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大宮駅周辺が大規模再開発で変わる!? 噂の真相をアーバンデザインセンター大宮(UDCO)に聞いた

2018.08.31


東日本の玄関口として、東北方面と首都圏をつないでいる「大宮駅」。全国屈指のビッグターミナルが、「グランドセントラルステーション化構想」により変貌を遂げるといいます。この真相を探るべく、計画を推進している「アーバンデザインセンター大宮(UDCO)」に訪問し、実態を調査してきました。

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全国屈指のビッグターミナル「大宮駅」が抱える課題とは?

埼玉県さいたま市大宮区に位置する「大宮駅」は、JR在来線、東武アーバンパークライン、埼玉新都市交通ニューシャトル、さらに東北、北陸、上越新幹線などの計14もの路線を有する、全国屈指のビッグターミナルです。この路線数は、東京駅に次ぐ全国2位の規模を誇ります。
一方で、地元が埼玉の筆者も大宮駅の利用者として感じていることに、他社鉄道への接続の悪さがあります。JR線から東武アーバンパークラインに行くにせよ、埼玉新都市交通ニューシャトルにせよ、改札同士の距離があり、移動も非常に困難なのです。また、駅近辺に有名な商業ビルがいくつかあるものの、 “ずっと変わらない大宮駅”感は否めません。筆者(30代)が中学生の時に初めて大宮へ友達と遊びに行ったときの印象からあまり変化していないのです。マイナーチェンジを繰り返すものの、ガラリと変わる印象がなく、どことなく漂うローカルな駅という印象。むしろ、隣のさいたま新都心駅は開業からわずか18年ですがよっぽど洗練されてきた印象です。
そんな大宮駅がようやく近年稀にみる再開発により大きく変貌を遂げようとしているといいます。そのグランドデザインをするうえで重要な役割を担っているのが、アーバンデザインセンター大宮(以下、UDCO)です。今回、このセンターでサブディレクター/デザインリサーチャーを務める石黒卓氏に、UDCOが目指しているビジョンや、大宮の再開発事業について、色々お伺いしてみました。

アーバンデザインセンター大宮(UDCO)とは?


Q.
まずは、UDCOとはどんな施設でしょうか?
UDCOは、「産+官+学+民」連携の基本理念で誕生しました。“民”主導、“官”主導の事業計画で進めてきたものを、我々が入ることで統合的に連携をとっていこうというものです。千葉県の「柏の葉アーバンデザインセンター」がアーバンデザインセンターのスタートで、同様の理念を共有する組織が全国に19箇所(2018年8月現在)あります。当初柏市では新市街地のコントロールを主な役割としていましたが、大宮ではもともと経済や文化が盛んな既成市街地に拠点をつくり、そこで市民の皆さまの意見を聞き、産官学民と連携・調整をしながら、まちの将来像を創造したり、魅力を育てていく活動を展開しています。UDCOができた背景として、さいたま市が運命の10年(H28.3国土形成計画より)という大きな変革期を迎える中で、さいたま市長の先導により、アーバンデザインセンターをさいたま市内に2か所設置することとなりました。2015年10月UDCMi(浦和美園)に続き2017年4月、大宮駅東口のラクーン8階のコミュニティスペース「まちラボおおみや」内にUDCOがオープンしました。

▲UDCOが担う3つの役割について

Q.UDCOの具体的な活動とは?

UDCOは大きく分けて①学習・研究・提案、②実証実験・事業創出、③デザインマネジメント、④エリアマネジメントの4つの活動を行っています。

学習・研究・提案
地域企業、大学、住民など多くの主体が街づくりに関わることができる機会を創出し、学習・研究・提案に加え人材育成を進める

実証実験・事業創出
公共空間やオープンスペースの利活用を推進し、まちのストックの最大活用と、まちの魅力や価値の向上を図る

デザインマネジメント
質の高い空間デザインを提案し、行政計画やまちづくりプロジェクトへの企画、提案を行う

エリアマネジメント
安心・安全かつ快適な都市空間や生活環境の実現とともに、将来にわたって発展し続けるまちとなるため地域と連携したエリアマネジメントに取り組む

昨年(2017年)、その4つを具現化する取り組みの1つとして、「おおみやストリートテラス」という道路上の社会実験を開催しました。

Q.おおみやストリートテラスとは?
大宮区役所前の氷川緑道西通(にしどおり)線で開催した賑わいづくりの社会実験です。この道路は現在、東口の混雑緩和や歩行者・自転車の安全な空間確保の目的で拡幅工事が進んでいます。その工事中の空地(道路予定区域)に特別な許可のもと店舗などを誘致して賑わいづくりを試みました。

