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ソニー損保、専門家監修の“あらためて見直すべき地震への備え10のポイント”を公開!被災した際に知っておきたい支援制度や対策を解説

2024.03.08


 2024年元日、石川県の能登半島で最大震度7の大規模な地震が発生し、深刻な被害をもたらしました。石川県内では、人的被害1,402名、住家被害34,446棟、死者数は200名を超える甚大な被害が発生(※1)。現在、多くの方が避難生活を送りながらも、元の生活を取り戻すための活動が続いています。
※1 石川県「令和6年能登半島地震による被害等の状況について(危機管理監室)【第60報 令和6年1月21日14時00分現在】        
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/saigai/documents/higaihou_60_0121_1400.pdf

 地震はいつ発生するのか正確に予測することができません。そのため、地震保険に加入するなど地震に対する備えが重要ですが、2022年度の地震保険の付帯率(※2)は、全国平均で69.4%となっており、火災保険加入者のうち3割かは地震保険に加入していないという実態も。また、今回被害のあった石川県の地震保険の加入率は、全国40位の64.7%と平均よりも低い付帯率でした。 


※2 損害保険料率算出機構:グラフで見る!地震保険統計速報  https://www.giroj.or.jp/databank/earthquake.html

 地震保険以外にも、事前に対策できることは多くあります。今回、ソニー損保から、防災士・ファイナンシャルプランナーの資格を持つ、岡本正さん監修のもと「あらためて見直すべき地震への備え10のポイント」、地震発生から住宅再建・被災した方が活用できる支援制度をまとめた「地震発生後のお金に関する行動マニュアル」が公開されましたのでご紹介します。
ぜひ今後の対策にお役立てください。

あらためて見直すべき地震への備え10のポイント

1.地震発生の瞬間はむやみに動かずその場で「まずは身を守る」!
大きな揺れを感じたら、身体を小さくし、状況に応じて机、布団、枕などで頭を守り、揺れが収まるまでじっとしていることが重要です。火を消す・ガスの元栓を閉める、避難経路を確保する、家族の安全を確認するなどは、揺れが収まってから。


2.睡眠中の地震に備え枕元には「靴」「眼鏡」「スマートフォン」!
もし夜に地震がおき停電してしまったら、揺れが収まったあとにすることはスマートフォンのライト機能や懐中電灯で「暗闇を照らすこと」。散乱した家具やガラスでケガをしないためにも室内用の靴は必須です。眼鏡が必要な方は手元に用意しておきましょう。

3.家具の固定だけではなく家電の固定も忘れずに
耐震性の高い住宅やマンションであっても家具や家電を固定していなければ、動いたり、倒れたり、飛び出したり、割れたりして思わぬケガにつながります。家具はできる限り転倒防止器具(L字金具など)で固定。冷蔵庫や薄型テレビなど大型家電の固定も忘れずに。

4.情報や通信を途切れさせないようポータブル電源で備えを
災害後はスマートフォンやラジオによる情報収集が欠かせません。ラジオ用の電池を備蓄しておくことに加え、スマートフォンを充電するためのポータブル電源(バッテリー)も備えておきましょう。

5.常備薬やペットのことなど、あなたしかできない準備を
常備薬やペットのことは、あなた自身で準備や備蓄しておかないと、他の人の協力を得ることができない場合もあります。「他の人では気付かない準備は何か?」を考えましょう。

6.カード・保険証・身分証明書よりも命を守る行動が最優先
キャッシュカード・クレジットカード・保険証・免許証などを持ち出せるよう準備している方が多いはずです。しかし、火災、洪水、津波など緊急時には命を最優先に避難行動を。これらは紛失したり持ち出せなかったりしても、解決方法が用意されているからです。

7.災害用伝言ダイヤル171を体験しておきましょう
災害用伝言ダイヤル「171」は、電話を利用した声による掲示板・伝言板です。大規模災害時に使えるようになります。毎月1日と15日、お正月(1/1〜1/3)、防災とボランティア週間(1/15〜1/21)、防災週間(8/30〜9/5)に体験ができるので家族で試しておきましょう。

8.デマで混乱しないよう正しい情報源を今のうちに準備
災害後には主にSNSを通じて大量のデマが流通します。騙されないためには、正しい情報源を事前に確認し、その情報をもとに判断や行動をするのがコツです。SNSについても、行政機関防災アカウントや、ニュースのアカウント等を予め登録しておきましょう。

9.非常用簡易トイレや食料品等の備蓄は自分自身で
自治会・町会やマンション管理組合による備蓄では、非常用簡易トイレや食料品を賄いきれません。自分の分は自分で準備しましょう。食料については、いつもの食べなれたレトルト食品や缶詰などを多めに購入し、ローリングストック*による備蓄がおすすめです。
*普段から少し多めに食材、加工品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量の食料を家に備蓄しておく方法

10.お金と暮らしの知識を備え、地震保険への加入も忘れずに
災害発生の直後から、生活再建にむけてお金や支払いに関するさまざまな課題が発生します。被災者生活再建支援金や被災ローン減免制度など、公的支援制度もありますが、住宅再建には自らの備えも必要です。発生する災害リスクを分析して火災保険の契約内容を見直し、全国どこでも起きる地震については地震保険へ加入して備えましょう。

地震発生後のお金に関する行動マニュアル

災害発生直後は何から始めればよいのか?

