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特集

Vol.01 理事長インタビューから学ぶ!管理組合運営と大規模修繕工事のスムーズな進め方

2019.02.07


未経験で分からないことがある場合、経験者から学んだりヒントを得ることができる機会があると助かります。はじめてマンション管理組合の理事になったけどこれから何をしていけば良いか分からない……これまで理事は経験してきたが修繕委員には初めて就任した……いよいよはじめての大規模修繕工事の時期が近づいてきたけどどのように取り組んでいけば良いのか分からない……など様々なお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
いい住まい編集部では、これまで大規模修繕工事を終えた後のタイミングで理事長などから大規模修繕や管理組合運営についてのポイントや経験談を聞くことのできる機会がありましたので、過去のインタビューの中からヒントとなりそうな部分を抜粋してご紹介します。

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コミュニケーションと10数年先までのイメージが大切

前回の工事経験などが生かせないはじめての大規模修繕工事の場合は、まず修繕に対して大きなコンセプトを自分たちではっきりさせることが重要です。その後、設計監理方式であれば、管理組合、設計監理者、施工会社の関係三者がそれぞれしっかり協力する。管理組合自身が自分たちも協力体制の輪に入って、きちんとコミュニケーションをはかっていけば、良い大規模修繕工事が実現するのではないでしょうか。

また、マンションを長く持たせると考えた場合今から10数年後のイメージ、要は次回の改修時のイメージまでもしっかり持っておく必要があります。たくさん予算があれば良いですが、予算がないときにはどこを優先にするのか、部位によっては今回の大規模修繕が次回の大規模修繕のベースになる場合があります。次回想定される工事を見据えて今回行うことを十分に検討することが大切でしょう。なかなか管理組合自身で検討するのは難しいかもしれませんので、そのときは設計監理者=コンサルタントが活用できると思います。(Aマンション 理事長)

<編集部コメント>
大規模修繕工事を設計監理方式で行う場合、「管理組合」「設計会社」「施工会社」の3者が協力して大規模修繕工事を進めていくこととなります。ところが第3者の目でコンサルタントしてくれる設計会社がいると、つい知識のある設計会社にすべて任せ気味になってしまう場合も。マンションの所有者は管理組合員ですし、マンションの長期的な快適性や資産価値を考えるのには、修繕積立金を管理している管理組合の意見が重要です。また、現時点では修繕積立金が足りているとしても建物が古くなるにつれ補修個所が多くなり修繕費は高くなる傾向がありますので、次回の修繕を見越した計画を立てるというのは健全なマンション運営として外せないポイント。設計会社はそんな時に相談できるパートナーとして頼りにしつつ、相談をもとに管理組合で主体的に検討を行うことが大切と言えそうです。

サイレント・マジョリティを関心層にシフトさせる

建物施設の維持向上だけでなく、管理組合として住民同士のコミュニケーションをどう深めていくかが重要となります。当管理組合では特に大規模災害時のマンション内相互扶助については検討を迫られています。災害時にマンション内で有益な情報をどういう手段で伝達していくかなど、基本的なルールを作る必要があると考えています。マンション住まいの良さは何かあった時に和気あいあいとできるところですが、そうは思っていない住民も多いです。

当管理組合の場合、関心層20%・無関心層20%、その中間層が60%いますがこの60%の人たちを関心層にシフトさせることが課題ですね。大規模修繕工事の工事説明会には、これまで行ったイベントのなかで最多の90世帯近くが参加しました。大規模修繕工事を機会により一層開かれた管理組合にしていきたいと考えています。「管理組合があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが管理組合のために何ができるか。」そうして管理組合になることが理想ですね。(Bマンション 理事長・修繕委員)

<編集部コメント>
大規模修繕工事はもちろんのこと、マンションの管理に関しては全般的に各管理組合が行うこととなっていますが、普段の管理だけではなく大規模災害などの万が一に備えることも必要です。昔と比べ住民同士、近隣同士のコミュニケーションが希薄化している今、マンション内コミュニティや地域コミュニティはどの管理組合にとっても他人事ではありません。隣に住んでいる人の顔・名前・家族構成など、どのくらいわかりますか? 大規模災害時にはマンション内でも協力し合って生活することが必要となりますし、マンション内の人の顔がわかっていれば不審者がいても発見しやすくなります。そういった防災力・防犯力の向上にマンション内コミュニティの充実は欠かせないものですのでどの管理組合にとっても重要なポイントなのです。

高齢化問題への対策で業者の見積もりの半額以下へ

当管理組合は輪番制で理事会を組織しています。輪番制には良い点・悪い点がありますが、組合員みんなが理事の苦労がわかるので、あまり無理難題を言う人はいません。言ったとしてもあまり踏み込んではこないですね。それゆえ、比較的合意形成がしやすいのかもしれません。悪い点としてはやはり高齢化問題です。高齢のために理事の仕事を行うことが難しくなっていきている組合員がいるのが現状なので、新しいことも考えていかなければならないですね。

新しいことといえば、有志の人たちで環境クラブというのを作りました。クラブでは植栽のメンテナンスや芝刈りなどによるマンションの管理や居住者交流を目的としています。草刈り機の購入費、燃料代、ビニール袋代等管理費からを補助していますが、これからは参加者に報酬を払うことも検討しています。建物の管理も自分たちで実施すれば、参加者に報酬を払っても業者の見積もりの半額以下。参加者にとっても、どこか外にアルバイトに行くよりは団地の中で清掃をやった方が良いという方にはメリットがあります。こうやって節約できることは節約し、必要なところは充填していきたいですね。(Cマンション 理事長)

<編集部コメント>
築年数の古いマンションでは特に居住者の高齢化が問題となりやすくなります。高齢者が増えるほど入院や通院、介護などをはじめ、理事の任務を全うすることが難しい居住者の割合が増えますので、健全な管理組合運営をしていく上で、居住者の高齢化問題は重要な課題です。また、高齢化がさらに進みマンションに住むことが難しい居住者が増えてくると、空き家問題と直結してきます。高齢化してきた管理組合においては意欲的な組合員を中心に皆で助け合って管理組合を運営できるようにすると同時に、空室に若い世代が入居しやすいような環境づくりをすることも重要と言えます。

今後も経験者の智慧を共有していく予定です!

今回は過去のインタビューの中から3つのマンションの事例をご紹介しました。いずれの理事長もコミュニケーションが管理組合運営にも大規模修繕工事にも大切だと話されていましたね。あなたのマンションでは住民同士のコミュニケーションは十分にとれているでしょうか。もし不安に思われている場合、そのままにしていては解決することはありません。一歩踏み出して行動してみること、理事会の皆で話し合う機会をつくってみることが活路を見出すことに繋がります。今回の記事があなたのマンションをより住み心地の良いマンションへと向上させるヒントとなれば幸いです。
なお、今後もインタビューでのポイントを抜粋してご紹介していきたいと考えていますのでお楽しみに!

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