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Vol.03 理事長インタビューから学ぶ!管理組合運営と大規模修繕工事のスムーズな進め方

2019.02.22


未経験で分からないことがある場合、経験者から学んだりヒントを得ることができる機会があると助かります。はじめてマンション管理組合の理事になったけどこれから何をしていけば良いか分からない……これまで理事は経験してきたが修繕委員には初めて就任した……いよいよはじめての大規模修繕工事の時期が近づいてきたけどどのように取り組んでいけば分からない……など様々なお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
いい住まい編集部では、これまで大規模修繕工事を終えた後のタイミングで理事長などから大規模修繕や管理組合運営についてのポイントや経験談を聞くことのできる機会がありました。今回も過去のインタビューの中からヒントとなりそうな部分を抜粋してご紹介します。

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共通の困難が、役員の団結力を生んだ

Q修繕委員会では大規模修繕工事の着工前年から「修繕委員会だより」を発行し、組合員への広報に努めてこられた活動をはじめ、相当な労力を必要とされていたと思いますが、修繕委員会のスタート時にはどのような背景でどのようなビジョンを持って活動をはじめられたのでしょうか?

A推薦や立候補があったメンバーでスタートしました。翌年には前年の理事の方々が修繕委員になり、理事を1年、修繕委員を1年、合計で1人2年ずつ役員を務めることで情報伝達をはかりました。ビジョンというか、発足当初から当管理組合には共通の困難が存在しました。ひとつは本来ゴム状に固まっていなければならないシーリングがベタベタしているという不具合(=シーリングの硬化不良)があったこと、もうひとつは居住者のなかにいろいろなことをおっしゃる方がいらしたことがあり、我々は一致団結して立ち向かう必要があったのです。

Q最安値ではなかった施工会社に決定するということに組合員から反対はありませんでしたか?

A案外すんなりいきました。なぜかというと、良くも悪くも管理組合活動に対する関心の低さが原因だと思います。手を挙げるには論拠を持った発言が必要です。そのためにそれほど熱心に勉強する人がすくないのでしょう。我々役員は責任を持った者の集まりです。ミスのない決定をしなければなりません。我々はみんなのお金を有効に使いたい。高くても良い会社に頼みたい。そのあたりのことが理解されたのだと思います。【Gマンション 2002年竣工・約160世帯 修繕委員会】

<編集部コメント>
こちらの修繕委員会では「修繕委員だより」という修繕委員の進捗や、決定事項、決定に至った理由などを総会に出席できなかった方でも経緯がわかるように配布していたのだそう。定期的にこういった資料を配布しておけば総会での説明でもスムーズに説明することができますし、総会に出席できなかった方でも詳細を知ることができます。修繕委員会や理事会メンバー以外の通常の居住者の方が理解しやすいように広報活動を行うことはスムーズな管理組合運営にも役立ちますし、後々のトラブルを防ぐのにも有効です。

また、こちらのマンションではシーリングの硬化不良というトラブルがあったこともあり、値段だけを重視して決定するのではなく工事内容も含めた総合的な判断で最安値ではない施工会社を選択したのだそう。修繕積立金を使用するためには総会で承認を得る必要がありますので、最安値の会社ではない場合には特に、どのような理由で価格が違いその施工会社を選定したのか理解を得ないと総会で承認を得ることができません。金額に関わらずなぜその施工会社を選んだのかをスムーズに理解してもらえるように、総会用に資料を用意しておきましょう。

パートナーには、一緒に地元をつくりあげていってくれる人たちを

大規模修繕工事について我々はいわば素人集団なので、プロの目線で管理会社や施工会社に対応してくれるパートナーが必要だと考えてコンサルタントにお願いすることにしました。管理会社にすべてを任せてしまえば楽であっても、自分たちのマンションの修繕を自分ごとにしていました。素人なりに知恵を出そうとしていました。そういったこともあって、コンサルタントパートナーには建物を長生きさせよう、資産価値をあげようという理念で地元地域の一部を延命してくれる、一緒につくっていってくれる人たちを選定しました。

施工会社の選定では見積単価はどこもあまり大きくは変わりませんでした。選定した会社が他社と違ったのは、見積もりの段階で本当にこの仕事を請けるんだという気持ちで計画をしていると素人でも話を聞けば分かったところです。提案時での計画の緻密さが他社とはまったく違いましたからね。実際に工事中は何においてもきちんと報告をしてくれたので安心できました。【Hマンション 2004年竣工・約130世帯 理事会】

