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売り出し予定の実家の整理が停滞中!何を手放したらいい?【ミニマリストおふみの相談室】

2021.08.20

両親の他界や施設入所に伴う実家の片付け。今回のミニマリストおふみの相談室は、実家の売り出しに向けたお片付けが停滞中の方からのお悩みです。家を丸ごと空にしなければならないため物量が多いことに加え、自分のモノではないので要不要の判断が大変なことや、まだ使えるものや思い出深いものが多いなど、実家の整理は心身共にかなりハードな作業となります。想い出としてすべて持ち帰りたくとも自宅のスペースもすでにいっぱい……というお悩みも抱えている場合はどのように解決していくと良いのでしょうか。

===========ご相談文=================

両親が他界し、一人っ子なので実家の売り出しのため実家の物を整理中です。
実家の物で持って帰りたい物がたくさんあるものの、自宅(マンション)には置き場所が自室しかありません。
しかし、自室はすでに歩くのもやっとで空きスペースがなく、食器5客を2客に減らしたりはしましたが、自宅の他の収納もいっぱいです。
夫の部屋も布団やタオルのストックがありますが、夫の物以外は置かないようにしたいです。
何かを捨てて、すっきりと優雅に生活を楽しむ暮らしをしたいです。

はーさん

※ご相談文が長文でしたので、ご相談内容を編集部にてまとめさせていただきました

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はーさん、この度はご相談をお送りいただきありがとうございます。

ご両親が他界され、ご実家から、夫婦で暮らす東京のマンションにものを持ち帰る予定だけれど、すでに歩くのがやっとなくらい置き場所がないというのがお悩み内容ですね。
ご主人の部屋にもタオルや布団のストックなどで収納スペースが侵食しており、ご主人の部屋に彼のもの以外ないようにしたいとのこと。

ご実家の整理、とても大変だと思います。ものを目にするだけで思い出が再生されたり、必要ないからと理屈だけで手放していけないものも多いのではないかと思います。思い出のある品を手放すのは本当に心身共に多大なパワーを必要としますよね。どうかご無理なく整理を進めてください。
ご自宅のものを手放すときにも経験があると思うのですが、手放すと決めてから実際にものを処分して家からなくすのって大変ですよね。フリマアプリに出品しても売れるまでは自宅保管になるわけですし、粗大ゴミに出すにも市町村に連絡してゴミ処理シールを買って……と何行程も踏んでようやく手放せます。

家一軒分の片付けは量も膨大ですので、自分だけで何もかもやりきろうとせず、人の手を借りるのもアリです。役所に相談してみて「一般廃棄物収集運搬許可業者」を尋ねて、処分を一部外注するのもよいでしょう。無理なく進めていってください。

しかし、いずれにせよ残す・残さないの判断は下さなければなりません。
そこで、ご相談文を拝読し、こんな考え方があるよと知ることで片付けの手助けになることがいくつかありますのでお伝えしていきます。

持ち帰るか迷ったら、「自宅の理想のイメージ」を指針に

多種多様なものの処遇を決めていかないといけないので途方に暮れてしまうかもしれませんが、まずは判断基準となる「ものさし」を持ちましょう。
ご実家の片付けとセットで、持ち帰る場所であるご自宅の整理も進めていくことをおすすめします。

①はーさんのご自宅の理想のイメージをもつ→
②理想と現実を比較してギャップを把握→
③理想に近づくために不要なものを発見する→
④それを手放せない理由・思考の癖を発見する→
⑤納得してものを手放す→
⑥上の②③④⑤を繰り返す

これらのことをやれば、ご自宅をはーさんの理想である「すっきりと優雅に生活を楽しむ暮らし」に近づかせることができます。
順番に見ていきましょう。

理想をもつ

はーさんの理想のお部屋の状態はどんなものでしょうか。
まずはここを具体的に想像してみてください。

ご相談文の中で、
「何かを捨てて、すっきりと優雅に生活を楽しむ暮らしをしたい。」
と書かれています。
ここがはーさんの理想なのだと思います。

捨てるべきものは、今使っておらず今後も使わないもの。
このなかには、「無理して使っても使えなくはないが、ストレスになるもの」や「この先使うことがあるかもしれないけど持っていることでストレスを生むもの」も含まれています。

そして、理想のすっきりした状態で優雅に楽しむ暮らしをイメージしてみてください。

すっきりした状態とは
・必要なものが取り出しやすく収納されていて
・部屋の表にものが溢れていない
状態ではないかと思います。

優雅さとは
・何かを使う時に探し物など無駄な動きをしなくてよかったり
・何かを取り出す時にものまでの動線がスムーズで目的の行動をすっと行える
・心のゆとりがある
状態ではないでしょうか。
行動を線で描いた時に、ごちゃごちゃと動線が絡まるのではなく、一筆書きですっと始点と終点が結ばれるようなイメージです。

