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【FPが解説】地域別ランキング1位は中国エリア!「ソニー損保・全国火災保険統一模試 2023」の結果から分かる火災保険の見直しポイントとは?

2023.06.16

近年さまざまなものが値上がり傾向となっていますが、そのなかでも数年にわたり値上がりが続いている火災保険。最近では2022年10月に値上げや保険期間の短縮が行われましたが、近年の自然災害の頻発により今後も値上がりの可能性があります。値上げがあっても加入しなければいけないものではありますが、加入しなければならない、ということ以外に火災保険についてどのくらいご存じでしょうか。正しい知識をもっていれば万が一のときに必要な補償を受けることができたり、不要な補償を外して費用を削減したりといったことができます。

今回はソニー損保が実施した、「ソニー損保・全国火災保険統一模試 2023」の調査結果をもとに、各設問に関する火災保険や各エリア別の傾向などについて、ファイナンシャルプランナー(以下FPと称する)の馬場愛梨さんの解説をご紹介します。

全国1位は中国エリア!全問正解者は1,100名中18名!

「ソニー損保・全国火災保険統一模試 2023」は、ソニー損保が火災保険の基礎知識や補償内容に関する10問を作成。全国の持ち家で火災保険に加入している1,100名を対象に「ソニー損保・全国火災保険統一模試 2023」として実施した調査です。その調査の結果、全10問の平均正答率は65.4%、全問正解の“火災保険マスター”は1,100名中わずか18名の1.63%。火災保険に関してまだまだ正しい知識が浸透していない実態が明らかになりました。全国11エリア中では最も正答率の高いエリアが中国地方(67.4%)、最も低いエリアは東海地方(62.6%)となっており、地域によって正答率に差が出る結果となりました。

自然災害リスクと火災保険のミスマッチ度

ソニー損保は全国の持ち家家庭に対して、自然災害リスクと火災保険に関する意識調査を2020年から3年連続で実施。最新(2022年)の調査(※1)では、全国の6割(64.0%)を超える世帯で居住エリアの自然災害リスクと火災保険の補償内容にミスマッチが発生していることが判明しています。地域ごとの傾向について本調査と比較すると、全国11エリアのうち、最もミスマッチが少なかった四国は、今回の調査でも平均点が高く、2位にランクインしていました。一方、10問ある設問のうち正答率最下位が最も多かった北海道は、実際にミスマッチが多く発生しているという結果が出ています。

※1 ソニー損保「自然災害リスクと火災保険に関する意識調査」https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000063966.html

<FP 馬場愛梨さんの解説>
近年、南海トラフ巨大地震が話題となっています。今後30年以内に発生する確率は70〜80%のようです。その被害は大きいものと想定され、津波や家の倒壊が起こる可能性があります。1位「中国」エリアや2位「四国」エリアは今後の対策として保険の見直しや知識を学び、上位にランクインしているのでしょう。また3位の「東北」エリアは東日本大震災の被害が非常に大きかった場所です。こちらのエリアも日頃から保険の見直しをしている方が多いのではないかと予想されます。しかし「東海」エリアが最下位なのは意外でした。東海エリアは南海トラフ巨大地震の被害が大きいと想定されています。この機会に是非、東海エリアにお住まいの方は保険の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

あなたは何問正解できる?「ソニー損保・全国火災保険統一模試」結果をFPが解説!

【問1】火災保険は更新のタイミングでないと補償の見直しができない?

正解:できる(正答率 65.1%)
<FP 馬場愛梨さんの解説>
火災保険は更新のタイミングだけでなく、いつでも補償の見直しが可能です。しかし実際は、災害に遭わない限り「一度入ったらそのまま」という人も多いのではないでしょうか。更新時に限らず思い立ったときに、まずは保険証券をチェックするなどしてご自身の補償がどんな内容になっているか知ることから始めてみるのがおすすめです。その際は、建物と家財それぞれの補償の有無、地震保険の有無、水災補償の有無、補償額などを確認してみましょう。例えば契約時から同居人数が変わっている場合、家財の量も変わっている可能性が高く、補償額を見直すべきかもしれません。

【問2】地震による津波の被害を補償するのは、「火災保険の水災補償」と「地震保険」どっち?

正解:地震保険(正答率 77.6%)
最も正答率が高かったのは「沖縄」エリア(84%)。沖縄は、周囲がすべて海に面した県であるため、津波が発生した場合の被害は大きいものと考えられます。また夏の時期は台風の接近も多く、被害を想定した保険選びをしている方も多いのではないかと推察されます。2位は東日本大震災が発生した「東北」エリア、3位は新潟県中越地震が発生した「甲信越」エリアがランクインしました。

【問3】火災保険の保険金の支払方法で、近年の商品で多いのは「新価」と「時価」どっち?

正解:新価(正答率 37.5%)
<FP 馬場愛梨さんの解説>
「新価」とは、同じ建物をもう一度手に入れる場合にかかる金額のことです。再調達価額とも言います。一方「時価」は、新価から築年数に応じた経年劣化分を差し引いた金額です。もし災害に遭った場合、新価を基準に保険金額を設定しているほうが受け取れる保険金が多くなります。

近年は建材費等が高騰し、失った家を再築するのにかかる費用も以前より増しています。加入中の火災保険が古く「時価」を基準としている場合、いざというときに「思ったより受け取れる金額が少ない」「足りない」と感じる可能性があります。ご自身の契約内容を確認しておきましょう。

【問4】地震保険で補償されるのは、火災保険金額の●%が上限?