▲大宮ストリートテラスの開催風景

Q.どんな目的で開催したのでしょうか?
 “公共空間の利活用”が目的でした。通常、道路の用地取得から拡幅工事までは10年~20年もの年月がかかり、事業完了までは収益を生まない低未利用の公共空間です。そこで、この空間を地元の事業者さんと使っていくことで、将来的に利益をうみだし、道路・沿道の維持管理・運用のために還元できるのかを試してみました。実際、この近隣にはファミリー世帯が多く住まう高層マンションがいくつかあって人通りもあります。西通線の南区間(中央通り以南)の開通は平成31年、北区間はもう少し先になりますが、開通すれば新しいお店なども誘致することになるでしょう。そういった将来に向けて、新たな事業者さんにとってのサウンディングの場あるいはPRの場として、インキュベーションにつながると考えたからです。

▲大宮ストリートテラス開催前の西通線(現在閉鎖中)


▲将来拡幅される西通線の工事エリア内にて、大宮ストリートテラスが開催されました

大宮駅周辺ではどんな開発事業が進んでいるのか


Q.
この大宮駅東口エリア一体では、どんな再開発事業が進んでいるんでしょうか?
大宮駅周辺地域は、2010年に作成された「大宮駅周辺地域戦略ビジョン」で掲げる「東日本の顔となるおもてなしあふれるまち」を目指して、まちづくりが進められています。その中で、東口エリアでは、大宮区役所の移転・建替え事業や市民会館の機能移転などのトピックスがあります。大きく分けると、旧大宮区役所の跡地を活かした「駅前賑わい拠点」、大宮区役所新庁舎ができる先の「地域連携拠点」、そして「氷川神社の周辺エリア」をトータルで考えることで、連鎖型のまちづくりを目指しています。

▲大宮駅東口エリアで、UDCOが支援している3つの公共施設再編プロジェクト
(参照:大宮駅周辺地域のまちづくりと「公共施設再編による連鎖型まちづくり」)
素材:連鎖型街づくり

Q.連鎖型のまちづくりとは?
たとえば、大宮区役所の建物がつくられたのは1966年です。調査の結果、耐震構造が条件を満たしておらず今回の建替が決定し、2019年に新庁舎が西通線の目の前に移転されます。その新庁舎が「地域連携拠点」としてどう活用するかを考えたときに、隣の山丸公園も一体としたデザインが必要となります。パプリックミーティングを実施して、みなさんからは、“歩いていて楽しい”とか、“交流の場を生んでほしい”などの意見がありました。一方で、「駅前賑わい拠点」では、移転した区役所跡地の活用方法、そして隣地の大宮小学校との連携も議論のポイントになっています。また、「氷川神社エリア」では、先ほどの氷川緑道西通が完成することで、いずれ氷川参道は歩行者専用になる予定です。そういう個別の開発を考えつつも、それぞれが連鎖的に再編されていくように考えていくことが大事なポイントです。

▲「まちラボおおみや」内には、大学の設計課題と連携した「大宮東口プロジェクト(2013~2016)」において、副センター長の藤村龍至氏(現、東京藝術大学准教授)とともに東洋大学、東京藝術大学の学生が考えた提案模型などが並んでいます。

Q.大宮駅自体が、どう変わるのかを教えていただけますか?
大宮駅は、まだ構想段階ではありますが、「グランドセントラルステーション化構想」という計画が進んでおります。「首都圏広域地方計画(平成28年3月策定)」によれば、大宮を「東日本の玄関口」として、東日本の各圏域を連結する対流拠点としての役割を新たに担いました。東北・上越・北陸方面の方が首都圏に入るときには必ず大宮を経由しますよね。たとえば、大災害などがあった際に大宮が受け皿になる防災機能の拡充であったり、ビジネスや商業がどんどん発展していき、東日本の発展を牽引する存在になっていくようになるため、駅とその周辺の大幅なバージョンアップを行うというのが、「グランドセントラルステーション化構想」です。

