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理事長インタビューから学ぶ!管理組合運営と大規模修繕工事のスムーズな進め方

2019.03.07


未経験で分からないことがある場合、経験者から学んだりヒントを得ることができる機会があると助かります。はじめてマンション管理組合の理事になったけどこれから何をしていけば良いか分からない……これまで理事は経験してきたが修繕委員には初めて就任した……いよいよはじめての大規模修繕工事の時期が近づいてきたけどどのように取り組んでいけば分からない……など様々なお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
いい住まい編集部では、これまで大規模修繕工事を終えた後のタイミングで理事長などから大規模修繕や管理組合運営についてのポイントや経験談を聞くことのできる機会がありました。今回も過去のインタビューの中からヒントとなりそうな部分を抜粋してご紹介します。

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全ての管理組合員が修繕委員の対象者。そのためにもしっかりとしたフォロー体制を。

修繕委員長として長期修繕に関する活動のみ行うのではなく、理事としてまた一居住者として日々の管理体制の改善にも動いています。管理内容と費用について管理会社さんと何度も協議を重ねたこともあり、最終的に理事会の皆さんが納得のいく内容で契約更新をすることもできました。私たちの要望をしっかりと提示する、おかしいことはおかしいっていうのが私のライフスタイルみたいなものですから。楽しいからやっているんでしょ?と言われることもありますが、全然楽しくなんかないですよ(笑)。

今の修繕委員のメンバーは7年間も委員をやりましたので今後新しいメンバーを公募します。その際に応募が無かった場合どうするかですが、いくら規約で強制的にメンバーを決められることになっていても押し付けるのではなく理解して受け入れてもらわなければなりません。ちなみに今のメンバーは皆プロではありません。主婦の方も当然いらっしゃいますし、主婦感覚の視点で考えることは絶対に重要です。私たちは素人だから素人(他の居住者)を相手に「私たちも素人ですがやってきました。だから今ここに住んでいらっしゃる方はすべて対象者です。」とね。もちろんある程度の期間はフォローをきちんとします。そのためにもメンバー構成に関する規約についても理事長と修繕委員担当理事の2名は必ず入ることに変更しました。【Jマンション 2002年竣工・約100世帯 修繕委員長】

<編集部コメント>
こちらの管理組合では管理会社との話し合いを通じて自分たちのマンションの管理内容にあった契約内容の更新をおこなったのだそう。区分所有者は維持費として毎月一定額を支払う義務がありますが、大規模修繕工事に向けて貯めている修繕積立金と違い、定期的に管理会社に支払われるのが管理費です。修繕積立金の見直しは長期修繕計画などが関わってきますので専門会社に相談をして行うことが一般的ですが、管理費に関しては管理会社との契約内容や管理会社自体の変更によって見直せる可能性も。

管理会社との契約は管理組合が行うマンション管理の一定部分を管理会社に委託しているという形になりますので、管理会社に委託しているマンションの日常管理を管理組合内で行うことで委託金額を減らしたり、管理会社の変更を検討している場合には数社で相見積もりをとって比較するといった方法を実際に行っている管理組合もあるようです。管理費の見直しなどについては普段の相談先である管理会社に相談しづらいこともありますので、必要に応じてマンション管理士や専門コンサルタントといった専門家に相談するといったこともできます。今の管理費に疑問がある方は委託金額が適正か一度見直してみてもいよいかもしれません。

自分たちのマンションに適した活動を

理事長として管理組合をまとめていく上で心掛けていたこととしては、約620世帯の管理組合の“理事長”がどういう立場のものなのかは理解していますが、あえて理事長だからというよりも「皆さんと同じ居住者ですよ」という体で掃除や雪掻きといった日常活動をしてきたことです。他の方は「あの人何?」と当然疑問に思いますよね。あえて理事長と表に掲げるのではなくて同じ立場としてやることで「自分と同じ立場の方がそういう作業をしているんだ。それなら自分たちも手伝わないとな。」ということを感じ取っていただきたかったのです。

また、日々の管理活動や修繕に関してのみでなく防災についても検討や活動を進めてきました。災害時に必要となる情報をまとめた資料や防災マグネット(安否確認マグネット)の配布、災害時にサポートが必要な方の情報収集(家族構成などのアンケート調査)などを日頃から行い、避難訓練のときからそのような方にはお声掛けをするようにしています。他のマンションさんとは異なるかもしれないけれどこのマンションに適した防災対策を実行できるように活動しています。【Kマンション 2004年竣工・約620世帯 理事長】