正解:50%(正答率 73.5%)
地震保険で補償される金額は、最大でも火災保険の保険金額の50%となっていますが、ソニー損保の新ネット火災保険では、「地震上乗せ特約(全半損時のみ)」(※3)をセットすることで最大100%(火災保険に対して)の補償にすることが可能です。

※3 地震上乗せ特約の正式な特約名称は、「地震危険等上乗せ補償特約(全半損時のみ)」です。

【問5】火災保険の保険料は、近年「値上げ傾向」と「値下げ傾向」どっち?

正解:値上げ傾向(正答率 85.5%)
<FP 馬場愛梨さんの解説>
火災保険が値上げ傾向にある理由は、台風や豪雨などの自然災害が多発しているためです。災害が増える→被害が増える→保険会社が支払う保険金が増える→保険料にも影響するという事態になっています。直近では2022年10月に火災保険料率の改定が行われ値上げとなりましたが、2024年度にも大幅な値上げが行われる見通しです。値上げ傾向は続くものの、保険の見直しを行って不要な補償を省く、免責金額を上げるなど工夫すれば、今より保険料を抑えられる可能性はあります。

【問6】地震保険は、火災保険に加入していなくても加入できる?○か×か? 

正解:×(正答率 59.6%)
最も正答率が高かったのは「中国」エリア(70%)。地震保険は単独で契約することはできないため、火災保険とセットで契約する必要があります。建物と家財のそれぞれで加入することができ、住んでいる地域の災害リスクに合わせて必要な補償範囲を選択することが重要です。

問7】火災保険の保険料は全国一律である?○か×か?

正解:×(正答率 89.3%)
<FP 馬場愛梨さんの解説>
火災保険の保険料は、たとえ同じ建物でも所在地(都道府県)によって異なります。過去の火災や災害の発生・被害状況などからリスクが高いと判断された地域ほど、保険料が高く設定されています。直近では2022年10月に保険料率の改定があり、大阪府、山梨県、宮崎県などで大幅な上昇が見られました。今後は水害の危険度に応じて市町村ごとに保険料に差をつける改定も予定されているため、保険料を抑えたいなら、水害や地震などの災害リスクがなるべく低い土地を選ぶ、耐震性や耐火性の高い建物を選ぶなどの方法も有効です。お住まいの地域のリスクを知りたいときは、ハザードマップを見てみましょう。自治体の公式サイトや国土地理院の「重ねるハザードマップ」で簡単に調べられます。

【問8】火山の噴火による噴石などにより建物が損壊しまった場合、火災保険で補償される?

正解:補償されない(正答率 69.5%)
最も正答率が高かったのは「北陸」エリア(74%)。北陸エリアには白山という活火山があります(※4)。噴火警戒レベルは1ではありますが、山頂付近のやや深部を震源とする地震が増加しているほか、土石流が起きることがあるため、今後の火山活動に注意している方が多いエリアなのではないかと推察されます。

※4 気象庁「火山活動の状況(白山)」https://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/activity_info/313.html

【問9】泥棒に入られて、窓ガラスを割られたり、家財が盗まれた場合、火災保険で補償される。◯か×か?

正解:◯(正答率 51.6%)
最も正答率が高かったのは「北海道」エリア(60%)。全国的に空き巣や忍び込みといった侵入窃盗数は平成15年から令和4年まで、20年連続して減少傾向にあります。北海道エリアも、侵入窃盗数が令和3年から令和4年にかけて減少(※5)しており、自分の住まいを守るために盗難補償に関する知識をしっかりと身につけているのではないかと考えられます。

※5 北海道警察「身近な犯罪被害防止対策」https://www.police.pref.hokkaido.lg.jp/info/seian/new_working_adults/bousi-taisaku.pdf

【問10】これから火災保険に加入する場合、保険期間は最長何年?

正解:5年(正答率 44.3%)
<FP 馬場愛梨さんの解説>
2022年10月、火災保険の最長契約年数は10年から5年に短縮されました。過去には住宅ローンの返済期間とあわせた「35年契約」などが可能な時期もありましたが、現在はそのような長期契約はできなくなっています。契約期間が最長5年になったことで、契約期間に応じた割引率が10年契約よりも下がる、より頻繁に更新することになり値上げ改定の影響を受けやすくなるなどのデメリットが考えられます。メリットを挙げるとすれば、保険を見直す機会が増えることでしょう。

調査結果を保険の見直しに有効活用しよう

「ソニー損保・全国火災保険統一模試 2023」の調査結果は、火災保険の知識を深めるためだけでなく、居住エリアの自然災害と火災保険の補償内容のミスマッチを防ぐためにも便利なデータ。是非、調査結果を参考にしながら、火災保険を見直してみてください。

解説:馬場 愛梨
ばばえりFP事務所 代表

関西学院大学商学部を卒業後、銀行の窓口業務に従事。その後、保険代理店や不動産業界などでも経験を積み、独立。自身が過去に金銭的に苦労したことから、難しいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えするべく活動中。お金にまつわる解説記事の執筆や監修を数多く手掛けている。

[調査概要:ソニー損保 火災保険に関する調査]
調査対象者:持ち家で火災保険に加入している人
サンプル数:1,100名
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年5月12日〜5月14日

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