マンションの防犯・セキュリティーを向上しよう! ~①主な対策チェックポイント~
2024.05.23
防犯の基本は戸締り-。そんなの当たり前と思われるかもしれませんが、警察庁のまとめによると、侵入犯罪で最も多い手口は、鍵のかかっていない住戸玄関からの忍び込みだそうです。エントランスにオートロック機能のドアがあったり、内廊下式のマンションだったりすると、つい住戸玄関の鍵をかけ忘れてしまうのでしょうか。
今回の「いい住まい」では、マンションのセキュリティー強化・向上について前編『①主なチェックポイント』と後編『②ハード・ソフトの両面対策』の 2本の記事で紹介します。『①主な対策チェックポイント』の記事(本記事)では防犯対策の基本を再確認し、犯罪手口のデータから対策方法を検討するとともに、建物内外のチェックポイントを説明します。
(マンション屋内の防犯 出典:日本防犯設備協会「防犯カメラシステムガイド」)
防犯・セキュリティー対策のために犯罪手口を知る
住宅を対象とした侵入窃盗は、凶器で脅かして金品を強奪する侵入強盗と、金品を盗む「空き巣(あきす)」・「忍び込み(しのびこみ)」・「居空き(いあき)」といった侵入窃盗・住居侵入があります。警察庁のデータによると侵入窃盗は2004年以降連続して減少していますが、侵入強盗に関しては、2005年以降続いていた減少傾向が2022年には増加に転じました。最近では宅配業者を装ったり窓ガラスを破壊して押し入ったりする悪質な手口による侵入強盗事件、郵便受けなどに隠したつもりの合い鍵による侵入も発生しています。手口の巧妙化・凶悪化が進んでいることから、防犯対策をより一層強化していくことが求められます。侵入者の出方や犯罪傾向を把握し、効果的な防犯対策を知り、自分や家族の命と財産を守りましょう。
(参考資料:政府広報オンライン空き巣や強盗から命と財産を守る 「住まいの防犯対策」 | 政府広報オンライン)
(出典:政府広報室作成資料 侵入窃盗における侵入口の構成比)
●侵入経路1位は無締り(無施錠)の玄関
警察庁のWebサイト「住まいる防犯110番」によると、窃盗犯の侵入口は玄関が最も多く、次いで窓、そして非常口の順となっています。
侵入の手口は鍵をかけていない「無締り」が最も多く、3階建て以下のマンションで51.5%、4階建て以上では40.6%に上ります。どんなに厳重な防犯対策をとっていても、出入口が空けっぱなしでは効果がありません。
次に多い手口の「ガラス破り」は、窓ガラスを破壊してそこから手を入れ解錠して侵入するもので、18.0%(3階建て以下)、11.3%(4階建て以上)がこの手口で被害にあっています。
ドアと壁の隙間にバールなどの工具を押し込み、ドア錠を破壊して侵入する「ドア錠破り」では1.4%(3階建て以下)、1.8%(4階建て以上)となっています。これからの数字を見ると、きちんと戸締りをすれば一定の被害を未然に防げることが分かります。
(出典:警察庁 「住まいる防犯110番」)
マンションセキュリティーにおける主なチェックポイント
それでは、この「住まいる防犯110番」で紹介されているマンションセキュリティーの主なチェックポイントを確認してみましょう。ここではポイントを簡潔に紹介していきます。
● 建物外周のチェックポイント
(出典:警察庁 「住まいる防犯110番」)
— 塀・柵・垣 —
・見通しを妨げ建物との間に死角となるような場所がないか
・塀や柵が窓やバルコニーへの侵入の足場となっていないか
・垣は簡単にすり抜けられず、かつ、見通しを妨げないような繁茂であるか
— 駐車(輪)場・通路 —
・道路、通路、共用玄関、居室等からの見通しが確保されているか
・屋内に設置されている場合は周囲から見通すことができる開口部が確保されているか
・チェーン用バーラックやサイクルラックなどで盗難防止措置はできているか
— ゴミ置き場 —
・フェンスや施錠ができる扉で区画されているか
・常夜灯やセンサーライトが設置されているか
— 屋上 —
・屋上への出入口に扉は設置されているか、また、施錠可能なものとなっているか
・屋上が避難場所となっている場合、非常時には自動解錠できる扉となっているか
・屋上はバルコニー等に接近しやすい場所であることも多いため、避難上支障のない範囲に面格子や柵などを設置して侵入防止対策がとられているか
● 建物内部のチェックポイント
(出典:警察庁 「住まいる防犯110番」)
— 共用出入口 —
・共用玄関やその他の共用出入口は道路や通路からの見通しが確保できているか
・共用玄関の扉は内外が相互に見通せるタイプ、かつ、オートロックとなっているか
・共用玄関以外の出入口においても閉めると自動施錠する扉となっているか
— 共用廊下・共用階段 —
・特に住戸バルコニーに近接する廊下部分は侵入対策に注意が払われているか
— 共用メールコーナー・郵便受け —
・メールボックスや宅配ボックスなどは施錠可能なものとなっているか
— エレベーターホール —
・玄関階においては管理人室等からの見通しが確保されているか
— エレベーター —
・エレベーター籠内に防犯カメラは設置されているか
・非常時には籠内から外部に連絡する手段が確保されているか
— 管理人室 —
・管理人室は、共用玄関、メールコーナー、宅配ボックス、エレベーターホール等が見通せる位置にあるか
・管理人室の扉には防犯性能の高い錠が設置されているか
— 防犯カメラ —
・防犯カメラは犯意の抑制等の観点から有効な位置に適切な台数が設置されているか
・記録に充分な機能や性能があるカメラか
・「防犯カメラ作動中」などのステッカーも活用しているか
— 住戸の玄関扉・インターホン —
・防犯性能の低い鍵の場合、追加の対策(補助錠やサムターンカバー)がとられているか
・扉に郵便受けが設置されている場合、手や器具が入らないような対策がとられているか
・ドアスコープやドアチェーン、インターホンなどは設置されているか
・オートロックシステムの共用玄関の場合、インターホンは訪問者を映像または音声で確認できる機能となっているか
— 住戸の窓 —
・共用廊下に面する窓等には、防犯建物部品等(※)の冊子、ガラス、面格子等が設置されている
・バルコニー等に面する窓等のうち、侵入が想定される階では防犯建物部品等が設置されているか
(※ 防犯建物部品 04_Crimeprevention(1207).pdf (jsma.or.jp))
— 住戸のバルコニー —
・縦樋や階段の手摺り等を利用した侵入が困難となっているか。または、侵入を防止する対策がとられているか
その他、共通事項として明かり(照明)も立派な防犯対策の一つです。照度の基準で「ルクス」というものがあります。50ルクス=共用玄関などでは人の顔や行動を明確に識別できる照度、20ルクス=出入口等では顔や行動が識別できる程度、3ルクス=人の行動を視認できる程度といった具合に基準がありますので参考にしてみてください。
まずはあなたのマンションをチェックしてみましょう
今回の記事ではマンションセキュリティーについて取り組むための基本となるデータ、対策方法、チェックポイントをご紹介しました。これをもとに一度ご自身で確かめてみることをお勧めします。
後編『②ハード・ソフトの両面対策』 では防犯・セキュリティー対策向上のための具体例や、セキュリティー会社の方に聞いた事例をご紹介していますので、あわせてお読みください。
こちらからお読みいただけます「マンションの防犯・セキュリティーを向上しよう! ~②ハード・ソフトの両面対策~」
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