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“ほぼ紙”だから備蓄も簡単&災害時に頼れるトイレ『ほぼ紙トイレ』

2019.06.17


大規模災害発生時に水や電気が止まると困るものというと、何を思い浮かべるでしょうか。夏場であれば脱水のリスクもありますし、お風呂にも入れないと衛生的に困りますが、どうしても我慢することができないのが「トイレ」です。お風呂の水を常に溜めておくという防災をしている方もいるかもしれませんが、大きな地震でお風呂の水がほとんどこぼれてしまったり、下水管が壊れてしまうと水があってもトイレを流すことができません。以前の記事でご紹介した、マンホールトイレや携帯トイレなどの備蓄も必要ですが、この二つも使えないような大規模災害が発生した時には、『ほぼ紙トイレ』が心強い味方となってくれそうです。大規模災害時のトイレ事情と、2019防災産業展in東京で見かけた『ほぼ紙トイレ』をご紹介します。

大規模災害発生時のトイレ問題


首都直下型地震の発生が懸念される中、個人での備えはもちろんのことマンションに住んでいる方は管理組合での備えも含めて対策は万全でしょうか。水や食料、ラジオや乾電池など備蓄した方が良いものは多くありますが個人で備蓄しにくいのがトイレです。コンパクトな携帯トイレなどもありますが、家のトイレが使えるようになるまでの間すべてを賄えるほどの携帯トイレの量となると、備蓄するには一人分でもかなりの量とスペースが必要に。避難所に設置されるトイレや公園などの公共トイレを使えれば良いですが、汚水が溢れてしまうリスクや断水リスクは家のトイレ同様ありますし、避難所に設置される場合もすぐに設置が完了するところばかりではありません。

内閣府が作成している「避難所におけるトイレの確保・管理ガイドライン」によると、東日本大震災時に3日以内に仮設トイレが設置された自治体はわずか34%、なんと1ヶ月以上かかったという自治体も14%あったという結果でした。半数以上の方は避難所の仮設トイレがない状態で4日以上過ごしたということになります。運よく3日以内に届いたとしてもやっと届いたトイレは長蛇の列、できるだけトイレに行かなくて済むよう水分を控え、体調を崩してしまった方もいたのだそう。そのくらい災害時のトイレ問題は深刻なのです。


引用元:http://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/pdf/1604hinanjo_toilet_guideline.pdf

避難所で生活することができればまだ良いかもしれません。以前の記事でもご紹介した通り、マンションなどの地震に強い建物に住んでいる方は在宅避難になる可能性もあります(記事はこちら)。その場合はマンションの居住者同士や近隣住民同士で助け合って生活していかなければなりません。在宅避難になると避難所に設置された仮設トイレに行くのも大変ですし、移動の負担が大きい高齢者の方や、トイレを我慢できない小さな子どもなど、近くにトイレのない環境はかなり負担が大きいですよね。

幸運なことに破損が少なく自宅やマンション共用部のトイレが無事でも、下水管が破損していた場合汚水が逆流してしまい下層階の住戸で汚水が溢れてしまいます。災害時は水があったとしても、最低限下水管が無事であることを確認してからでないとトイレを使用することはできませんので、水があるからといって自宅のトイレを使用することは絶対にやめましょう。災害時のトイレ使用については国土交通省の資料に詳しくありますので、確認してみてください。

マンホールトイレや携帯トイレの問題点


現在災害時の断水や停電時に備える災害用トイレとして使用されているのが、個人でも備蓄しやすい携帯トイレや、マンホールの上に設置するだけで使用できるマンホールトイレです。これらは個人やマンションの備蓄としては有効ですが、弱点もあることをご存知でしょうか。

携帯トイレ

コンパクトでリュックの中にも入る携帯トイレは、防災リュックに入れておきたいものの一つです。しかしその一方で、携帯トイレの弱点として人目を遮る場所が必要、長期間使うにはかなりの個数が必要、使用後は排泄物を入れたゴミが出てしまうということがあります。仮に4人家族で断水が復旧するまで1週間(東日本大震災では断水復旧に3週間要しました)携帯トイレで過ごすとすると、1日4回に排泄を抑えたとしても112回分の携帯トイレを備蓄して、112個の汚物をゴミの回収が復旧するまでの間置いておかなければなりません。
目隠しができないということも含め、携帯トイレはあくまでも自治体のトイレが設置されるまでの繋ぎや、被害が軽微だった時の備えとして備蓄しておくのが良いでしょう。

マンホールトイレ

国土交通省などでも勧められているマンホールトイレは、既存のマンホールの上に設置できるという容易さやごみが出ないことから自治体だけではなく管理組合でも備蓄しておきたいものの一つです。仕切りとセットとなっているため特別にスペースを用意する必要がなく、洋式なので足腰の弱い高齢者の方でも使いやすいというメリットがあります。
価格も5万円ほどからあり購入しやすいマンホールトイレですが、弱点として水が無いと流れないこと、下水やマンホールが使える状態でなければ使用することができないという点があります。例えば大規模な地震が起こった場合、下水管が傷つき下水道が使えなくなったり、地盤沈下にマンホールが巻き込まれて設置ができないということも起こり得るのです。
マンホールトイレが使えない場合があることを知った上で、安価なマンホールトイレと合わせて別のトイレも用意しておいた方が安心といえそうですね。

