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Vol.02 理事長インタビューから学ぶ!管理組合運営と大規模修繕工事のスムーズな進め方

2019.02.14


未経験で分からないことがある場合、経験者から学んだりヒントを得ることができる機会があると助かります。はじめてマンション管理組合の理事になったけどこれから何をしていけば良いか分からない……これまで理事は経験してきたが修繕委員には初めて就任した……いよいよはじめての大規模修繕工事の時期が近づいてきたけどどのように取り組んでいけば分からない……など様々なお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
いい住まい編集部では、これまで大規模修繕工事を終えた後のタイミングで理事長などから大規模修繕や管理組合運営についてのポイントや経験談を聞くことのできる機会がありました。Vol.01に続いて過去のインタビューの中からヒントとなりそうな部分を抜粋してご紹介します。

Vol.01 はこちら
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地域からも好かれる管理組合活動を

普段の管理組合活動としては、理事会を月に1度行っています。理事会メンバーは各フロアから1人選出しています。8階建ての建物なのでメンバーは8名で1年任期です。マンション全体の大きなイベントとしては、草刈や廊下・階段の掃除などを年に2回行い、その他に理事会主催の懇親会を行ったりもします。マンションの有志が集まり、1家族1品持ってきて食事会をします。地域を巻き込んだ大規模なイベントもあります。毎年1回地域のお祭りが開催されるのですが、そのお祭りのお神輿の行列をお迎えして料理を振舞っています。これは町内会からも喜ばれています。

私たちのマンションのカレーは評判で、「あのマンションに行けばカレーを食べられる!」なんて言われて親しまれています。その後、参加した住民たちでご苦労様会を行います。有志が集まって行うので、全員ではありませんが、このような形でコミュニケーションを深めています。大規模修繕工事のタイミングで集会室をきれいにしたので、どのように管理組合として活用していくか、今後何か企画を考えていきたいですね。【Dマンション 1985年竣工・約50世帯 理事会・修繕委員会】

<編集部コメント>
管理組合の理事の選出は立候補や輪番制、抽選式などマンションごとに方法は様々ですが、こちらの管理組合ではフロアごとに1人選出するという方法で理事会運営をしているのだそう。フロアごとの選出は各フロアに理事が暮らしている状態となり、マンション全体の状況を自然と理事会で把握しやすくなるため、建物の劣化箇所や故障にいち早く気付けるといった効果が見込めます。理事会運営でわからないことがあっても同じフロア内に理事経験のある人がいてすぐに相談することができるので、初めての理事でも安心して取り組むことができますね。また、管理組合で地域のお祭りなどのイベントに積極的に参加しているとマンション内のコミュニケーションのきっかけにもなり、地域の方とも交流を深めることができます。マンションに居住していると町内会などとの関りが薄くなってしまいがちですので、積極的に交流を深めて地域全体の活性化につなげていきたいですね。

誰をリーダーにするか

第3回目の大規模修繕工事を行うにあたり、大規模修繕工事実行プロジェクトチームを結成しました。今回の工事は検討期間等を含めて約2年間の期間がかかると予想されましたが、当管理組合では理事の任期は1年ですので、計画から工事完成までをカバーすることができません。そこで専任の大規模修繕工事プロジェクトチームを結成したのですが、こういった専任チームの結成は今回が初めてではありませんでした。

初めて専任のプロジェクトチームを組んだのは、排水管更新工事のタイミングでした。そのとき教えられたのが、メンバーに専門家が1名いたほうが良いということ。マンション内に建築に詳しい適任の方がいたため色々と相談に乗っていただいて大変助かりました。そのような経緯からも今回の大規模修繕工事プロジェクトチーム結成にあたり、その方には参加していただこうという運びになり、最終的にはリーダーをお願いしました。その方の働きぶりは近くで見ていても驚くほどでした。ひとつの材料を決めるにもご自分で下調べをしておいて、どれがいいか理由も説明してくれたので早く結論を出すことができました。そのおかげで組合員からも工事に否定的な意見はまったく出ませんでしたし、プロジェクトチームはとても上手く機能したと思います。ただ、チーム外の組合の方々はプロジェクトチームの活動経緯を詳しくは知らなかったので、プロジェクトチームについてもっとPRをすれば良かったとも思いました。【Eマンション 1974年竣工・約100世帯 プロジェクトチーム】

