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マンションの足音トラブル対処法は? 

2024.05.02

マンションで生活していく上で〝困った〟の筆頭に挙げられるのが、足音の騒音トラブル。足音は真上の部屋から聞こえてくると思いがちですがちょっと待って。鉄筋コンクリート造の建物では音は複雑な伝わり方をするものです。上下だけでなく左右、斜め上・斜め下、または廊下から、さらには数フロア離れた場所など思わぬところが発生源だったということがあります。 

それでは、実際に足音で悩まされている場合、どう対処したらよいのか考えてみましょう。 

「住まいの音に気配りを」(出典・横浜市みどり環境局) 

マンションの足音がうるさい時の対処法 

“音”には大きく分けて「空気伝播音」と「固体伝播音」の2種類があります。 

空気伝播音とは空気を振動させて耳に伝わる音です。人の話し声や犬の鳴き声、テレビやステレオの音などが該当します。 固体伝播音は床や壁、天井から振動として伝わってくる音です。ドシンドシンと踵(かかと)から歩く足音をはじめ、椅子を引く音、ドアの開け閉め、洗濯機のガタガタ回る音などがあります。深夜にスポーツ中継を見ていて、つい足を踏み鳴らすなどして騒いでしまった場合は、空気伝播音と固体伝播音が同時に発生します。 

環境省が定める「環境基準」によると、一般的な住宅地における騒音の基準値は、 日中は55デシベル以下、夜間(午後10時~翌日午前6時)は45デシベル以下です。 

「騒音のレベル」 (出典:環境省)

では、社会生活を営む上で我慢するべきといえる程度(受忍限度)を超えた騒音には、どう対処したらよいのでしょうか。 

なるべく早い段階で管理人や管理会社、大家さんなどしかるべき第三者に状況を伝え、対策を取ってもらいましょう。限界まで我慢していると感情的にこじれてしまいがちです。また、音の発生源と思われるところに直接クレームをつけることは避けましょう。次の章で述べますが、発生源の特定が難しいことや、丁寧に改善を申し入れたとしても近隣関係の悪化でマンションに住みづらくなることが予想されるからです。 

ご自身でできる対処法は、まず音が伝わってこないようにすることです。 空気伝播音には、窓を二重サッシに変えることや床に防音マットやコルクマットを敷くこと、壁に遮音シートを張る、防音・遮音カーテンに変えるなどの対策で、ある程度は軽減することができます。 

一方、固体伝播音は振動が音として耳に届くので、完全にシャットアウトするのは困難です。床や天井のコンクリートを厚くする、壁の間に断熱材のグラスウールを入れるなど共用部分の大掛かりな改修工事が必要となり、すぐに実行することはできません。このためトラブルの原因となってしまうことが多いのです。 

マンションの足音トラブル対策 

1)騒音被害を感じている場合 
実際に足音による騒音で悩まされている場合、対策の基本は管理人または管理会社に相談することです。音の発生源が特定できない段階なので、すべてのマンション居住者に向けた「生活騒音に関するお願い」などの騒音注意チラシを、掲示板へ掲示したり戸別に配布したりして様子を見てもらいます。 

しかし、音を出している当事者は自身の足音に気づいていないことがあります。また、一時的に静かになったとしても、時間が経つと注意を忘れて再び足音や騒音が繰り返されることもあります。 
その場合は再度管理人もしくは管理会社へ相談し、騒音注意チラシを発行してもらいましょう。音の種類や聞こえる時間帯、頻度などを追加して2度、3度と注意を促します。全居住者に対し騒音に関するアンケート調査を実施してもらうことも注意喚起につながります。 

その間、被害状況を説明する客観的な資料などを準備できると良いでしょう。 近隣住戸の方に同様の被害がないか尋ねる、足音のする方向や日付、時刻、天候などをメモする、計測器やスマホアプリなどで録音しておくなど、説明用資料としてのみでなく、今後の対策を検討する際の参考にもなります。 横浜市川崎市には、公害防止のため騒音計・振動計の貸し出し制度があります。必要な場合は相談してみると良いでしょう。 

「様々な生活騒音」(出典:横浜市みどり環境局) 

先に述べましたが、足音の発生源と思われる住戸に直接苦情を申し入れることは避けましょう。鉄筋コンクリートの建物では、足音が上下だけでなく左右、斜め上・斜め下、または廊下から、さらには配管を伝って数フロア離れた所から響くことがあり、真上や隣の住戸が発生源とは限りません。相手と顔見知りであっても、話がつかず感情的なトラブルに発展する恐れもあります。ここは時間がかかっても第三者に任せるのがよいでしょう。 

