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管理規約で民泊規定を決めていますか? トラブル防止のために考えておきたい管理規約改定

2019.05.06

以前頻繁にニュースなどでも取り上げられていた「民泊問題」を覚えていますか? 「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行されてから1年弱経ち、取り上げられることも少なくなりましたが民泊によるトラブルは発生しているようです。特にマンションに住んでいる方にとっては生活に大きな影響を与えかねない問題ですので、民泊でトラブルを防ぐ方法や民泊住戸があるマンションでの対応方法を復習してみましょう。

2018年に話題となった民泊問題しっかり理解していますか?


マンション管理組合にとって2017年~2018年に大きな話題となった民泊問題。マンションに住んでいる方に限らず、ニュースなどでよく耳にしたかと思います。ニュースでは民泊の問題点やトラブルについてよく取り上げられていましたが、自分の住んでいるマンションの管理規約では民泊について定められているか確認しましたか? “理事ではないからわからない”という方や、“民泊に使用している住戸はないから問題ない”と安易に考えている方、ちょっと待ってください。民泊問題の怖いところは、「トラブルになってからでは遅い」という点にあるのです。

そもそも民泊とは個人宅や投資用に所有している、元々は宿泊施設ではない住戸や部屋の一部を宿泊施設として貸し出すことをいいます。ホテルや旅館などの営業は旅館業法という法律で規制がかけられていますが、民泊は元々が宿泊施設ではないため旅館業法の要件を満たすことが難しく、「違法民泊」と呼ばれる規制を守らない民泊が増加するという問題が発生しました。そこで民泊用に2017年6月に定められたのが「住宅宿泊事業法(民泊新法)」です。(施行は2018年6月15日から)この「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が定められたことによって、一定基準を満たした住戸に関しては、届け出をすれば年間180日まで宿泊施設として貸し出すことができるようになりました。ここで話題となったのが、マンションでの民泊営業についてです。

マンションでは同じ建物に他の居住者が住んでいますので、民泊利用者がマンションを出入りすることによる防犯面の問題や、民泊利用者のマナー違反によるトラブルが懸念されました。そういったトラブルを防ぐため、民泊について理事会で検討を行い民泊によるリスクが高いと判断されたマンションでは、民泊を管理規約で禁止する動きがでてきたのです。民泊を確実に禁止するためには、民泊の届け出開始日の2018年3月15日までに、マンション管理規約を改正し、民泊を禁止する必要がありました。そのため、民泊問題は特にマンション管理組合で話題となったのです。

その時に管理規約の改正を行ったマンションでは問題ないのですが、現在でも改正を行っていないマンションは注意が必要です。民泊問題の恐いところは、民泊が行われてトラブルになってから改正してもすでに民泊の届け出を出している区分所有者に関しては、“後から民泊を禁止できない場合がある”というところにあります。

基本的に管理規約の改正は特別決議によって変更を行うことができますが、民泊の届け出を出した後に管理規約の改正で民泊を禁止するには、区分所有法の規定により民泊を行っている区分所有者の承諾を得る必要がでてくる場合があるのです。

もちろん承諾を得ることができれば何の問題もありませんが、承諾してくれなかった場合は我慢せざるを得ないかもしれません。そうならないために、今からでも管理規約を改正して後々トラブルとならないよう対策しておきましょう。

民泊住戸があることで考えられるリスク


メディアの情報などで民泊に対してなんとなく嫌なイメージがあっても、マンションにとってどのようなリスクがあるかはご存知でしょうか。民泊として使用される住戸がマンションにあることによるリスクは、下記のようなものがあります。

1.マンション防犯性の低下


エントランスがオートロックになっていないマンションでは玄関の鍵の受け渡しだけで済みますが、エントランスやエレベーターがオートロックのマンションでは、共用部に入るための鍵も民泊利用者に渡すことになります。普通に出入りするだけならば問題ないという方もいるかもしれませんが、例えば

・民泊利用者を装った泥棒だった場合
・共用部の鍵を民泊利用者が紛失した場合
・共用部の鍵を複製されて転売された場合

など、区分所有者ではない不特定多数の人が出入りすることによる防犯性低下のリスクがあるのです。特に共用部の鍵が悪用されてしまうと、エントランスキーをはじめ全戸の玄関錠の取り換えが必要になるといったことも考えられます。鍵を不特定多数の人に貸し出す民泊は、それだけ大きなリスクを伴うのです。

2.民泊利用者のマナー違反によるトラブル


民泊利用者は普段マンションに住んでいる方ではないため、大声で騒いだり、共用部を汚したりといったマナー違反の可能性が考えられます。宿泊施設として作られているわけではないためホテルや旅館と同じ騒ぎ方をされては、隣接した住戸の方にとってはかなり迷惑に感じますよね。たとえその日に注意をしても、民泊利用者が変わるたびに同じことの繰り返しではかなりのストレスです。

3.外国人利用者とのトラブル


民泊の利用者には海外旅行者がいる可能性もあります。文化が違う海外の方が民泊を利用すると前述したようなマナー違反が起こりやすくなる上、日本語が通じなければ近隣住戸の方が注意することもできません。分からない言語で騒がれ、注意もできない環境では近隣住戸にとって大きなストレスとなりますし、民泊利用者と近隣住戸居住者が万が一トラブルになったときに、言葉が通じない分解決がより難解になります。民泊利用者は日本人に限らないという点も、民泊の難しさかもしれません。

4.消防法による規制が厳しくなる


近隣住戸ではなく管理組合に一番影響があるのは、消防法による規制が厳しくなるという点です。例えば通常のマンションであれば自動火災報知機の設置義務は延べ面積500㎡以上のマンションが対象になりますが、民泊住戸があるマンションに関しては延べ面積300㎡以上のマンションが対象になります。その他にも、通常のマンションであれば必要ない停電時用の非常電源(自家発電設備)が、延べ面積1,000㎡以上のマンションでは必須になるなど、民泊住戸があることによって追加で設置する必要がでてくる設備の設置費用や、保守・点検費用など、管理費の負担となる可能性もあるのです。

民泊「禁止」または「ルールの制定」でトラブル防止を


「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が施行されてから1年弱経ちましたが、まだ民泊に関する管理規約改定を行っていない管理組合では、まず民泊について管理組合としてどう対応していくかを協議しましょう。そして管理組合で決定した内容を反映できるよう管理規約の改定手続きを行いましょう。また、禁止しようとなったときにすでに民泊住戸があり区分所有者の承諾を得られないなど、禁止することが難しいにはトラブル防止のための管理規約を追加することで対応しましょう。

例えば住戸の中や共用部でのルールを告知、掲示することを義務付けることや、民泊利用者の共用部の使用を一部制限すること、民泊利用者の過失による警備会社の出張費用は管理費ではなく民泊運営者負担を義務付けるといったことが考えられます。民泊を受け入れる、受け入れないという判断は管理組合によるかと思いますが、まだ検討も行っていない管理組合では一度どうするか検討を行いましょう。

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