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バリアフリー・リノベーション講座2 洗面所・脱衣所編

2018.12.21


両親の介護や自身の体の負担を減らすために、バリアフリー対応のリノベーションをする方が増えてきました。
できることなら、必要な時にはすでにバリアフリー化されていることが理想ですよね。そのため、昨今は早い段階からバリアフリー対策を立ててリノベーションを進めるために、一部の地方自治体では、要介護者がいなくてもバリアフリー工事の補助金を出す制度が始まっています。
せっかくリノベーションを考えるなら、将来のことを考慮してバリアフリー工事も組み込んだ計画にしてみませんか?
今回は、「洗面所・脱衣所」のバリアフリー・リノベーション方法について、ご紹介します。

▼洗面所・脱衣所に潜む事故の危険


お風呂場のリノベーション編では、主に転倒防止についてのバリアフリー対策のお話をしました。
洗顔・歯磨きなど、お風呂場よりも使用頻度の高い洗面所・脱衣所のバリアフリーは、生活環境を改善するのにさらに大切と言えます。

では、洗面所・脱衣所にはどのような危険が潜んでいるのでしょうか。

・ヒートショック現象(浴室と脱衣所の寒暖差によるショック死)
・洗面台を前かがみで使うことによる身体的負担
・衣服着脱による転倒
・床が濡れることによる転倒


浴室と脱衣所の寒暖差によるヒートショックに起因した事故や、着替えや洗顔など日常生活を送る上で頻繁に使う場所だからこそ脱衣所・洗面所には高齢者にとって危険が多くあります。
それではこれらの事故を防ぐためには、どのようなリノベーション対策をすればよいのでしょうか。ご自宅の状況にもよりますが、主に下記のような対策があります。

▼ヒートショック現象を防ぐには?


身体を動かしにくくなってくると、入浴に必要な動作(浴室との行き来や入浴前後の衣服の着脱などにも、かなりの時間がかかってしまいます。
これではせっかくお風呂で温まった体が冷えてしまうのに加え、冬場は急な寒暖差に身体への負担がかかり、ヒートショックを起こしてしまう危険性も高まってしまうことに。
近年のマンション設備では、多くがお風呂場に暖房を備え付けてある物件も増えていますが、脱衣所には備え付けの暖房が無いことも多いため、身体を冷やしやすい脱衣所には暖房を設置するのがおすすめです。
暖房設備をつけることは難しい……という場合には、床下に暖房器具を設置できるコンセントを設置するだけでも温度調節がしやすくなります。
しかし、暖房器具を置くことで脱衣所のスペースが狭くなってしまうため、出入りがしにくくなったり、転倒したときに火傷の原因となったりといったリスクもありますので、省スペースな物や安全性の高いものを選ぶのがおすすめです。
生活スタイルに合わせて、自分に合ったリノベーション方法を、担当スタッフとよく話し合ってみましょう。

▼椅子・車椅子に座ったまま使える洗面台がある!


多くの備え付け洗面台の場合、蛇口の下は収納スペースになっていますが、バリアフリー洗面台では収納スペースをとりはらった、カウンター式の洗面台が多くなります。
多くの洗面台では車椅子に座った状態で、手を洗ったり洗顔をしようとすると前かがみにならなければいけないので、腰に大きな負担がかかってしまいますが、収納スペースを作らずカウンター式の洗面台にすることで車椅子の足が洗面台に入るようになり、前かがみにならなくても洗面台を使うことができるというのが大きなメリットです。
さらに、多くの洗面所は、この蛇口が洗面台の壁に近い場所に設置されており、車椅子に座った人にとってはそこまで手を伸ばすのも大変ですが、水栓金具を長いものや、可動できるものに変更することでより使いやすい洗面台にすることができます。
車椅子の方が一人でも使いやすく、且つ、介助をする方にも使いやすい洗面台や蛇口はどのようなタイプのものがよいのかをしっかりと相談・試してみましょう。

逆に、バリアフリー洗面台にするからこそ起こる問題もあります。その一つが、収納問題。洗面所には、お風呂用洗剤やシャンプーなど、収納しなければいけないものがたくさんあります。
収納スペースも確保しつつ、車椅子や椅子を使って洗面台を使用できるようにしたい! という方は、各メーカーのショールームなどで実際に試しながら、スタッフに相談してみましょう。バリアフリー対策をするご家庭は年々増加傾向にあるため、毎年新しい商品も開発されていますので各社のカタログを取り寄せてみるのもよいかもしれません。
やはり実際にショールームで見て、自分のイメージにぴったり合った洗面台を探すことをおすすめします!


TOTO:車いす対応洗面 jp.toto.com

車椅子対応には設置も含め30万円ほどかかるのが一般的なようです。中には、お風呂場と洗面台、トイレなどの水回りを一気にリノベーションして値引きしてくれる会社もあるので、そのあたりもスタッフに相談してみましょう。

▼片足立ちで服を着る・脱ぐのが辛い……そんな時は


バリアフリーリノベーションというと、一番に思いつくのは手すりの設置ではないでしょうか?洗面所にも手すりを設置することで、服の着脱、身体を拭いている間の転倒予防になります。
身体が動かしにくくなってくると、片足立ちでズボンをはくにも一苦労……。
片手を壁につけてズボンをはくよりも、しっかりと握れる手すりをつけることで、重心が安定し、着脱が楽になります。また、手すりだけではなく、腰を掛けて着替えができるような椅子を設置するのも、転倒防止に効果的です。
しかし、暖房と同様こちらも脱衣所のスペースが狭くなってしまいますので、状況に合わせて選択しましょう。

▼バスマットでの転倒事故の危険を防ぐために……


絨毯の端につまづいて転倒する事故がリビングで起こるように、バスマットも同じくつまづいたり、バスマットに乗っていただけなのに、重心がずれてバスマットごと滑ってしまう……など、高齢者ではなくてもバスマットには転倒してしまう危険が潜んでいます。近年は転倒予防のバスマットもありますが、摩耗することで他のバスマットのように危険になってしまうことも。そこで、洗面所の床自体を滑りにくい素材に交換するリフォームもおすすめです。床をどんな素材にするかでも大きく変わりますが、下記のような素材のものがあります。

・コルク床
既存の床に貼り付けるだけでリフォームができるコルク床。濡れても丈夫なほか、裸足でも冷たく感じない素材であるのが特徴です。

・磁器床
つるつるとタイルのように滑ってしまうのでは? と思われる磁器床。現在はLIXILなどでも、表面に凹凸のついた滑りにくいタイルが提案されています。
「サーモタイル」というタイプを使えば、冷たくもならず、掃除もさっと拭けて清潔なのが特徴です。素材に関してもスタッフに相談して、一番使い勝手のいいものを実際に触って決めていきましょう。

▼おわりに

講座1で紹介したお風呂のリノベーション(https://www.esumai.jp/article/3677.html)に比べると洗面所・脱衣所のバリアフリー・リノベーションの多くは、転倒予防に特化したものが多くなりました。バリアフリー・リノベーションをしよう! と思っても洗面所・脱衣所を優先的に考える方は少ないかもしれませんが、毎日使う場所だからこそリノベーションによる快適さの向上が見込める場所と言えるかもしれません。
水回り関連は、排水管の撤去などで床材を剥がして工事をすることがほとんど。何度も床材を剥がして、そのたびに修繕費を払っていくと、その費用は馬鹿になりません。必要になったからリノベーションをする! のではなく、今後必要になるであろう箇所にも目を配ってみてください。

【過去のバリアフリー・リノベーション講座の記事はこちら】
講座1:浴室篇 https://www.esumai.jp/article/3677.html

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