2)騒音を軽減するために 
長期間にわたる騒音が心身に与える影響は深刻です。何度注意を呼び掛けても改善しない場合は、自宅住戸の防音機能を高めることを検討してみるのも対処法のひとつです。リフォーム工事にならないまでも、日曜大工(DIY)で施工できる吸音材や遮音材、防振材・制振材などが市販されているので試してみる価値はありそうです。 

●東京都の騒音防止に関する資料『考えよう 「生活騒音」』はこちらです。 
●管理組合が対応する場合についてはこちらをご覧ください。 

マンションの足音トラブルを起こしてしまった場合 

一般的に足音をうるさく感じる時間帯は、夜の10時ごろから朝7時ごろまでのようです。 
では、日中なら騒がしくても良いかといえば、そうではありません。マンションでは夜勤明けで昼間に休んでいる人や、在宅勤務中、病気療養中の人などさまざまなライフスタイルの人が共同で生活しています。極力騒音を出さないよう、お互いで配慮し合いしましょう。 

それでも意図せず音を出してしまうことはあると思います。特に、ワンパク盛りの子どもと過ごしているご家庭はヒヤヒヤしているのではないでしょうか。もしも、直接苦情を言われた時は、それは我慢に我慢を重ねた上での最後通牒(さいごつうちょう)かもしれません。その日のうちに子どもと一緒に改めてお詫びに伺うのがよいでしょう。子どもには、室内では走らない、ジャンプしない、などお互いが気持ちよく過ごしていくためのマンション生活のマナーを教え、「おうちでは忍者歩きをする」「ジャンプは外に出てから」といったルールを身に付けさせましょう。 

足音対策として、床にウレタン素材のパズルマットやラグ、カーペットなどを敷くご家庭もありますが、残念ながら足音に対しては効果は限定的です。振動音には簡易型の防音壁を張る、防音マット・防振マットを組み合わせて敷くなどのDIYリフォームで対処してみましょう。木材とゴムを合わせた新しい建材も開発されています。 子育て世帯や生活時間帯が夜間中心となる方は、入居前に騒音が不安であることを管理会社に相談してみたり、事前にリフォームを検討したりすることでトラブルを予防・軽減できるでしょう。 

これまで一戸建て住宅で生活していた方や初めて一人暮らしをする方、最上階に住んでいる方などは、下の階に伝わる足音に気づきにくいものです。近隣の方と顔を合わせた際に「足音などでご迷惑をかけていませんか」と尋ねてみるのも予防策の一つです。 

●防音グッズ・防音リフォームについてはこちらもご覧ください。 

足音トラブルに遭遇した人の対策事例を調べると、耳栓をする・苦情の手紙をポストに投函する・警察へ通報する・地元自治体へ相談するなど、なるべく穏便に解決できるよう努力しているようです。一方、子どもの足音を注意された家庭では、布団を敷きっぱなしにしてその上で遊ばせる・畳の上にもカーペットを敷くなどの工夫をしていて、「これ以上どうすればいいのか教えてほしい」という悲痛な声が上がることもあります。

横浜市の不動産会社、(株)Happyパスポートの太田隆文社長にお話しを伺いました。騒音に限らず共同住宅でトラブルが起った場合は「まずは不動産会社や管理会社に相談してください。直接対決をすると感情的にこじれてしまいがち。そうなる前に私たちがチラシで注意喚起したり、騒音の発生源が特定出来たら電話で連絡したり、あらゆる手を尽くします」と話します。残念ながらそれでも解決しない時は、「最終的にはどちらかが引越しをせざるを得ない」のが実情だそうです。

まとめ 

足音は生活音なのでゼロにするのは難しいものです。とはいえ、人によっては心身の健康を害するほど深刻な問題になることもあります。マンションで暮らす上では、他人の迷惑になる音はできるだけ出さないよう工夫することがマナーです。注意喚起のお知らせが張り出されたら、ご自宅が発生源ではないか振り返ってみましょう。 

日ごろから近隣の方と挨拶を交わし、イベントに参加するなどしてコミュニケーションを取ることが、トラブルを未然に防ぎ快適なマンションライフを送るコツにもなります。

取材協力:(株)Happyパスポート(横浜市都筑区)

ヨコソーでは防音対策の内装工事もご提案しています。お気軽にご相談ください。 

 

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