理想の空間のイメージを持つことで、ものの取捨選択の指針とすることができます。
ぜひご自身がどのような暮らしをしたいのか、を考えてみてください。

理想と現実を比較してギャップを把握

理想とするすっきりと優雅な暮らしができる空間がイメージできたら、より具体的に目標を定めます。
理想の物量やテイストのお部屋の写真を検索して収集してみてください。

そして、はーさんの理想と近いお部屋の写真を見つけることができたら、この理想のお部屋と現在のご自宅を比較してみてください。
理想のお部屋の物量が1だとすると、はーさんのご自宅の物量はどれくらいだと思いますか?
おおまかでいいので、1:〇で割り出してみてください。現状が把握できると思います。

理想に近づくために不要なものを発見する

現状の物量が把握できたら理想のお部屋とご自宅を比較して、理想のお部屋にはないけれど、我が家にはあるものとは何か?を見つけてください。
理想のお部屋にはダイニングチェアが人数分しかないなとか、枕も人数分しかないなとか、もの単位で理想のお部屋と現状を比較して見てみてください。

理想と現実のギャップを埋めるように、あぶれているものを手放すかどうかひとつひとつ検討していくと、理想の状態に近づいていけます。

それを手放せない理由・思考の癖を発見する

理想のお部屋と比較してみると理想に近づくために手放す必要のあるものが見つかったと思います。
とはいえ、理想のお部屋にないもので我が家にあるものは“使えるから持っているのだし手放すなんてもったいない”と思うかもしれません。

それ、本当に手放せないものでしょうか?
理想のお部屋に住んでいる方はそのものが無くても暮らされているはずです。
“あっていいもの”は必ずしも“なくてはならないもの”ではなかったりします。
大変な作業かとは思いますが、思考の癖を発見するつもりで、ご自分の常識を一回取っ払って考えてみてください。

納得してものを手放す

思考の癖を見直し、不要なものを選別できたら、実際に手放します。
手放すと決めても、実際にものを自宅から出すまではまだ手放し作業は完了していません。リサイクルショップに持ち込む・ゴミの日に出す・粗大ゴミとして処理を手配する、フリマアプリに出品する……など、手放し作業は億劫ですよね。
すべて家から手放しきって初めて手放し完了ですので、期限を切るなどして少しずつでいいので確実に手放していけると良いですね。

持てば持つほど豊かというわけではないと知る。

ご相談文を拝読し、
はーさんは思考の方向性として、「元の金額より安く売って損をするくらいなら所持していたい」「いいものは捨てるくらいなら、多少無理をしてでも使いたい」という考えを持っていらっしゃるのではないかと感じました。

ただ、必ずしも手放すことがもったいないわけではありません。余分なものまで持つことの方がもったいないという場合があるのです。

・不要なものを溜め込むデメリットを知る

不要なものを溜め込むと、今使っているものを置く場所がなくなります。
部屋の表にものが溢れるとスムーズな動線がとりづらくなります。
掃除もしづらくなり、部屋を清潔に保ちにくくなります。
ものの数が多いとメンテナンスも行き届かなくなり、せっかく持っているお気に入りのものも傷みが早くなってしまいます。
こう考えてみると使わないものを溜め込むことは得策とはいえません。
むしろ、“溜め込むことで損を被っているかもしれない”という目線で部屋を見直してみてください。

・使わないものを持ち続けると損しているかも

購入したものの、新品のまま使っていないものは「いずれ使うから」と手放すのが先延ばしになりがちです。
しかし、先々使うことが分かっていてもそれが何年も先なら、新品だからといって無理に持ち続ける必要はありません。
タオルや衣類など新品ならリサイクルショップに持ち込めば引き取ってもらえることがほとんどです。
ものは所持しているだけでも収納を圧迫しますし、経年劣化もしていくので、使わずに何年もしまいこんでいるくらいなら、すぐに使ってくれるであろう人のもとへ旅立たせた方が、ものにとっても人にとってもいいのではないでしょうか。

せっかく買ったのに買った値段より安く(ものによっては無料で)手放すともったいない、損をすると感じるかもしれません。

しかし、今必要ないものを持ち続けることで、すっきりした空間も優雅な暮らしからも遠ざかっていると考えると、それって金銭面以外の精神的な部分や日々の快適性の面で損をしていると思いませんか?