<編集部コメント>
理事の任期が1年の管理組合では、大規模修繕工事などの数年単位で検討が必要なプロジェクトになると理事会とは別のチームを立ち上げることが一般的です。チームメンバーの選定に関しては、立候補式や推薦、抽選などがありますが、こちらの管理組合のように建築・マンションなどについて詳しい適任の方がいれば、参加してもらうとスムーズに進みます。詳しい方がいない場合でも、チームメンバー全員が意欲的に学びながら取り組んでいかないとプロジェクトがスムーズに進行できなくなることに加え、難しい決断が必要になった際やトラブルを未然に防いだりすることが難しくなりますので(悪徳コンサルタント問題などに巻き込まれたら大変です!)、チームメンバーとなった方は関連書籍やインターネットなどで調べて必要な知識を取り入れましょう。またこちらの管理組合では広報活動を行っていなかったとのことでしたが、大規模修繕工事などの共用部の工事では特に、チームメンバーや理事会のメンバー以外にも居住者の協力を得なければならない場面もたくさん出てきます。そういった場合に工事への取り組みなどを広報しておくと、在宅工事など協力が必要になった場合に理解が得やすくなりますので広報活動を積極的に行うことも良いでしょう。

自ら調べ、主体的な行動を

今回の大規模修繕工事は、いわゆる設計コンサルタントに設計や監理業務を依頼せず、理事長が中心となって入札参加の各社から提出された工事仕様が当マンションにとって本当に適切かどうかという部分を吟味して実行しました。工事仕様を検討するのに役立ったのがインターネットです。「この工事のこの材料はどういうものなのか?」といった疑問点は自分たちで調べて、見積書を一行一行読みながら「本当にこれが一番適切なのか?」ということを各社の営業担当者と打ち合わせをして確認しました。建築に明るいわけではありませんが、材料の型番が分かれば、インターネットで大体の金額はわかります。工事費用はインターネットで確認できる値段より高いのは当たり前ですよね。なぜなら保証してもらうわけだから。しかし、これが2倍3倍もするのはちょっとおかしいですよね。また、インターネットでいろいろ調べていくうちに、大体費用はこれくらいなのか、こんな材料があるのか、こんな工法があるのかなど徐々に工事の知識が身に付いたことで、当初提出してもらった共通仕様書の内容も自分たちで確認して、結果、十分な修繕ができるものであると判断しました。

しかし、これは管理会社さんが作成したものですから施工会社には「別の仕様があれば提案してください」と伝えました。実際に工事をするのは施工会社ですからその施工会社が得意な工法のほうが、より安価でより良い品質を実現できるのではないかと考えたためです。実際、施工会社からは色々と助言や提案をもらうことができたので助かりました。そのような打ち合わせを7,8回程は行いましたね。やっぱり自分たちの大切な住まいです。ただ直すだけでなく、この先もずっと安心して住まうことが出来るよう、自ら調べ、足を動かして、主体的に工事仕様の精度を高めることが大切ですよね。【Fマンション 1987年竣工・約30世帯 理事会】

<編集部コメント>
こちらの管理組合では設計コンサルタントに設計や監理業務を依頼せずに工事を行う責任施工方式を採用していますね。責任施工方式は施工会社1社に設計~施工まで任せる方式ですので、設計コンサルタントを入れるよりも費用を抑えることができるという大きなメリットがあります。しかし設計管理方式にも言えることですが、管理組合に正しい知識がないと悪質なコンサルタントや施工会社を選んでしまい、それが原因で修繕積立金が大幅に不足してしまったり施工不良などのトラブルを引き起こす原因になることも。こちらの管理組合では見積もり書の内容を確認して適正価格の見積もりになっているのか、仕様は適切かなど比較するために必要な情報を主体的に調べるほかにも、工法の提案や助言を受けるために打ち合わせも積極的に行っていたのだそう。専門家が監理してくれるという面で設計管理方式にも大きなメリットがありますが、今はインターネットでさまざまな情報を手に入れることができますので、責任施工方式でも施工会社の提案が本当にベストなのかを主体的に調べて検討を重ねることで高品質でありながら費用を抑えた工事を実現することができます。管理組合の資金状況や建物の劣化状況に応じて、マンションや管理組合に合った工事発注方式を選びましょう。

今後も経験者の智慧を共有していく予定です!


今回も3つのマンションの事例をご紹介しました。いずれのマンションでも有志の方による主体的かつ積極的な活動が成功へと繋がっていました。何事もそうですが、特に管理組合活動や大規模修繕工事など個人ではなく多くの人に関係する物事では「無理やりやらされている」と感じているメンバーの集団では満足度の高い成功へと導くことは難しいでしょう。また、主体的・積極的な有志メンバーの集団をいかに継続していけるか、そしていかに次代へ引き継いでいくかという点も管理組合として真剣に考え取り組んでいく必要がある課題と思います。今回の記事がそのきっかけやヒントになれば幸いです。今後もインタビューのポイントを抜粋してご紹介していきたいと思いますのでお楽しみに!

<前回までの記事はこちらから>
Vol.01 
Vol.03

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