Q.実際、どんな計画が進んでいるのですか?
大宮駅は鉄道相互の乗り換え距離が長く、また非常に混雑していました。そこで、駅東側に新たに東西を結ぶ通路をつくり、そこを24時間開放するという計画があります。これにより各線との乗換利便性や防災機能が向上されるうえに、いずれは西口のデッキネットワークともつながっていき、駅界隈の回遊性を高めていくことが計画されています。

▲新たな東西通路をつくることで、大宮駅構内の回遊性と乗換利便性を高めていく
素材:東西通路

もう一つは、東口駅前の交通広場の改善です。今現在だと階段を降りると、すぐタクシーとバス乗り場になっていて全体的に狭く、人が滞留することができる場所ってほとんどないですよね。例えば、大阪の「うめきた広場」や、札幌の「北3条広場」などのように、人中心のパブリックスペースを生み出していくことが重要ではないかと思っています。大宮駅の改札が2階にあるので、東口はそこから大きな階段で降りてくるような広場があって、まちへ緩やかにつながっていくような姿があり得るかもしれません。そこでは東日本の各地と連携した様々なイベントが開催されたり、日常的にも思い思いの時間を過ごせる場所になってほしいと思っています。大階段は『ローマの休日』のようなドラマティックな情景が生まれるかもしれませんね。

▲現在の大宮駅東口の駅前広場はバス・タクシープールが中心になっている



▲グランドセントラルステーション化構想で検討中の駅前広場イメージCG各種
参照:http://www.city.saitama.jp/001/010/015/004/007/001/p052328_d/fil/GCS_kousousaltusi1-2.pdf

Q.とても素敵な構想ですね! 計画にあたり、ライバル視した都市はありますか?
大宮は、広域地方計画では関西方面からの対流拠点である「品川駅」と同格の位置づけになっているわけですが、品川はオフィスのイメージが強いですが、大宮には、武蔵一之宮「氷川神社」や、世田谷区の面積に匹敵する田園地域「見沼田んぼ」、鉄道の歴史もある。そういった歴史や文化の文脈を活かせると良いと思いますし、人も熱意に満ちた人が多いと思います。これからの都市間競争の中で世界の都市と対峙するようなことを考えると、ドイツのフランクフルトとか。交通の要衝であり見本市でモノと技術が様々に交流しているような。それぐらいのポテンシャルを見いだせると良いと思います。

Q.今後、大宮はどんな街になっていってほしいですか?
JR上野東京ラインも開通して、より都心に近い街になりました。これだけ都心に近くて、自然もあってスポーツや、グルメも豊富。特にアクティブシニアの方にとっては、すごく暮らしやすいのではと思います。そういう意味では、“商都大宮”としてのバリューアップはもちろんのこと、今後はもっと“住まう街”としての価値も高まっていくといいなと思います。

まとめ

大宮駅前に人が憩える広場をつくる。その話を聞いて、筆者が一番に思い浮かんだのが、横浜のみなとみらいにある「グランモール公園の円形広場」です。横浜美術館とランドマークタワー方面をつなぐ階段状の広場があり、週末になると大道芸などで大いに賑わいます。そこを目指して人が訪れ、エキサイティングな時間を過ごしたり、ただのんびりとした時間も過ごせる場所です。そんな光景が将来の大宮駅で実現するかもしれないと思うと、感慨深い気持ちでいっぱいになりました。もし、あなたが大宮の再開発について、少しでも興味を持っていただけたのなら、ぜひUDCOが運営する「まちラボおおみや」へ足を運んでみてください。定期的なパブリックミーティングも開催されているので、そちらに参加して熱い想いを語ってみるのもおすすめですよ。

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お話を伺った方≫

アーバンデザインセンター大宮|UDCO
サブディレクター/デザインリサーチャー
石黒卓 氏

まちラボおおみや
〒330-0802 埼玉県さいたま市大宮区宮町1-60 大宮ラクーン8階 まちラボおおみや内
http://www.udco.jp/access/

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