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リフォーム

バリアフリー・リノベーション講座1 浴室編

2018.12.10

両親の介護や自身の体の負担を減らすために、バリアフリー対応のリノベーションをする方が増えてきました。
できることなら、必要な時にはすでにバリアフリー化されていることが理想ですよね。そのため、昨今は早い段階でバリアフリー対策を立ててリノベーションを進めるために、一部の地方自治体から、要介護者がいなくてもバリアフリー工事の補助金を出す運動が始まっています。
せっかくリノベーションを考えるなら、将来のことを考慮してバリアフリー工事も組み込んだ計画にしてみませんか?
今回は、生活には欠かせない「浴室」のバリアフリー・リノベーション方法について、ご紹介します。

▼どんな部分の対策が必要なの?


平成28年の消費者庁の発表によると、冬場の入浴中での溺死者数は10年前と比べて約7割増加しており、そのうちの9割は65歳以上の高齢者だったのだそう。
広いバスタブを設置する家庭が増えたため、バスタブで身体全体を伸ばして入浴する際に、滑って溺れてしまう危険性が昔と比べて高くなったのも原因の一つといわれています。
湯船につかっている時の溺水事故だけではなく、入口や浴室内での転倒事故、浴室と脱衣所の寒暖差によるヒートショックに起因した事故など、浴室には高齢者にとって危険が多くあります。
それではこれらの事故を防ぐためにはどのようなリノベーションで対策すればいいのでしょうか。ご自宅の状況にもよりますが、主に下記のような対策が一般的です。

・手すりの設置
・床材の交換
・入口段差の解消
・浴槽の交換
・暖房の設置

ご自宅の設備や環境にあわせて、必要な対策を検討しましょう。

▼手すりの設置


立ち上がる時、移動するときの転倒防止になるのが「手すりの設置」です。浴室は立ったり座ったりといった動作が多くなるため、手すりの設置は転倒防止に有効ですが、浴室の作りによって手すりを設置すべき位置は大きく変わります。ご自宅の浴室に必要な手すりの場所や位置はどこか、ということをしっかりと確認してから取り付けを行うようにしましょう。浴室で手すりが必要となる場所は主に下記のような場所があります。

①出入り口付近
特に出入口に段差があるつくりの浴室では、出入り口の段差につまずく転倒事故が起こりやすい場所です。ドア開閉をしている間や出入りの際に支えとなるようにドアノブ付近に手すりを設置すると転倒事故対策になります。脱衣所側と浴室側の両方に設置しましょう。

②洗い場移動用の手すり
浴室の床はすべりやすいため、入口からシャワーまでのわずかな移動でも転倒のリスクがあります。入口からシャワーまで少し距離のある浴室では、移動をサポートできるような横長の転倒防止用手すりがあると安心です。

③シャワー用椅子から立ち座りする用の手すり
使用している椅子に座った時につかまりやすい高さに設置します。その際、使用している椅子が身体に負担のかかる物ではないかも再確認しましょう。低すぎる椅子は立ち上がる時の負担が大きくなってしまうため、高めの座りやすい椅子の方が転倒防止や負担軽減といった期待ができます。

④浴槽出入り用の手すり
浴槽をまたぐ際の転倒を防止するための手すりです。浴槽内はお湯が入っているのに加えてつるつるしているため、足を踏み入れる際に滑ってしまい、壁に頭をぶつけたり浴槽内で溺れてしまう危険があります。浴槽に取り付けるタイプや壁に取り付けるタイプなど、いろいろなタイプがありますので浴槽のサイズやつくりに合わせて選びましょう。

⑤浴槽内の手すり
浴槽に入る際や出る際は、滑りやすい浴槽内で屈伸しなければならないので高齢の方にとっては負担が大きく、転倒や溺水といったリスクが高い場所です。そのため浴槽内や浴槽の上に手すりをつけておくと、浴槽内で滑るのを防止したり、座った時の位置を修正する際の支えになったりといった効果が期待できます。
また、浴槽内では水圧がかかっている状態のため、急に浴槽から立ち上がることで急激な血圧変動を起こしめまいなどを引き起こしてしまう危険性も。手すりを使ってゆっくりと立ち上がることは、転倒防止以外にも命を守る大切なポイントです。

