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空き家問題が起こすマンションへの悪影響と管理組合がとるべき対策

2019.03.29


空き家問題というと地方の老朽化した一戸建てのイメージが強いと思いますが、近年は都心部のマンションでも空き家が増加傾向にあります。空き家への対応をしなければならないのが所有者という点では一戸建てでもマンションでも変わりませんが、マンションの場合には他の居住者もその影響を受けてしまう可能性が。マンションの空き家によって悪影響を出さないためには管理組合はどのような対策を行うべきなのでしょうか。知っておきたいマンションの空き家問題について解説します。

マンションも悩まされる空き家問題

空き家問題がメディアに取り上げられ始めてからしばらく経ちましたが、空き家が増えているという実感があるという方は少なくないかと思います。空き家と聞くと地方にあるボロボロの一戸建てに売り手がつかず……というイメージがあるかと思いますが、実際には地方だけではなく都心部でも空き家は増加しており、平成25年の統計局の調査によると東京都でも約10%が空き家になっています。また、空き家になっている建物の種類の割合は一戸建てが一番多く、住宅全体の54.9%を占めているものの、平成20年の調査からの空き家増加数は一戸建てが115万戸(4.2%増)増だったのに対し、共同住宅では140万戸(6.8%)増と、その増加数は共同住宅が一戸建てを上回る勢いなのです。つまり、今の時点で特に地方の一戸建てを相続するなど空き家となりやすそうな物件を所有する見込みがなく、都心部のマンションに住んでいる方でも、今住んでいるマンションを売却・賃貸に出したいとなった場合に買い手・借り手がつかず、空き家所有者となってしまう可能性もあるといえます。


引用元:https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/topics/topi861.html

マンションに空き家が増えることによる影響

古い一戸建ては犯罪の温床になってしまったり、建物の老朽化による危険があったりと空き家になることによって起こる悪影響がイメージしやすいですが、共同住宅であるマンションの空き家が増えることによる悪影響はイメージしにくいという面もあります。オートロックのマンションであれば不審者の侵入も起こりにくく、管理組合によって大規模修繕工事が計画的に行われるはずなので老朽化による危険も起こりにくい(または対策を講じやすい)と考えられます。そもそも上層階であれば外から見えないため、空き家かどうかわかりにくいというところもマンションの空き家問題が表面化しにくい理由の1つとしてあるのかもしれません。それではマンションに空き家が多くなるとどのような問題が考えられるのでしょうか。

①管理組合の機能不全
区分所有者全員で運営する管理組合は空き家比率が増えるにつれ、運営が難しくなります。区分所有者が高齢となり、施設等に入居して管理組合運営を行える人がいなくなってしまう場合や、相続放棄で区分所有者がいない世帯が増えると、理事会やその他の委員会を運営する人がいなくなり管理組合機能不全状態に。その結果、建物共用部に対する管理が行き届かなくなり空き家になりやすくなってしまうという悪循環に陥ってしまうことが考えられます。

②管理費・修繕積立金の滞納
空き家になると、その部屋の区分所有者が管理費・修繕積立金の支払いを滞納してしまうことも。特に世帯数の少ないマンションでは一部屋あたりの管理費・修繕積立金の負担割合が多くなりますので、滞納者がいるとその影響が大きくなります。管理費が足りなければ管理会社へ委託したい業務があってもお願いできることが少なくなるため、建物内の管理が行き届きにくくなったり、自主管理で対応しなければいけない部分が出てきます。さらに、修繕積立金が予定通り積み立てられていなければ適切な修繕を行うことができません。管理不足や修繕不足は結果的にマンションの資産価値を下げてしまいますので、さらに空き家が増えてしまうといった悪循環に陥りやすくなります。

③総会の決議ができない
管理組合の総会では、大規模修繕工事の実施や管理規約の変更などマンション管理にかかわるさまざまな決議が行われます。理事会の総会決議には決議する事項によって区分所有者の必要な賛成人数が区分所有法に定められていますがと決議に必要な最低人数を満たすことができず、決議を行うことができません。
例えば建物の維持・管理のために必要な大規模修繕工事を行うためには、特別決議が必要となりますので区分所有者の半数の出席、3/4かつ議決権の3/4の。さらに築年数の古いマンションになると、建替えも視野に入ってきますが建替えには区分所有者の半数の出席に加えて4/5かつ議決権の4/5の賛成が必要です。こうなってしまうと空き家の現在の所有者を探し、連絡をとらなければなりませんし、区分所有者が遠方に住んでいる場合は説明会への参加が難しくなりますので、場合によっては賛成を得られないということも考えられます。

空き家による管理不全を防ぐために管理組合が行いたい対策

区分所有者を管理組合で把握しておく
防災対策の記事でも紹介しましたが、どの部屋に何人住んでいるか、家族構成はどのようになっているか管理組合が把握しておくと災害時の救助活動や支援がスムーズに行えるため居住者リストを用意しておく必要があります。その際に区分所有者が誰なのかを一緒にリストにしておくと、区分所有者へ連絡を入れたいときに管理会社などに確認する必要がありませんのでスムーズに連絡をとることができます。

空き家を活用する
理事会などを行う集会室がないマンションでは、空き家を管理組合で購入して共用部として使用するという手段もあります。管理組合で購入することで占有部から共用部になりますので理事会を行うのに使用したり、コミュニティスペースとして活用するといった有効活用をすることができるのです。世帯数の少ないマンションでは一人当たりの金銭負担が大きくなってしまうため難しいかもしれませんが、集会室などのない世帯数の多いマンションで空き家が多数ある場合では検討してみても良いのではないでしょうか。

マンションなどの集合住宅は所有者が多いため空き家問題に対しても動きが鈍くなりがちですが、何も把握していな状態だと気づいたときには深刻な事態になっていやすいという特徴があります。関係ないと思っていても実はあなたのマンションでも空き家問題がじわじわせまってきているかもしれません。空き家問題は早い対応を行うことで事態が深刻化する前に対応ができますので、まず各戸の状況について管理組合で把握できるようなシステムにしておきましょう。

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