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管理組合はどう対応すべき?マンションの騒音トラブル

2019.04.24


トラブルの火種となりやすい騒音トラブルですが何十・何百世帯もが同じ建物に住んでいるマンションなどは特に騒音トラブルが起こりやすい環境と言えます。分譲マンションでは簡単に引っ越すわけにもいかず、トラブルとなった際に管理組合へ問題が持ち込まれることもあるようですが、管理組合はいったいどのように対処すべきなのでしょうか。騒音トラブルへの対処法と防止策についてご紹介します。

どのような騒音トラブルがあるのか


せっかく購入したマンションでも上層階の足音や、隣家から聞こえる騒ぎ声などにストレスを感じてしまうと家でくつろぐことができません。古いアパートなどに住んだことがある方は壁が薄く木造の建物も多いことから、騒音とまではいかなくとも、隣家や上層階の音が聞こえるという経験もあるのではないでしょうか。こういった古いアパートに限らず新築のマンションでも音に関する問題というのは起きているのです。たまにならばともかく、日夜問わず何かしらの物音が聞こえるというのは大きなストレスになり得ます。それでは、どのような音がトラブルになるのでしょうか。スーモジャーナルの、「近隣トラブルに関する調査」によると日常生活音別に「かなり気になる」「あまり気にならない」「まったく気にならない」の3段階で回答してもらったところ、下記のような結果になったのだそう。


引用元:SUUMO「近隣トラブルに関する調査」より

子どもの声やペットの鳴き声などが上位に並ぶ中、僅差で1位となったのが「子どもを叱りつける親の声」。子どもが悪いことをしていたら叱らないわけにもいきませんが、親の声の方が近隣住民からすると気になってしまうようです。筆者も子どもを叱りつける親の声が気になった経験がありますが、音の大きさ以上にあまりにも頻繁に聞こえるため「虐待ではないだろうか……」といらぬ心配をして、気になってしまったことを覚えています。気になる音として多かったのはペットや人の声や足音などでしたが、その他の生活音についても10%前後の方がかなり気になると答えている項目も複数あることから、トラブルの引き金となる可能性はありそうですね。

マンションの騒音トラブルはなぜ起きるのか


近隣や上層階の音をうるさく感じたとき、どの程度まで我慢すべきか迷ってしまうと思いますが実際の「騒音」の基準はどの程度なのでしょうか。環境省の環境基準によると、住宅における望ましい音の基準値は時間帯によって分けられており、まわりの環境にもよりますが朝~夜(06:00~22:00)は50~60デシベル以下、深夜~早朝(22:00~06:00)は40~50デシベル以下が基準値となっています。これを日常生活に当てはめてみると、普通ボリュームの会話が60デシベル、エアコンの室外機の音が50デシベル、図書館の中が40デシベルなのだそう。つまり、これらの基準を超えていると騒音となる可能性があります。確かに昼間であれば気にならない音も、夜に同じボリュームで聞こえてきては困りますよね。

さらに、騒音トラブルは音の大きさだけでは測ることができないのもやっかいなところです。例えば先ほどの気になる音に関する調査で上位になっていた「子どもを叱りつける親の声」や「子どもの騒がしい声」などは、同じ空間でなければ60デシベルを大きく超えるようなボリュームはなさそうですが、気になる音の調査では上位となっています。これは「煩音(はんおん)」と呼ばれるもので、ボリューム自体が大きくなくとも聞こえている側の心理状態によって“不快”と感じる音のことをいいます。例えば動物が苦手な方からすれば犬や猫の鳴き声が不快で気になってしまうかもしれませんし、子どもが苦手な方は子どもの声が耳に入るのが嫌かもしれません。騒音トラブルというと大きな音が原因というイメージがありますが、煩音もまたトラブルとなり得ることなのです。

困った騒音トラブルに管理組合はどのような対応をすべき?


騒音トラブルが発生すると、トラブルになっている居住者同士ではなく管理組合に相談が持ち込まれる可能性もあります。国土交通省による「平成25年度マンション総合調査結果」によると、管理組合に寄せられたトラブルのうちもっとも多いトラブルは「生活音」(音のトラブル全般)となっているのだそう。同調査の「区分所有者がマンションの管理・運営に疑問を持った時の相談先」に関するアンケートでは「理事長又は理事(50.6%)」と回答している方が半数を超えていることからも、音に関するトラブルの相談が管理組合に寄せられる可能性はあると考えるべきでしょう。理事会、もしくは理事へ騒音に関するトラブル相談が寄せられた場合にはどのような対応ができるのでしょうか。

1.管理会社に対応を任せる


管理会社へ管理委託を行っているマンションの場合には、委託内容によっては管理会社に連絡をして対応をお願いすることができます。管理組合員はほとんどがマンションの居住者の場合が多いと思いますが、トラブルに対応することで管理組合とトラブルとなっている居住者で新たなトラブルが発生することを防止するため、完全な第3者である管理会社に対応してもらったほうがいい場合もあります。対応は管理会社によりケースバイケースですが、注意喚起のお知らせを掲示・配布してくれることもあるようです。

2.管理組合が間に入って対応を行う


管理会社に対応してもらうことが難しい場合や、管理会社に委託していない場合には管理組合が間に入って対応を行うこともあります。居住者同士でトラブルとなった場合、「騒音を出している」「静かに暮らしている」の水掛け論となりがちです。騒音の原因に合わせて対策をお願いしたり、実際にどの程度の音なのか測定器で測り客観的に把握できるようにする(騒音レベルでない場合は問合せ者にも理解してもらう)、といった対応があるようです。

3.管理規約を整備して再発を防止する


騒音トラブルに限らずですが、トラブル防止の施策として管理規約の整備があります。声や足音がトラブルの原因だった場合には難しいですが、例えば楽器の演奏音がトラブルの原因だった場合には「楽器類の演奏は20時までとする」と定めることや、楽器を演奏する場合には騒音対策として防音パネルの設置を義務付けるといった規約を定めることでトラブルを未然に防ぐ効果が見込めます。

4.居住者間コミュニケーションをとる機会を作る


楽器の演奏音などに関するトラブルは管理規約で防ぐこともできますが、煩音による騒音トラブルは管理規約で防ぐことが難しい面があります。親が気を付けていても夜遅くに子どもが騒いでしまうことはありますし、親としても騒いでいる子ども以上の大声で注意をしなければいけないシーンもあるかもしれません。

このような煩音によるトラブルを防ぐためには、居住者間のコミュニケーションが有効です。顔も見たことがない家から子どもの騒ぎ声がすれば不快かもしれませんが、日頃から挨拶をして顔見知り程度にでもなっていれば「小さい子だし仕方がない」と思えるかもしれませんし、「気を付けてくださいね」と注意喚起もしやすくなるのではないでしょうか。騒音トラブルに限らず居住者間のコミュニケーションがとれるよう管理組合でイベントなどを企画することは、防犯や防災といった面でも有効ですので積極的に行いましょう。

騒音トラブルは音の大きさの問題だけではない分、解決が難しいところもありますがマンションのような集合住宅では起こりやすいトラブルでもあります。自分にとっての煩音がすれば不快にもなりますし、掃除機や洗濯など大きな音の出る家事は夜遅くに行わないといった配慮は必要ですが、基本的には“お互いさま”といえるように、最低限のコミュニケーションがはかれる環境づくりを行っていきましょう。

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