住まいを失い、仕事を失い、自宅や財産までも失うほどの大きな被害を受けてしまったとき、その直後から私たちに襲い掛かってくる困難にはどのようなものがあるでしょうか。
それは、「どうやって自宅を再建すればよいのか?」「何もかも失ってしまったが何か支援はないのか?」「ローンや公共料金の支払いができなくなりそうだがどうしたらいいか?」という「お金と暮らし」に関する悩みです。このような悩みを少しでも軽減し、生活再建に向けた支援を受けるためには、さまざまな公的支援について知っておき、自ら行政機関や事業者の窓口へ足を運ぶことが重要になります。

そこで、まず全員に知っておいてほしいのは被災した時に「罹災証明書」の発行を市区町村に申請するということです。罹災証明書とは、災害対策基本法に根拠を持つ書面で、災害時に住んでいた自宅の被害の程度等を証明するものです。

支払期日が迫る住宅ローンや公共料金の支払いの対策を

市区町村への罹災証明書の申請と同時に、必ず期日が迫ってくる住宅ローンや公共料金の支払いへの対応を順番におこなっていきましょう。電気、ガス、上下水道、携帯・固定電話の通信料、生命保険や損害保険の保険料などたくさんの支払いが被災後の家計を圧迫します。災害救助法が適用されるほどの大規模災害になれば、被災者はそれぞれの事業者や自治体の窓口に連絡することで、料金の支払い猶予や優遇措置などを受けられる可能性があります。
それぞれのホームページには被災者向けの「お知らせ」が掲載されるのが災害発生後の運用です。必ずこれらをすべてチェックしておきましょう。

損害保険や生命保険の保険料の支払いについても保険会社各社にて被災者向けの相談窓口を設け、支払猶予や減免といった支援を行う場合があります。
こちらも契約している会社に確認するようにしましょう。もし契約会社がわからないときには、日本損害保険協会や生命保険協会など業界団体へ契約照会をする制度もあります。

あなたを助けるお金の支援制度の申請を忘れず行いましょう

日々の生活を取り戻し、住宅を再建するためには「お金」の支援が必要です。まずは、主な公的支援制度について知っておくことが重要です。



地震保険金請求の流れやポイント

損害保険会社への連絡から地震保険金の受け取りまでの一般的な流れは、以下の通りです。

★知っておきたいポイント1 損害状況の写真を撮影することも忘れずに
地震等による損害は、原則として訪問による立会い調査が行われます。ただ、被災後も暮らしは続くので片付けが必要になることもあるでしょう。しかし、証拠を残すことなく片付けてしまうと、損害があったことの証明が難しくなることも考えられます。身の安全を確保したら、損害状況を写真におさめましょう。

★知っておきたいポイント2 保険証券がなくても請求できる

被災して保険証券を滅失・紛失しても保険金は請求できます。契約先の損保会社に連絡しましょう。契約先の損保会社や契約の有無が分からないときは、「自然災害等損保契約照会制度」を利用して契約の有無や契約先を確認できます。

もし破産状態になってしまった場合は?

住宅ローン、車のローン、奨学金などのローンが支払えなくなり、破産状態となってしまった場合には、破産手続以外にも「自然災害債務整理ガイドライン」(被災ローン減免制度)が利用できる場合があります。

災害救助法が適用される災害が原因でローンの支払いができなくなってしまった場合に、一定の条件を満たすことでガイドラインの利用を開始することができます。最終的には、金融機関などメインの債権者を含むすべての債権者と合意をすることで、裁判所の特定調停手続きを経て、ローンを減免することができます。破産のようにブラックリスト登録(信用情報登録)がなく、連帯保証人への請求も行われません。登録支援専門家弁護士の無料のサポートを受けることもできます。残せるお金も平時の裁判所で行う破産手続と比べて、かなり大きな金額になります(現預金500万円まで、損害保険金250万円までなど)。

このように「自然災害債務整理ガイドライン」は、条件を満たして開始できれば非常にメリットの大きな制度ですので、まずはこのガイドラインが利用できそうかどうか、弁護士の無料相談窓口に相談に行くことをおすすめします。

あらためて備えについて見直しを

世界でも有数の地震大国といわれる日本。南海トラフ地震や首都直下型地震の発生が予想されるなど、だれもが被災者になりうる可能性があります。上記のポイントやマニュアルを参考にご自身や家族の備え、地震保険についてあらためて見直してみるのもいいかもしれませんね。
出典:https://www.sonysonpo.co.jp/fire/earthquake_000.html


監修:岡本 正

1979年生まれ。2003年弁護士登録。現在は銀座パートナーズ法律事務所代表。気象予報士、ファイナンシャルプランナー(AFP認定者)、防災士、マンション管理士、宅地建物取引士等の資格を生かしながら防災教育や企業研修を多数手掛ける。
新たな学問「災害復興法学」を創設し、博士(法学)を取得。岩手大学客員教授や慶應義塾大学講師など、多数の大学に講座を展開する災害と法律分野の第一人者。近著『被災したあなたを助けるお金とくらしの話増補版』(弘文堂)、『災害復興法学I・II・III』(慶應義塾大学出版会)等多数。

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