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マンションの防犯対策~エントランスでできること~

2025.01.28


〝闇バイト〟による凶悪強盗事件などが報道される昨今、共用部分の防犯対策はマンション管理組合にとってできる限り強化したいポイントです。
「いい住まい」ではこれまでにマンション内のエリア別に防犯対策を考え、エントランス周りのハード・ソフト両面については

  • オートロックと監視カメラの設置
  • ドアは内外が相互に見通せるものを選択
  • 照明確保(内側床面50ルクス以上、外側床面20ルクス以上)
  • 居住者同士が日常的に声を掛け合う

などのセキュリティー強化策をご紹介しました。

植栽の手入れが行き届いた外構整理整頓されたベランダ清掃が行き届き花や盛り塩が置かれた玄関などは、犯罪の予防効果があることもお伝えしました。
今回はセキュリティーをより強化する最新のエントランス防犯システムをご紹介します。


防犯・セキュリティーについてこちらの記事もご覧ください】
マンションの防犯・セキュリティーを向上しよう! ~①主な対策チェックポイント~
マンションの防犯・セキュリティーを向上しよう! ~②ハード・ソフトの両面対策~

オートロックシステムの導入・高機能化

非接触キーの採用が増えています
(出典:アイホンHP

マンションでは、エントランスにオートロック機能が有るか無いかで防犯性に大きな違いがあります。エントランスが解放されている旧タイプのマンションは、オートロックの導入が防犯の第一歩。まずはオートロック設置の後付け工事を検討しましょう。
次に、オートロック式エントランスのマンションでも油断は禁物です。悪意のある侵入者は居住者と一緒に入り込む「共連れ(ともづれ)」や居住者が外に出るタイミングで中に入る「入れ違い(いれちがい)」などの手口で建物内に入り込みます。

このほか、
 ・宅配業者などと一緒に入る
 ・電機や水道、ガスなどの業者を装って侵入する
 ・ドア以外の非常階段などから入る
 ・暗証番号タイプのオートロックで暗証番号を盗み見る
 ・住人が落としたカギを拾い、合鍵を作って入る

などさまざまな手口で侵入します(綜合警備保障株式会社(ALSOK)ホームページより)。

侵入手口が巧妙化する一方で、それに対抗する防犯設備も進化しています。エントランスでは非接触型(ICチップが内蔵されている鍵やカードキー)の鍵や顔認証を用いたオートロック、エレベーターと連動するインターホンシステムなどが開発され、ホテルやオフィスビルだけでなく新築マンションでの採用が広がっています。

オートロックとエレベーターの連動

オートロック・インターホン運動システム
(出典:東芝エレベーターHP

住戸に非接触キーを導入したオートロックシステムの中には、エレベーターと連動して部外者の侵入を防ぐ機能を備えたものがあります。東芝エレベータ(株)の「オートロック・インターホン運動システム」は、帰宅時にオートロック玄関機に非接触キーをかざすと(①)エントランスが開き(②)、エレベーターがエントランスフロアに到着(③)。ご自宅のフロアまで自動運転する(④)システムです。来訪者はエントランスのインターホンで訪問先の部屋番号を呼び出し、訪問先が解錠ボタンを押してエレベーターの停止階制限を解除します。
このほか、エントランスのオートロックを解錠すると非接触キーに事前に登録した行き先階のボタンのみ押せるようにする機能もあります。
いずれの機能も後付けで設置可能です。オートロック玄関機と居室のインターホン工事が必要になるため、インターホンの更新や大規模修繕工事のタイミングで導入を検討すると良いでしょう。

【参考】アイホン株式会社「マンションエントランスの鍵は非接触キーがおすすめ」・「インターホンとエレベーターでセキュリティー向上」

カメラ付きインターホンでセキュリティーを強化

警察庁は、空き巣狙いの侵入者が留守宅を確認する方法としては「ランダムにインターホンで呼ぶことが最も多い」と注意を呼び掛けています(防犯対策を呼び掛けるホームページ「住まいる110番」より)。カメラ付の集合玄関機やカラーモニター付きのインターホンは不審者をブロックする有効手段になります。ズーム機能がある機種や過去に記録された画像をさかのぼって見ることのできる機能などがあり、スマートフォンで応答できるインターホンなら外出先で来訪者に応対できるので留守だと気づかれにくくなります。

最新インターホンの便利機能(出典:アイホン株式会社)

自治体の支援を活用

マンション共用部分の防犯対策を強化するマンション管理組合に対し、必要な費用の一部を補助・助成する独自の制度を設けている自治体があります。

東京都中央区は防犯カメラやセンサー付きライトなどの機器を設置する管理組合に対し、50万円を上限に費用の2分の1を交付します。一度助成金を受けてから7年が経過すれば、その翌年度以降に再度の申請も可能です。いずれも中央区防犯アドバイザーの派遣を受けることが要件です。


港区も建物の防犯診断を受けることを条件に、設備設置費用の2分の1(上限50万円)を助成します。防犯カメラのほかオートロックシステム、センサー付きアラームなどが対象で、更新する場合は7年経過した翌年度以降に再度申請できます。各地区総合支所で受け付けます。




荒川区は6戸以上の共同住宅に防犯カメラを設置する場合に費用の2分の1(上限15万円)を補助します。これは2014年度から実施しています。





葛飾区は事前申請により、防犯カメラを設置する費用の2分の1(上限50万円)を補助します。駐輪場がある場合は駐輪場にも1台以上のカメラ設置を呼び掛けており、2025年2月28日まで設置工事の申請を受け付けます。





埼玉県鴻巣市は防犯カメラや人感センサーライト、モニター付きインターホン、面格子・防犯砂利などの購入・設置費用の2分の1(上限1万円)を補助します。市内の販売店等を利用することが要件です。





神奈川県海老名市は2023年度から防犯カメラやインターホンの設置費用の他、防犯フィルムや人感センサーライトなど防犯対策用品の購入にも費用の2分の1(上限2万円)を補助しています。


いずれの自治体でも補助の申請件数は年々増えているそうです。取材した2025年1月現在では2024年度の受付枠にまだ余裕がありました。マンションのセキュリティー対策を強化したい・既存のシステムを更新したいと考えたら、まずお住まいの自治体窓口に相談し、地域で発生した犯罪の傾向や対策なども聞いておくと良いでしょう。
なお、カメラの設置では撮影対象を公道上など「不特定多数の人が通行する場所の撮影のみ」と制限する場合があるのでご注意ください。事前の申請や地元の販売店などでの購入・設置工事が条件となることもあります。

まとめ

警察庁が策定した「共同住宅に係る防犯上の留意事項」には、共用玄関は「各住戸と通話可能なインターホンとこれに連動した電気錠を有した玄関扉によるオートロックシステムが導入されたものであることが望ましい」と明記されています。マンションの安全は地域全体の安心・安全に直結します。自治体の助成制度があれば積極的に活用し、より安全なまちづくりを推進しましょう。

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