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マンションの防犯・セキュリティーを向上しよう! ~②ハード・ソフトの両面対策~

2024.05.23

前編『①主な対策チェックポイント』 (こちらからお読みいただけます)では、犯罪手口のデータを確認したり、防災対策の基本を再確認したりして、マンションの外側と内側でのチェックポイントを紹介しました。

今回は防犯カメラの設置ポイントや玄関ドアの施錠など具体的なセキュリティー対策を詳しく見ていきます。安心・安全なマンションづくりにお役立ていただきたいと思います。それでは、さっそくエリア別にセキュリティー対策を紹介します。


(マンション屋内の防犯 出典:日本防犯設備協会「防犯カメラシステムガイド」)

マンションのエントランスは外部との境界であり、不審者の侵入を防ぐ役割を担っています。多くのマンションで採用されているのがオートロックシステムのドアです。居住者の鍵や暗証番号、住戸内からの操作などで解錠し、ドアが閉まると自動で施錠されます。
近年ではスマートフォンのアプリを使ってロックしたり、非接触キーで施錠解錠できたりするタイプの導入も増えています。新築時にオートロック機能がなかったマンションでも改修や後付けが可能になってきています。顔認証や指紋認証システムは、事前に登録した顔や指紋をセンサーにかざして解錠する仕組みで、複製が困難でセキュリティーレベルが高くなります。鍵を取り出す手間や紛失する心配がなくなるというメリットもあります。大規模修繕工事や設備等の更新工事のタイミングを待たずとも導入検討が可能です。
▶ マンションのエントランスについてはこちらの記事もご覧ください


(オートロックとカメラが設置されたエントランス。ドアは内外が相互に見通せる)


前編で述べた通り、侵入窃盗は施錠していない玄関から入る手口が最も多くなっています。出入口や窓を確実に施錠する習慣を身につけましょう。侵入者は入念に下見をして隙をうかがっています。ほんのわずかな時間、例えばゴミ出しに行く間だけだとしても、その都度しっかり鍵をかけましょう。

警察庁によると、侵入者は5分以内に侵入することができなければ7割が諦め、10分以上かかるとほとんどが諦めるそうです。補助錠やドア枠にガードプレートを取り付けるなどして「侵入に時間をかけさせる」。これが、侵入を防ぐポイントになります。

一方、しっかり施錠していてもピックと呼ばれる金属製の特殊工具を鍵穴に入れドアの錠を短時間で開ける「ピッキング」という手口や、玄関ドアの外側からドリルで穴を開けるなどしてサムターン(内側のドアロック用つまみ)を強引に回して侵入する「サムターン回し」、特殊工具で直接錠ケース内部に働きかけてデッドボルトを作動させ解錠する「カム送り解錠」「バイパス解錠」という手口で侵入されることもあります。

このような悪質な侵入者に対抗するには1つの扉に錠を2つ設置する「ワンドア・ツーロック」が効果的です。扉本体に変更を加えるツーロックにする場合は、原則、管理組合の許可が必要になるため、設置する前に管理組合や管理会社に相談しましょう。


共用部分のセキュリティー対策の強化では、防犯監視カメラや人感センサーなど機械警備に対するニーズが高まっています。管理員が常駐しているマンションでも管理員が不在の夜間や休日の監視、人の目が届きにくい裏口や駐車場の監視のために導入しています。「このマンションは侵入しにくい」と思わせ、犯罪を未然に抑止することが対策の一つなのです。

マンションの共用部分に新たに防犯カメラを導入する場合は、管理組合で費用や設置場所を考え、設置後の運用規則を定めておくことが重要です。監視システム一式を購入するかリース方式にするか、カメラ性能(画素数)をどこまで高めるか、ネットワーク回線にWi-Fiを使うかLANケーブルにするか、どこに何基設置するか。運用では記録画像を何カ月間保存するか、動作確認やアクセスの管理を誰が行うか、画像を閲覧する際のルール・手順なども決めておきましょう。カメラやレコーダー、サーバーの定期的なメンテナンスも欠かせません。環境にもよりますが、一般的にカメラ本体の耐用年数は7~10年、ICチップは6~10年といわれます。セキュリティー専門会社の意見を聞いてマンションの長期修繕計画に盛り込み、予算を措置しておきましょう。

セキュリティー監視システムの設置・コンサルティングを行う(株)ユニティーの狩野刀根男社長によると、マンションに監視カメラを設置する場所は、
①門、塀など敷地への出入口
②玄関、通用口、駐車場・自転車駐輪場など建物への出入口
③管理人室やポスト投函口
―などが効果的とのこと。
さらに、防犯の取り組みではベランダの整理整頓や建物の清掃も重要だと指摘します。

―カメラ設置の初期費用はどのくらいかかりますか?
「カメラを8台設置する場合は購入方式で100万円程度から、リース方式なら月額1.5万円程度からが目安です」

―予算が限られています。ダミーのカメラは抑止力になりますか?

「残念ながら、ダミーは若干の抑止になるかもしれませんが、プロの窃盗集団には簡単に見破られます。また、実際に犯罪が起きてしまった時は解決の手掛かりにもなりません。安全対策にはしっかり費用をかけるべきでしょう」

―カメラの設置と合わせて有効な対策はありますか?
「人感センサーで夜間にライトや回転灯を点灯させることをお勧めします。〝防犯カメラ作動中〟のステッカーも抑止効果を高めます」

―日常の防犯についてアドバイスをお願いします。
「意外に思うかもしれませんが、防犯には清掃整理整頓が有効です。侵入者は植栽の手入れが行き届いた外構や整理整頓されたベランダ、きちんと掃除され花や盛り塩が置かれた玄関などには近寄らない傾向があります。反対に、目を付けられやすいのは汚れたベランダや散らかっている部屋、ものがごちゃごちゃ置いてある場所。誰かが入ったりものが無くなったりしても気づかれにくいからです」
「風水で〝きれいなところには良い気がめぐる〟といわれる通りで、汚い犯罪者たちは汚いところに集まります。快適な環境づくりを心掛ければ、危険や不安が軽減するでしょう」

―掃除や整理整頓ならすぐに実行できそうですね。

取材協力:㈱ユニティー 狩野刀根男社長

オートロックや防犯カメラなどハード面の整備とともに近所づきあいを大切にすることが犯罪の予防につながります。近隣同士の仲が良く連帯感のあるエリアでは見知らぬ人が不審がられ、「どちらに御用ですか?」などと声を掛けられたりするので侵入者にとっては“やりにくい”。反対に、人間関係が希薄で収集日以外にゴミが出されているようなエリアは地域への愛着が薄いと思われ、侵入者に安心感を与えてしまいます。
つまり、ハード面の対策だけではなく、ソフト面の対策と両方行うことが大切です。自宅の美化とともに共用部分やまちの美化にも協力し、安全で暮らしやすい住まいづくり・まちづくりを目指しましょう。

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