<編集部コメント>
大規模修繕工事を行う際に一番最初に大きな決定をするのが発注方式をどうするか、という点です。設計コンサルタントを入れる設計監理方式を採用するか、施工会社に設計から施工まで依頼する責任施工方式を採用するかによって、修繕委員の負担や役割なども大きく変わってきます。こちらの管理組合が選んだ設計監理方式はコンサルタント料がかかるため責任施工方式よりも修繕費が高額になる傾向があるものの、設計コンサルタントに施工会社の監理を依頼することで専門知識のある人に現場を見てもらえるという安心感が大きなメリットです。

修繕委員の選定の際に建築・マンション関係の職業の組合員にお願いして修繕委員会に入ってもらうという管理組合もありますが、関係職業の方がいない修繕委員会・管理組合などでは設計コンサルタントを入れることで施工会社の選定で専門家目線の意見を取り入れた選択をすることができるといえるでしょう。一方で修繕委員会に全く知識がないまま設計コンサルタントの意見に流されてしまうと、設計コンサルタントが施工会社と談合を行い不当に高い金額で工事を発注せざるを得なくなるなどのトラブルに巻き込まれてしまったという事例も報道等で取り上げられていますので、設計コンサルタントの意見が正しいか判断できるよう修繕委員会も知識をつけておきましょう。

現場管理には“三現主義”が大切

当管理組合は発足当初から親睦会という組織があって、その組織で年5~6回のイベントを企画しています。新年会や納涼会、バーベキュー大会、餅つきにお茶飲み会などといったイベントです。その親睦会が大規模修繕工事という大仕事は理事会だけでは難しいだろうということで長期修繕分科会を作ることを管理会社に提案したことがきっかけで分科会が作られました。理事会は参加者のほとんどが1年で任期終了してしまいますが、現在は理事長だけは引継ぎが確実に行われるよう、翌年に副理事長を担ってもらっています。管理会社の管理がしっかり機能しているので、組合側としてはそのやり方できちんと業務引継ぎができていますが、大規模修繕工事の場合は何年かの計画で進めなければなかなかなうまくいかないと考えたためです。

実際の大規模修繕工事では施工会社に「現場・現物・現実」を実際に観察した上で問題解決を図る“三現主義”を実施してもらうことで、より素晴らしい工事現場が生まれるのではないでしょうか。【Iマンション 2002年竣工・約100世帯 理事会】

<編集部コメント>
近年、多くの管理組合で共通して問題となっているのがマンションコミュニティの希薄化です。同じマンションの中でも隣の部屋の家族構成を知らない、名前を知らない、という状態では大規模災害時にマンション内の救助活動などにも悪影響が考えられます。こちらの管理組合ではマンション内のコミュニケーションを活発化させるための組織を立ち上げ、イベントを企画して居住者間のコミュニケーションを図っているそう。

こういったイベントを開催すること自体もマンションコミュニティにおいて良い影響を及ぼしますが、専用の組織がマンション内にあると居住者間のコミュニケーションの機会となるだけでなく、開催側の一員となることでマンションや管理組合運営への関心を高める効果も期待できます。理事会だけでは手が回りきらないイベント企画などは、理事会とは別に立ち上げると結果的に大規模修繕工事や理事会運営への予良い影響も期待できるかもしれません。

今後も経験者の智慧を共有していく予定です!


今回も3つのマンションの事例をご紹介しました。いずれのマンションでも有志の方による主体的かつ積極的な活動が成功へと繋がっていました。何事もそうですが、特に管理組合活動や大規模修繕工事など個人ではなく多くの人に関係する物事では「無理やりやらされている」と感じているメンバーの集団では満足度の高い成功へと導くことは難しいでしょう。また、主体的・積極的な有志メンバーの集団をいかに継続していけるか、そしていかに次代へ引き継いでいくかという点も管理組合として真剣に考え取り組んでいく必要がある課題と思います。今回の記事がそのきっかけやヒントになれば幸いです。
今後もインタビューのポイントを抜粋してご紹介していきたいと思いますのでお楽しみに!

<前回までの記事はこちらから>

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