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マンション管理組合がすべき災害時の備え

2019.02.20


2018年は大阪北部地震や北海道胆振東部地震、大型台風など複数の自然災害が発生し多くの被害があったことは記憶に新しいと思いますが、あなたのマンションは自然災害発生時に備えてどの程度防災活動をしていますか。「いざとなれば避難所に行けば大丈夫」と気楽に構えてはいないでしょうか。確かに避難所は災害時に避難する場所として建物ごとに指定された場所がありますが、災害時というのは必ずしも避難所で生活を行うわけではありません。災害時はマンション内の住民同士や、近隣住民同士で助け合って生活することが基本となりますので、マンションであれば管理組合が主体となって災害時の対策をする必要があります。各家庭では災害に備え備蓄をしている方もいると思いますが、マンション管理組合としていざ災害が起こってから慌てないために、どのような備えをしておく必要があるのでしょうか。

大規模災害時は避難所に行けば大丈夫と思っていませんか?


例えば大規模な地震が起こった場合、「地震が落ち着くまでは安全な場所で身を守り、落ち着いたら避難所に避難をする」と避難訓練などで教わった方は多いと思いますが、実際は避難所にスペースが足りず避難できない場合も多いということをご存知でしょうか。大規模な災害が起こった場合、津波のリスクが高い地域の方や家が倒壊してしまった方などは避難所での生活を余儀なくされますが、人口の多い都心部に住んでいる方などは特に公共の避難所では対象地域全員のスペースが確保できないのが現状です。そのため、例えば人口の多い東京都の防災計画では倒壊のリスクが低い居住が可能な住宅については在宅避難を基本的な方針としており、頑丈な造りのRC造のマンションなどは在宅避難になる可能性が高くなります。

実際に2011年3月11日に起こった東日本大震災では避難所が満員で避難することができず、被害が軽微だったマンション居住者は自宅に戻らざるを得ない方が多くいました。電気・水道・ガスが止まった状態の自宅で在宅避難となると、水・食料の不足に加えて、高層階に居住している方はエレベーターを使えず外への出入りが困難になるといった問題も発生します。在宅避難になる可能性の高いマンションでは、そのような場合にどう助け合っていくのかという対策を各世帯はもちろんのこと、管理組合全体で考える必要があるでしょう。

大規模災害に備えたい自助と共助


大規模災害への備えとしては個人宅で備蓄をして万が一に備える「自助」と近隣住民で協力しあって災害時に助け合える状況を作る「共助」という2つの備え方があります。マンション管理組合は自主防災組織を立ち上げ、災害発生時に共助をスムーズに行えるよう対策をしておく必要があるのです。マンション管理組合で自主防災組織を立ち上げるための参考になります。

1.自主防災組織の立案
自主防災組織とは災害時の共助のため管理組合や地域住民で立ち上げる組織のことをいいます。管理組合で立ち上げる場合には理事会の許可を得る必要がありますので、事前に理事に必要性などを話しておいたり、理事であれば自ら立案することで話がスムーズに進むでしょう。理事会の合意を得た後は、自主防災組織の立上げ検討を行うための検討チームを結成し、その後の検討は専門チームで行います。

2.自主防災組織の編成と活動内容を作成
自主防災組織を立ち上げるにあたっては、災害時の役割別にいくつかの班に分かれた編成を考える必要があります。班編成は主に

・本部(全体班の統括)
・情報連絡班(各住戸への通達連絡調整)
・防火安全班(防火活動や初期消火活動など)
・救出救護班(けが人の救出や搬送)
・避難誘導班(居住者の避難誘導支援)
・物資供給班(管理組合備蓄の飲料水や食料の提供)

といった班編成をベースに、人数や世帯数に合わせて編成を行いましょう。

3.居住者の意見を収集して承認を得る
班編成が決まったらマンション住民に班編成やその他活動案などを配布して、意見を募ります。提出された改善案や意見をもとに修正案を作成し、理事会に提出して承認を得たらいよいよ活動スタートです。

自主防災組織の活動


自主防災組織を立ち上げたら、災害時に向けた活動を行っていきます。活動として主にあげられるものは下記のようなものですが、あなたのマンションでまだ実施されていない活動はあるでしょうか。自主防災組織のあるマンションに住んでいる方は活動内容をチェックして、足りない活動について提案をあげることでより災害時に共助し合えるマンションになります。

・関係機関の連絡先一覧
地震が発生した場合はマンションの各種設備が故障したり、エレベーターに人が閉じ込められてしまったりといったことが考えられます。そういったことが起こった場合にどこに連絡をする必要があるのかをあらかじめ調べて、一覧にしておきましょう。また、非常時には市や県の防災関係機関と連携をとる必要もでてきますので、一緒に掲載しておくと連携がスムーズになります。

・各階図面の確認
避難が必要になった場合には自主防災組織が中心となって避難誘導を行う必要がありますので、避難経路や消火設備の場所は事前に確認をしておき、それらを知らない人が見てもすぐにわかるように各階の平面図などを用意しておきましょう。

・防災倉庫の設置・維持管理
スペースに余裕があればマンションの建物内の空いている共有スペース、もしくは敷地内に防災倉庫を設置して必要な機材や物品を備蓄しておきましょう。また、食料や非常時に使用できる機材にも賞味期限や使用期限がありますので定期的に点検を行い、必要なものは更新を行います。備蓄品一覧や配置図を作成して扉に貼っておくと、災害時にすぐ取り出すことができ在庫管理にも便利です。

・災害時行動マニュアルの作成
災害時に各班がどのように動くのかをマニュアル化し、円滑に動くことができるようにすることも必要です。災害発生のタイミングによってマンションの近くにいるメンバーが変わってきますので、平日夜間や休日など居住者の多くが在室している時間帯で災害は発生した場合の担当メンバー編成や、逆に平日昼間に災害が発生した場合には各班の職場が近い方や主婦・主夫の方などが主体となる担当メンバー編成を構成する、といったルールを決めておくといつ災害が発生しても自主防災組織が機能するようになります。また、災害発生時の集合場所や集合基準震度なども決めておくと初動を早めることができるので良いでしょう。

・災害時に備えた啓発活動
自主防災組織が機能していてもその存在が他の居住者にあまり知られていなかったり、災害時にどうすれば良いか自主防災組織メンバー以外の居住者がわかっていないと、災害時の協力体制が整いにくくなります。あらかじめ自主防災組織がどのような活動をしているかの広報や、災害時の行動の周知、防災訓練などを行い居住者全員で共助できる体制にしておくことが必要です。また、防災倉庫に備蓄できる量にも限りがありますので、各家庭で用意しておいてほしい備蓄品など自助の努力も促すようにしましょう。

2011年に発生した東日本大震災の後も、2016年に発生した熊本地震や2018年に発生した大阪北部地震など、最近は数年に一度のペースで大きな地震やそれに伴う災害が日本では発生しています。使わず済めばなによりですが、災害時用の備品や自主防災組織の活動など災害への備えは万が一の時に命を守ってくれる命綱です。今回は一般的な対策についてご紹介しましたが、各区や市によって防災計画書という災害時の基本行動や基本方針が載っている冊子などもありますので、冊子があればそれをもとに計画を組むことが必要となります。大切な命綱がしっかりと機能するよう定期的な点検や活動を怠らず、災害時でも共助し合えるマンションづくりを心がけましょう。

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