ほぼ紙でできているから軽くて備蓄しやすい『ほぼ紙トイレ」

ブースは大変多くのお客様で賑わっていました。

上記で挙げた2つのタイプの災害用トイレについては耳にしたことがある方も多かったかと思いますが、それぞれの弱点を考えた時にどのような対策をしておくことが必要なのでしょうか。6月5日(水)~6月7日(金)2019防災産業展in東京で展示されていた、株式会社カワハラ技研の“ほぼ紙”でできている『ほぼ紙トイレ』は、マンホールトイレや携帯トイレでは備えきれない大型災害への備えとして有効なのだそう。『ほぼ紙トイレ』にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

インフラに頼らない汲み取り式だから災害に強い

停電・断水など大型災害時はさまざまなインフラが停止します。大きな被害の発生が危惧されている首都直下型地震でも、インフラは停止してしまうと考えておいた方が良いでしょう。水や電気を使わないマンホールトイレは下水道が無事であれば利用することができますが、前述したように下水管が断裂した場合には使用することができません。インフラの復旧作業の順番、まず電気⇒水道⇒ガス⇒下水道の順で、下水道が一番最後になります。復旧まで早くて2週間、被害が甚大となればそれ以上、1ヶ月単位となります。建物が無事で自宅待機となった場合、少量の携帯トイレではとてもではありませんが足りませんよね。
そんな時に強いのが水・電気・下水道が一切必要ない汲み取り式(タンク等に貯める方式)のトイレです。『ほぼ紙トイレ』は25人が約2週間利用することができるため、男女別に1つずつ備蓄しておけば50人分を賄うことができます。在宅避難となった場合でも、管理組合で人数分用意しておけばトイレを使用するために避難所まで行く必要がなく、居住者の負担を減らすことができますね。 

女性に優しい“ほぼ紙”

『ほぼ紙トイレ』という名前の通り、ほとんどのパーツが耐水紙でできているので組み立てた時の総重量も約51㎏と女性が何人かいれば運ぶことができる重さです。(仮設トイレは100㎏以上、機材が無いと運べません。)組み立てに工具は必要なく、女性2人でも20分ほどあれば組み立てができるので災害発生後すぐに使用できるのだそう。『ほぼ紙トイレ』担当者の方によると、力仕事のできる男性は災害時に手があかないことも多く、女性だけでもすぐに組み立てられるというのが大切なのだとか。確かに備蓄しておいても使うことができなければ意味がありませんよね。設置が容易かどうかというのは非常時に備える面で重要事項と言えそうです。
また、紙でできているので使用し終わった後は燃えるゴミとして処理をすることが可能で衛生面でも仮設トイレなどとは異なる点なのだそう。繰り返し使えた方がお得に思えますが、実際に利用した後に洗ったり保管することを考えると、捨てられるトイレの方が良いかもしれません。

広い&後処理まで楽な設計

トイレの下に汚物を溜めるためのタンクも六角形になっています


2019防災産業展in東京で実際の『ほぼ紙トイレ』に入らせていただきましたが、六角柱をしており、四角柱の仮設トイレよりも広くなっています。これは小さな子どもや高齢者の方など介助が必要な方のため、介助者と一緒に入りやすいようにという配慮なのだそう。確かに2人で入っても問題ないですし、トイレの中で着替えもできそうな広さでした。
また六角柱で広いことにより、ドアが内開き、鍵付となっています。これは、防犯対策として有効です。あまり報道されませんが、災害時はのぞきや痴漢行為が発生します。仮設トイレは外開きでドアを開けられる心配が、またテントの間仕切りは鍵もかからず、夜は影が映って怖い等トイレに行かなくなるケースが多々あります。鍵付、内開きであれば、いざという時内側から押さえつけ防ぐことが出来ます。老若男女だれが使うかわからないからこそ、プライバシーがしっかり守れて誰でも安心して使いやすいトイレがマンションに備蓄してあると安心ですね。

日本トイレ協会が東京都または大阪府在住の20~79歳男女を対象に行った「排尿トラブルに関する調査」によると、防災グッズとして災害用トイレを備えているのはわずか16.6%。食べ物や水などと比べると圧倒的に備えている人が少ないことがわかります。自宅のトイレが使えないような大規模災害が発生した場合には、仮設トイレが届くまでの最短日数である3日間トイレに行かないというのは、不可能です。在宅避難となった場合の事、管理組合で計画できているでしょうか。


引用元:https://www.toilet.or.jp/wp/wp-content/uploads/2018/04/survey180417.pdf

備えあれば憂いなしとはいいますが、人口の多いエリアで大災害が発生した場合は、これまでの災害以上にトイレが不足することが予想されます。発生してからではなく、発生する前からどれだけ災害時のことを考えられるかが、居住者全員の安全を守ることにもつながります。マンションにお住まいの場合、個人で備えにくい災害時のトイレ対策は管理組合で特に力を入れて取り組んでいくことが必要かもしれません。あなたのマンションは災害に備えられていますか。

広い倉庫が無くてもタンクをこのように活用することもできます。

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