浴室は、家の中のバリアフリー対策の中でも最も手すりが多い場所かもしれません。ですがそれほど、浴室内で多くの事故が起こっているのです。

手すりの設置はバリアフリー・リノベーションの中でも比較的手軽に行うことができますので、大切な家族やあなた自身を守るためにまずは手すりの設置を検討してみてはいかがでしょうか。

▼床材の交換

浴室の転倒事故は、手すりだけではなく、滑りにくい床材にリフォームすることでも防ぐことができます。滑りにくい床材の中には保温効果や水はけの向上といった機能を持っているものもありますので、バリアフリーという観点以外でも、メリットがあります。バリアフリー・リノベーションをするのであれば

・滑りにくい加工がされている
・水はけがいい
・断熱性に優れている
・転倒時の衝撃を吸収してくれる

といった機能がついている床材を選ぶのがおすすめです。
これらの条件を踏まえて、床材によく使われる各素材の特徴を確認してみましょう。

★樹脂素材
引用:https://www.toli.co.jp/product_floor/bathna.html
・滑りにくさ :〇
・水はけがいい:◎
・断熱性   :◎
・衝撃吸収  :◎

★木材

・滑りにくさ :◎
・水はけがいい:△
・断熱性   :◎
・衝撃吸収  :◎

★タイル

・滑りにくさ :△
・水はけがいい:◎
・断熱性   :△
・衝撃吸収  :×

素材だけの観点で判断するとこのようになりますが、商品によっては、同じ素材でも短所を解決するためにさまざまな加工を施したものもあります。
まずはショールームに行って、自分で素材に触れて好みのものを探してみるのをお勧めします!

▼入口段差の解消


最近では、廊下から浴室までフラットになるよう設計されていることも多いですが、築年数の経っている建物の場合、浴室と脱衣所の間に段差が設けられていることがあります。
ただでさえ滑りやすい浴室の出入り口に段差があると、転倒が誘発されてしまうことも。
段差を解消する大掛かりなリフォ―ムもありますが、手軽に段差を解消したい方は浴室すのこを敷くという方法もあります。床材リノベーションと同じく、すのこの素材によっては滑りやすいものもありますので、滑りにくい素材を選ぶようにしましょう。
しかし、浴室すのこを設置する場合は、浴室掃除の手間がひとつ増えてしまう、というデメリットもあります。
毎回すのこを持ち上げて掃除するのは身体に負担もかかって大変そう……という方は、思い切ってリフォームをするのも、長く愛せる浴室づくりにつながるかもしれません。

▼浴槽の交換


古いタイプの浴槽では、浴槽が深く作られているタイプも多いですが、浴槽へ入るために大きくまたがなければならないため、高齢の方にとっては出入りの際の転倒や溺水の危険が多くなります。
風呂場の床から浴槽の縁までの高さが30センチ~50センチほどのものが、最もまたぎやすい高さだと言われています。
浴槽スペースが狭く、深くないと十分に浸かることができないつくりの場合には、浴槽の位置を床より下に下げた「落とし込みタイプ(床より浴槽の底が深いもの)」もありますので、浴室の形に合ったものを選びましょう。

▼暖房の設置


近年、高齢者の浴室内の死亡事故で注目されているのが「ヒートショック」です。急激な温度の変化によって血圧が大きく変動し、失神・不整脈を起こした結果、溺水や転倒といった命に関わる事故につながってしまう現象で、浴室内の事故の多くはこのヒートショックが影響しているといわれています。ヒートショックを防ぐためには浴室内や脱衣所など温度変化の激しい場所の寒暖差を減らすことが重要ですので、浴室暖房や脱衣所に暖房を設置することでリスクを下げることが可能です。

▼水回りをリノベーションするときには、他のリノベーションも一気にやるのがお得!


水回りの工事では、床材を一度剥がして配管工事をする必要があります。そのため、お風呂、トイレ、キッチンなどを個別に改修してしまうと、そのたびに床材を剥がしたり元に戻すための費用がかかってしまうことに……。
そのため、浴室のリノベーションを考えている方は、「トイレ」「洗面台」「キッチン」などの水回りもリノベーションの必要がないかどうか、また、同時に行うことで得られるメリットがないかなどもしっかりと検討してみましょう。

バリアフリーのためのリノベーション、次回は、「洗面台」のリノベーションについてご紹介予定です!

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