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大規模修繕工事にも瑕疵保険がある?工事前に知っておきたいマンションの瑕疵と保険の話

2019.06.03


マンションの大規模修繕工事が適切に行われなかった場合に使える「大規模修繕瑕疵保険」をご存知でしょうか。新築時の瑕疵保険については知識があっても、大規模修繕工事の瑕疵保険となると分からないという方もいるかもしれません。大規模修繕工事は建物を健全な状態で維持するために行う工事ですが、大規模修繕工事時の施工が悪いと、大規模修繕工事が原因で漏水してしまったり、必要な補修ができていなかったりといったことも起こり得ます。本来であれば施工会社が対応して修繕してくれるのですが、施工した会社が倒産してしまっていたり、原因が不明瞭で施工会社が対応出来ない場合に、必要となるのが大規模修繕瑕疵保険です。大規模修繕工事がまだ先という方も、大規模修繕瑕疵保険について学んで、有事の際のトラブルを防ぎましょう。

大規模改修工事の施工トラブル

マンション防火対策記事でも少し触れましたが、ロンドンの高層マンション、グレンフェルタワーで発生した大規模火災の被害が大きくなった原因の一つに、大規模改修工事の施工に問題があったとされています。火災発生前に行われていた大規模改修工事の施工内容は、難燃性(燃えにくいものの燃えないわけではない)の断熱材を外装用の金属パネルで覆う仕様で外壁の断熱工事を行っていました。

この工事によって被害が広がったとされる理由は主に二つあり、下記のような理由と言われています。
・断熱材が燃えたことにより、通気層が煙突のような役割を果たし上層階まで炎が広がった
・金属製の外装材が邪魔をして燃えている断熱材まで消防隊の水が届かず消火できなかった


引用元:https://www.mlit.go.jp/common/001205300.pdf

日本では新築時の耐震偽装のような新築時の瑕疵問題を耳にしますが、大規模改修や修繕でも瑕疵による被害というのはあり得るのです。グレンフェルタワーのような火災でなくとも、防水工事の施工が不十分で住戸に漏水したり、取り替えたタイルの施工が悪く落下してしまうといったことは考えられます。こういった場合は本来施工会社が再度施工を行い不具合箇所を直すといった対応を行いますが、何かしらの理由で施工会社が対応出来なかったり、施工会社が倒産しているとその費用は管理組合で負担しなければならないことに。修繕積立金に余裕があればまだ良いですが、修繕費用が足りず補修できなくなってしまえばマンションの資産価値は下がる一方。そうならないために検討したいのがのが大規模修繕瑕疵保険です。

大規模修繕瑕疵保険でできること

大規模修繕工事にも瑕疵のリスクがあることは前述しましたが、この大規模修繕工事の瑕疵に備える大規模修繕瑕疵保険とはどのような内容になっているのでしょうか。そのメリットをご紹介します。

メリット1:瑕疵の修繕費用を負担しなくて良い

大規模修繕工事が終わった後で瑕疵の可能性がある不具合が発生した場合、大規模修繕工事の施工会社等に連絡をして調査をしてもらうことになります。しかし、悪質な施工会社だと瑕疵による不具合と認めなかったり、なかなか修繕をしてくれないといったことが起こる場合も。そうなると不具合を直すために修繕積立金を使って別の施工会社に依頼しなければなりません。
一方、大規模修繕瑕疵保険が適用できる場合には保険会社に連絡をすれば保険会社が調査をしてくれるため、調査での不正を防ぐことができます。また、施工会社も瑕疵の修繕を行うと修繕に使った費用を保険会社から受け取れるので、費用の負担を最低限で済ませることができるのです。

メリット2:施工会社が倒産したときも保証


大規模修繕工事が終わった後、施工会社が倒産しているとアフターメンテナンスも瑕疵の対応も受けることができず泣き寝入りせざるを得ません。施工会社の倒産リスクを事前に調べることもリスクを下げるという意味では効果的ですが、保険に加入してもらうことで万が一の倒産時のリスクにも備えておくとより安心でしょう。
大規模修繕瑕疵保険は施工会社の倒産リスクも保証しており、万が一施工会社が倒産した後に瑕疵が発生した場合には他の施工会社に修繕を依頼できるよう、修繕費用として保険金を受け取ることができます。新しい施工会社の見積事項もチェックしてくれるので、必要な修繕を受けることができるのもポイントですね。

メリット3:瑕疵が起こらないよう工事中も検査がある


そもそも大規模修繕工事で瑕疵が起こってしまうと、瑕疵の対応に時間も手間もかかりますし、施工会社への連絡や日程調整など管理組合の負担が増えて大変です。大規模修繕瑕疵保険は、その後の対応だけでなく瑕疵が起こらないよう保険会社が図面のチェックや工事中の検査も行ってくれるので、瑕疵が発生するリスクを下げることにもつながります。

工事会社から保険に加入する割合は1割未満

前述の通り管理組合にとってメリットの多い大規模修繕瑕疵保険ですが、気を付けておきたいのが、保険に加入するのは管理組合ではなく施工会社だということです。大規模修繕瑕疵保険は瑕疵があった場合に管理組合は必要な補修をうけることができ、施工会社も瑕疵の修繕にかかった費用を受け取ることができるため加入のメリットはあります。

しかし、株式会社住宅あんしん保証の発表した大規模修繕瑕疵保険2018年度実績によると、大規模修繕瑕疵保険への加入は2017年度比106%と増加しているものの、施工会社が自ら大規模修繕瑕疵保険に加入したケースは全体の1割にも満たない状況なのだそう。加入の経緯として最も多い「設計事務所主体で工事仕様書に加入記載」が半数以上を占めており、2番目に多い「管理組合が加入を要望」が2割程度となっていることから、設計事務所から聞いて初めて大規模修繕瑕疵保険を知った管理組合も多そうですね。大規模修繕瑕疵保険へ加入をしてほしい場合には予め加入を条件として施工会社の募集を行うことで、大規模修繕瑕疵保険への加入をすることができます。


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加入数が増加傾向にあるとはいえ、まだ知らない管理組合も多い大規模修繕瑕疵保険ですが、万が一の倒産や施工会社とのトラブル回避のために加入してもらうことには大きなメリットがあります。大前提として信頼できる施工会社を選ぶことはもちろんですが、リスクに備えるという意味で大規模修繕瑕疵保険への加入を募集条件することを検討してみても良いのではないでしょうか。大規模修繕瑕疵保険の中でもタイルの瑕疵を対象とした特約や、保障期間など備えたいリスクによって契約内容も変わりますので、必要な保険に入れるよう管理組合主体で知っておきましょう。

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