア以外に体重をかけ、力をかけられる手すりがあると便利です。

・トイレ内の移動のための手すり(横型)
建物の構造にもよりますが、多くの場合便座は入り口側に向かって設置されているもの。
杖や壁に頼って方向転換をした場合、重心が固定されず、転倒の危険性が高まります。
体の向きを変更するのを助けるために、壁に横型の手すりを取り付けることで、体重をかけるポイントを分散させ、重心を安定させましょう。

・便座からの立ち座り、座った状態を安定させるための手すり(縦型、横型両方)
年齢を重ねると、便座から立ち上がったりするのにも、かなりの労力を感じるようになります。座るとき、立ち上がるときに腰やひざの負担が少しでも減るよう、腕の筋力で補助をしながら座るための手すりを設置しましょう。
手すり付きでも座る動作を自分で行うことで、筋力の低下を遅らせることも期待できます。

★手すりの取り付けの注意点
人の手の大きさや、身長などによって、使いやすい手すりは異なります。
実際に手すりを使うことになる人にも体験してもらい、適切な太さ、設置位置を確認してから家族全員が使いやすいようにリノベーションをはじめましょう。

▼出入口の作り替え


トイレのドアは、建物によって様々なタイプのドアが設置されています。要介護者が今は歩行可能だとしても、将来的に車椅子になったときのことを考えて出入り口も一緒にリノベーションすることで、工事の度にかかる費用の軽減にもつながります。出入り口のバリアフリー・リノベーションで大切なのは下記の3点です。

・廊下とトイレの段差をなくす
年齢を重ねると、障害と感じるようになるのが、若いころには意識しなかった小さな段差。
トイレの出入り時の転倒を防ぐため、また車椅子でも移動を容易にするためにも、出入り口の段差はなくしましょう。

・ドアはスライド式の引き戸にする


・外からも鍵が開けられるようにする
排泄を自分でできるようにリノベーションをしていたとしても、トイレ内で転倒するなどの緊急事態は起こるもの。
そんな時に、トイレの内鍵が閉まったままでは、介護者の方も対処ができなくなってしまいます。そんな緊急時のために、外からでもトイレの鍵は開けられるように非常解錠装置付きのドアノブにしておきましょう。

★出入口の取り付けの注意点
建物の構造によっては、スライド式ドアの取り付けなどが難しい場合もあります。
そんな時はリノベーションを担当するスタッフに、設置可能なドアが他にもないかどうか相談してみましょう。

▼床の貼り替え


トイレは水を扱う空間ですし、排泄物で汚れることを考えると掃除のしやすい、清潔に保てる床を設置することがベターです。
トイレの床を選ぶうえでの基準は主に2つ。

・水やアンモニアに強い材質にする
・濡れても滑りにくい素材を使う

介護の方がいないでも要介護者の方が掃除しやすいよう、どんな風に掃除すればきれいになるかなども、共有しておくことが大切です!

▼便器の付け替え


長年住んでいる家のトイレの場合、トイレの便座が少し低かったり、水洗レバーがタンクについていたりと、年齢を重ねた方には少し使いづらい仕様になっていることも。
そこで、バリアフリー便器の見極め方をご紹介します。

バリアフリーの便座のポイントは2つ。

・便座の高さを、立ち座りがしやすいものに変える
∟便座の高さが低ければ低いほど、座る・立つ際の膝や腰の負担が大きくなります。
便座の高さが高いものを使い、座りやすく立ちやすい便器を選ぶことで、身体の負担を少しでも減らしましょう。

・自動水洗に変える
∟排泄後、身体をひねって水洗レバーを操作するのにも、身体の負担がかかります。
リモコンタイプや便座から離れたら自動で洗浄してくれる便器を選ぶことで、より清潔で快適なトイレを保つことが可能です。

▼トイレをリノベーションする間、トイレはどこを使うの?


トイレ全体をリフォームする場合、一定期間トイレが使用できなくなります。
その際、仮設トイレをスタッフが用意してくれることもありますが、マンション住まいの場合は、事前に近隣の方に許可を取る必要が出ることも。
また、スタッフが用意してくれた場合であっても、設置や撤去、レンタル料は別途発生するかの確認も必要です。
トイレ本体だけのリノベーションであれば、半日~1日程度の期間で工事は完了しますが、内装工事などを伴うと工事にかかる期間が数日となってしまいます。その間は家族で過ごせる仮住まいに住むのも一つの方法です。。
仮住まいついてはこちらの記事を参考にしてみてください。

▼まとめ


トイレ全体のリノベーションをする際には、床を剥がし、水道管を外して作業することになります。
トイレのみでなくご自宅全体を介護のためにリノベーションしたい、と考えている方は特に水回りを一度にリノベーションしてしまうのがおすすめ。
一回一回床を剥がして直して……という方法だと、こまごまと費用がかさんでしまいます。お得に、快適な住まいを手に入れるためにも、水回りの一挙リノベーションも検討してみてはいかがでしょうか。

水回り関係の介護リノベーションについては、過去の記事をご参照ください。

バリアフリー・リノベーション講座
講座1 浴室編 https://www.esumai.jp/article/3677.html
講座2 洗面所編 https://www.esumai.jp/article/3734.html

タグ TAG