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【2022年の火災保険料値上げ】見直しで保険料16%節約できる可能性

2022.01.14


近年、火災保険料は、台風や豪雨などの自然災害の増加に伴い、支払われる保険金が増えている背景から2021年1月の火災保険料値上りや、6月の参考純率の引上げ発表など値上げ傾向が続いています。そこで今回はソニー損保が実施した2021年に火災保険の契約を行った全国200人を対象にした実態・動向調査や、来年の火災保険に関する予測をファイナンシャルプランナーの清水香さんの解説をご紹介します。 

2019年から続く火災保険の値上げ

近年台風や豪雨などの自然災害により値上げが続いている火災保険ですが、これまでどの程度の値上げがされているのでしょうか。

火災保険の値段は各社のプランによって異なりますが、保険料を算出する基礎となる参考純率は「損害保険料率算出団体に関する法律」(料団法)に基づき損害保険料率算出機構により算出されているものです。
この保険料算出の基礎となる参考純率が2019年10月(平均4.9%)*[1]と2021年6月(平均10.9%)*[2]に引き上げられたことで、2021年1月に損害保険各社の保険料が値上げされ、2022年以降に契約される火災保険でも値上げが反映される見込みとなっています。
特に2022年以降の契約に反映される見込みの参考純率の引上げは、損害保険料率算出機構が参考純率の改定資料を開示している2014年以降最大の引上げとなっているほか、火災保険の最長契約期間を10年から5年へ短縮することも同時に発表されているなど、2022年以降契約する火災保険は実質的な値上がりも懸念されます。
火災保険料の値上げが続く中、保険料を抑えるためにも、お住まいの地域の災害リスクにあった適正な補償内容を検討するなど、火災保険見直しの重要性がさらに高まってきています。こうした背景を受けて、今年火災保険の契約(新規契約、乗換え、更新)を行った全国200人の持家家庭に対して調査を実施しました。

*1 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」参照元:https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/201910_announcement.html
*2 損害保険料率算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/202105_announcement.html

保険会社の見直しでは代理店型からダイレクト型への乗り換えの傾向

本調査対象者全員の現在加入している火災保険の形態としては約6割(62%)の人が代理店型に加入しており、次に共済型が約2割(18.5%)、ダイレクト型が約1割(9.5%)と、ダイレクト型の火災保険に加入している人が最も少ないということがわかりました。
しかし一方で、代理店型から異なる保険会社へ乗換えた人の中では、約4割(36.8%)もの人がダイレクト型の火災保険へ乗換えており断続的な保険料の値上りを受け、ダイレクト型への移行が進んでいることが推察されます。

また、火災保険に加入する際の重視した点については7割弱(66%)の人が「保険料」を選択し第1位となりました。第2位には「火災による建物の補償範囲、補償金額(37%)」、第3位には「地震保険の付帯、補償範囲、補償金額(31.5%)」がランクインし、全体として保険料と補償金額に比重を置いて検討している傾向が見られました。

約8割が地震による損害の補償を付帯

2021年に新たに契約した火災保険で加入している補償内容の設問においては、火災保険の基本補償である火災や落雷による損害を除いた補償の中では、地震による損害の補償が84%と第1位に。日本の地震保険世帯加入率が27年連続増加(※)していることからも、地震への危機意識が高まっていることがうかがえます。また、第1位から第3位までを自然災害による損害の補償が占めており、近年の自然災害の増加をうけた防災への意識の高まりが反映されていると考えられます。
※損害保険料率算出機構「グラフで見る!地震保険統計速報」 https://www.giroj.or.jp/databank/earthquake.html

受動的加入が多いものの火災保険の見直しによって火災保険料が約20%の節約に

今年新たに火災保険に加入した人を対象とした加入年数の調査では、5年契約が約3割である29%、次に1年契約が24%、10年契約が15.5%という結果になりました。よって約半数(53%)の人が5年以内の契約で火災保険に加入していることがわかります。
また、昨今の火災保険料の値上りの影響もあってか、今回火災保険を乗換えまたは更新した人のうち、満期を待たずに新たな火災保険に契約した人は17%と、約5人に1人が保険契約が終了する前に新たな契約を結んでいることがわかりました。
加えて、現在の火災保険加入時の行動として、約半数(50.5%)は更新通知を受けて、そのまま更新していることが調査の結果判明し、受動的に加入している傾向が見受けられました。

しかし、今回の調査の中で保険会社を乗換えた人の平均年間保険料は23,575円と、新規契約・更新した人の平均年間保険料29,414円に比べて約20%安くなっています。この結果から、火災保険を乗換えている人の方が、乗換え時に補償範囲など火災保険のプランを見直したことなどで、保険料が安くなっているのではないかと推察されます。
また、調査内で代理店型の火災保険を契約している人に対して、ソニー損保の新ネット火災保険のウェブサイトで現在加入している保険と同じ条件で見積りシミュレーションを行ったところ、保険料は現在加入している火災保険より平均して約16%の節約可能性があることがわかりました。

受動的な加入となりやすい火災保険ですが、相次ぐ値上げの影響を最小限に抑えるには積極的に見直しに動くことが必要かもしれません。
[調査概要:ソニー損保 火災保険に関する調査]
調査対象者:持ち家世帯のうち2021年1月1日~10月31日の期間に火災保険の契約を行った人
サンプル数:200名
調査方法:インターネット調査
調査期間:2021年11月24日〜11月25日

ファイナンシャルプランナー 清水 香さんによる解説

住宅購入等のタイミングで火災保険の加入を求められ、多くの人は勧められるまま加入に至るようです。契約更新時も、約半数がそのまま契約継続に至るという当該調査の結果から、火災保険の加入は住まいに関する一連の“手続き”として、受動的に行われる実態があります。他方、代理店型からダイレクト型火災保険への乗換えが4割となり、火災保険をカスタマイズして、主体的に選択する層が出てきました。新たな選択肢としてダイレクト型火災保険の認知が進んでいます。また、多くの新規加入者が地震や風水災の補償を選択しており、火災保険で自然災害に備える意識の向上が確認できます。

契約時には保険料が重視されていますが、同時に、居住地の災害リスクを踏まえた適切な補償選択が火災保険では不可欠です。というのも、火災保険の水災付帯率は2009年以降の10年で10%以上減少しており、ハザードマップ上の浸水予測が3m未満の木造住宅の減少幅がとりわけ大きくなっています(※)。浸水深が浅くても床上浸水の被害は甚大です。補償のミスマッチは被災時の家計には大きな打撃で、補償選択にはより慎重さが求められます
※ 損害保険料率算出機構資料

2014年以降、参考純率は4回改定されましたが、背景に世界中で災害を引き起こしている急激な気候変動があります。ICPP(気候変動に関する政府間パネル)によれば、2040年までに平均気温が1.5度上昇する可能性は非常に高く、10年に1度の大雨が降る頻度は産業革命前の1.5倍と見込まれます(2021年第6次報告書)。

こうした理由から、火災保険料は引き上げ傾向にあるとみられますが、地域や建物構造により下がるケースもあります。つまり、立地等のリスク状況が、負担する火災保険料の大きな決定要因になるということです。近年は、立地や物件のリスクがより料率に反映される傾向で、保険料較差が今後より広がる可能性もあり、わが家の場合はどうか、注視が必要です

監修:清水 香
1968年東京生まれ。CFP®認定者。FP1級技能士。社会福祉士。自由が丘産能短期大学講師。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランニング業務を開始。2001年、独立系FPとしてフリーランスに転身。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。

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