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2019年10月マンションの火災保険が値上がり?保険料を抑えたい管理組合がしたいこと

2019.09.03


2019年10月から消費税の引き上げがありますが、その他に火災保険や地震保険の値上げが実施されることをご存知でしょうか。消費税増税と重なったこともあり、家計にも大ダメージを与えそうな今回の値上げですが、火災保険全般が値上げとなるため管理組合で加入している共用部を対象とした火災保険や地震保険も値上げの対象となってしまうのです。管理費を圧迫することが予想されます。マンション管理組合が火災保険に加入することは義務ではありませんが、共用部の給水管劣化が原因の漏水や、マンションの不備が原因で人に怪我をさせてしまった場合など、共用部で起きる事故に広く対応できる火災保険は、ほとんどの管理組合が加入しています。また、火災保険では対応していない地震被害をカバーできる地震保険も、近年大規模地震が増加してきていることから加入している管理組合も多いようです。今回の値上げによる影響を少しでも抑えるためには、管理組合はどのように対処していく必要があるのでしょうか。

10月より火災保険が一斉値上げ


10月からの値上げとなると、消費税の引き上げが原因かと思われる方もいるかもしれませんが、今回の保険料の値上げは損害保険会社が保険料を設定する際の基準としている“参考純率”※の引き上げが行われたためです。

この参考純率は建物が火災や自然災害によって被害を受けるリスクや、前年の損害額によって都道府県ごとや構造(鉄筋コンクリート造・鉄骨造・木造)ごとに、毎年見直されています。そのため、2018年に大規模な自然災害(西日本豪雨・大阪北部地震・北海道胆振東部地震等)が連続して発生したことや、凍結や老朽化による水道管の劣化が原因の漏水が年々増加していることから、今回平均で5.5%の引き上げとなったのです。

日本損害保険協会によると2018年の自然災害による保険金の支払額は過去最高の1.6兆円。保険料収入全体に占める保険金支払額の比率は、90年代半ばの約53%から2017年度には62%に、2018年度にはまで上がっています。自然災害は予想することが難しいため、数十年に一度規模の大規模災害が発生した場合に備える「異常危険準備金」を毎年積み立てていますが、2018年度に関してはこれを取り崩しての対応となったのだそう。
それでは実際にはどの程度の値上げとなるのでしょうか。

※参考純率とは、公正な保険料率の算出をするための基となる数値で、この数値の算出のために設立された損害保険料率算出機構という団体によって算出されています。

値上げ幅はどの程度


参考純率をもとにした保険料率算出の結果、平均5.5%の引き上げとなりましたが、火災保険の金額が一斉に5.5%の引き上げとなったわけではなく、あくまでも基準としている数値の平均が5.5%引き上げとなった状態です。そのため、住んでいる地域や構造によっては参考純率の引き上げが5.5%よりも低く設定された場合もありますし、5.5%よりもはるかに高い設定となった場合もあります。しかし鉄筋コンクリート造の共同住宅等はすべての地域で参考純率が上昇となっているため、マンションの保険については値上げをほぼ避けられないと考えたほうが良さそうです。

参考純率を算出している損害保険料率算出機構によると、鉄筋コンクリート造等の共同住宅のうち最も改定率の少ない愛媛県で4.1%の引き上げ、最も改定率の高い鹿児島県では40.1%の引き上げとなっています。あくまでも参考純率の引き上げですので、現状から必ず参考純率分の引き上げになるとは限りません。参考純率よりも低く済む場合もありますが、参考純率以上の引き上げになる可能性もありますので、今の内からどの程度の値上げになるか確認しておきましょう。

損害保険料算出機構の発表資料はこちら

管理組合はどう対処したら良い?


加入している保険の値上げ金額が分かり、これまでの管理費では不足することが予想される場合、どのように対応したら良いのでしょうか。管理費を値上げすることでも対応できますが、管理費の値上げのためには総会での普通決議または特別決議が必要となります。区分所有者としては、できれば管理費の値上げは避けたいですよね。今回の火災保険料値上げの影響を少しでも抑えるにはどうしたら良いのでしょうか。

補償内容を見直す
最もシンプルに値上げを抑えることができるのが、補償内容の見直しです。火災保険とひと口に言っても補償内容や対象箇所は選ぶことができます。例えば、対象箇所を選べるのであれば、個々のマンション毎に比較的リスクの低そうな場所については対象箇所から外すことで火災保険の金額を下げることができます。また、地震による被害や地震が原因で発生する災害(地震火災・津波等)を補償してくれる地震保険については、ハザードマップを見てリスクが低い場所であれば内容の大幅な見直しなどを検討しても良いかもしれません。マンションにとって必要な補償はどれか、不要な補償がないか、契約内容を確認してみましょう。

値上げ前に長期契約を結ぶ
補償内容に不要な部分がないようであれば、値上げする前に長期契約を結ぶということも一つの方法です。火災保険は保険会社によって最長10年まで契約することができますので、一時的な負担は大きくなりますが値上げする前に長期契約することで、今後も値上げが続くような場合にはトータルで値上げを抑えることができます。

保険会社を乗り換える
長期間火災保険を見直していない管理組合では、値上げをきっかけに契約内容とあわせて保険会社を検討しなおしてみても良いかもしれません。基本的に築年数の経過したマンションの方が保険料は高くなりますが、マンションの管理状況に応じて保険料を割り引きしてくれる損害保険会社もでてきています。複数社で相見積もりをしてみて、今の火災保険がベストかどうか再検討してみることで結果的に値上げを抑えることができるかもしれません。

その他の値上げ要因にも気を付ける
2019年10月から予定されている値上げは参考純率の上昇が影響していますが、そのほかにも漏水などの事故で損害率が高くなってしまうと、値上げの原因となってしまいます。事故が起こらないよう修繕することはもちろん、事故が起きてしまった場合にもすべて保険で賄うのではなく、金額によっては管理費で負担することも検討しましょう。

管理組合が加入できる保険についてはコチラ

今回の参考純率の引き上げは、自然災害だけでなく給排水管からの漏水が増えてきていることも原因の一つとしてあげられます。給排水管など普段はなかなか意識しづらい部分も適切な点検、メンテナンス、修繕などを確実に行い、マンションを良い状態に保つことが結果的に費用の節約になるといえるでしょう。

大切な管理費を上手に使い、区分所有者も居住者も皆が安心して暮らせるマンションづくりをしていきましょう。

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