<編集部コメント>
管理会社に委託しているとはいえ、前述したとおりマンションは管理組合によって管理を行うのが基本になります。こちらのマンションは620世帯というかなりの大型マンションですので、管理会社に委託していても管理人の手だけでは足りない部分もでてきてしまっていたのだそう。そこで管理組合の理事長さんは、そんな手の届かない部分の日常管理を理事長自ら行うことで居住者の方にマンション管理への意識を高めてもらい、みんなで協力して管理しようと活動されています。マンションの管理となるとついつい管理会社に任せきりになりがちですが、管理会社では手が回りきらない部分を協力して行うことでマンションの健全性や資産価値を守ることにもつながりますので、管理組合が一丸となって協力してマンション管理を行えることが望ましいでしょう。

また、こちらの管理組合では防災にも力を入れており、防災訓練やアンケートによる世帯調査によって災害時にも自分たちで救助活動を行えるような体制を整えているのだそう。世帯数が多ければ多いほど、管理組合での備蓄にも限度がでてきますので各世帯の防災意識を高めることで、万が一の時も協力体制がとれる状態であることが大切ですね。

絶えずこの判断が正しかったのかを考え続ける

修繕委員として活動する上で「いかに自分たちのことを考えてくれる会社を選ぶか」というのは大切ですね。どの管理組合でも安い価格で良い工事をしたいというのは共通しているじゃないですか。これはコンサルタント会社でも施工会社でも同じで、規模だけではなく誠実な会社を選ぶということは大事にしていました。何かトラブルがあっても、規模や実績に関係なく誠実な会社であればお互いに歩み寄って解決することができますから、会社の企業体質っていうのはとても重要だと思います。

あとは表面上ではなくて、実際にどんな会社であるかを調べることが大切なことだと思います。プレゼンではどの会社もいいところをPRしますが、実際のところはわからないじゃないですか。だから提出された企業データをよく見てちょっとおかしいなとか、そういうところまで調べてから判断していました。いかに表に出ない情報を自分たちで推察できるかというのは大切だと思います。パートナー選びがうまくいけば、その後も何かあっても相談することが出来ますからね。だから考え続けて、より良いパートナーを選ぶというのはその後の安心にもつながる大切な事項だと思います。【Lマンション 2004年竣工・約20世帯 修繕委員会】

<編集部コメント>
設計コンサルタントも施工会社も慎重に選ぶことが必要ですが、会社選びでは規模だけではなく管理組合やマンションにあった会社を選ぶことが重要です。こちらの管理組合では「誠実な会社かどうか」という点に重きをおいて選んだのだそうですが、管理組合ごとに重要視するポイントは変わってくるかと思いますので、自分の管理組合ではどういった点を重視するのか明確にした状態で選ぶことが必要と言えそうです。プレゼンテーションの提案内容や会社の印象を見ることももちろん大切ですが、こちらの管理組合では会社のプレゼンテーションだけで決めるのではなく、実際に言っていることが正しいのか、といったことを調べることも行っていたのだそう。

大金をかける工事ですので納得のいくまで絶えず考え続けるこの姿勢は会社選びという点だけではなく、大規模修繕への知識をつけることもできるという意味でも大切にしたいですね。設計コンサルタントも施工会社も会社によって得手・不得手がありますので、マンションにあったパートナーを見つけることが大規模修繕工事においての最重要事項といっても過言ではなさそうです。

今後も経験者の智慧を共有していく予定です!


今回も3つのマンションの事例をご紹介しました。いずれのマンションでも有志の方による主体的かつ積極的な活動が成功へと繋がっていました。何事もそうですが、特に管理組合活動や大規模修繕工事など個人ではなく多くの人に関係する物事では「無理やりやらされている」と感じているメンバーの集団では満足度の高い成功へと導くことは難しいでしょう。また、主体的・積極的な有志メンバーの集団をいかに継続していけるか、そしていかに次代へ引き継いでいくかという点も管理組合として真剣に考え取り組んでいく必要がある課題と思います。今回の記事がそのきっかけやヒントになれば幸いです。
今後もインタビューのポイントを抜粋してご紹介していきたいと思いますのでお楽しみに!

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