手放すことで、空間が空くので今使うものを収納できますし、不要なものがないので出し入れもしやすくなり、収納が使いやすくなります。

こうしてはーさんの理想の暮らしに近づけることこそ得なのではないでしょうか。

・無理に代用しようとしなくていい

>>気に入った枕、羽毛枕、他の枕もいいものなので座布団にしようと思う
とありますが、枕は枕、座布団は座布団で異なる用途のものではないでしょうか。
枕と座布団は縫製も中身もカバーの生地感も異なるものです。
枕は睡眠時に快適に頭を支えるものであり、頭部を乗せるのに適した形状をしています。
座布団は座具としてお尻を乗せて安定する形状になっています。
枕を座布団として使うのは無理が生じていませんか?
どんなにいいものでも、本来の用途と異なる使い方ではその良さを生かすことができません。
手放すのがもったいないからと、「無理に代用」してまで使う必要はないのです。

・定数を決めよう

例えば枕や座布団を持ち帰りたいのであれば、枕と座布団の定数を決めましょう。
自宅に暮らす家族の人数から、何個の枕と座布団があれば良いのか算出します。
そして、自宅にもう十分に気に入った枕と座布団があるなら、それをそのまま使い、ご実家の分は持ち帰らずに手放します。
今使っているものより質が良い場合は、入れ替えを行います。
こうして各アイテムごとの定数を守れば、ものが増えていくのを防げます。

・好みとこだわりを認めて優雅に暮らす

まだ使えるもので手放すか悩ましいものは、まず「お店に並んでいたらお金を出して買いたいと思うか」考えてみましょう。
もうすでにはーさんの自宅には必要なものがあり、それを使って生活していますよね。
まだ使えるからと実家のものを全て持ち帰る必要はありません。

使用期間の長い寝具や調理器具等については、自宅にあるものと比較して「1in1out」して入れ替えたいと思う場合は持ち帰り、そうでない場合は手放しましょう。部屋の容積は有限です。
マットレスや枕などの毎日使う寝具は、基本的に不足していることはほとんどないのではないかと思います。
使わないものを溜め込むとスペースを占有し管理の手間もかかります。
今必要ないものを無理に持ち帰り、ご自宅がはーさんの理想から遠ざかる方が「もったいない」のではないでしょうか。

>>父用に買った新しいパジャマが7着、スウェットも4着
こちらについても同様です。
新品のパジャマを用意したものの、使わずに他界され、きっとパジャマ自体にも思い入れがあるのではと思います。
もし、思い出の面から手放せないのであれば、思い出はかけがえのない替えのきかないものですので、無理に手放す必要はありません。心の整理がついた時に、自然と手放したいと思えたら手放すのが良いと思います。

ただ、ご相談文では「これは今後私が着るしかない」と書かれているので、その部分についてお尋ねします。
お父様とはーさんの体型は近かったのでしょうか。
サイズが合わないのに新品だからと無理して着ようとしてはいませんか?
はーさんにも好みの素材感や色味というものがあると思います。
人間は1日の1/3は寝て過ごしています。就寝時の衣類の快適性は重要です。
無理して今あるものを使おうとしなくて良いのです。つまり、「これは今後私が着るしかない」ということは全然ありません。
こういった好みの素材感や色味のものをご自身で選んで過ごすことも、はーさんの「優雅に暮らす」に含まれているのではないかと思います。
ぜひご自身の好みを大切にされてみてください。

・消耗品は、年間使用数を考えてみる

タオルやパジャマなどの消耗品は使い切るまでの年数についても考えてみましょう。
はーさんは1週間でパジャマを何着使っていますか?
そして、何年に1回入れ替えしていますか?
1年で2着は手放している、というならこの先3.5年で7着を使うことができますが、もし今使っているパジャマを何年も使っているなら、この新品のパジャマ7着を使うのに何年かかるでしょうか。
使用するまでの間にも好みが変わったり体型が変わることも考えられます。
そう考えると今使うことができても何年も先に必ず活用できるわけではありません。

タオルについても同様です。
例えばそろそろタオルを買い換えようと思っていて、ご自分のタオルに求める条件をクリアしたものがあり、お金を出してでも欲しいと思うようなものだったらありがたく持ち帰りましょう。
しかし、今十分にタオルがあったり、質感や素材感が好みの条件をクリアしていないようなら、無理に持ち帰る必要はありません。
ご相談分によればご主人は使われるタオルにこだわりがあるとのことですので、はーさんが使われることになるかと思いますが、その場合ご自宅のストックで事足りるのではないでしょうか。
ウエスとして使うにしても使える量にはやはり限界があります。

まだ使える消耗品については“今必要な量”に注目して取捨選択をされてみてください。

3.価値があるので捨てるよりも売った方がいいと思われるものは、期限を決めて手放す

また、価値があるので捨てるよりも売った方がいいと思われるものについては、期限を決めて計画的に中古市場に出品していきましょう。
出品があまりに手間だと感じるなら、欲しいと言ってくれる人に譲るのも手です。

>>また、母が木製の器に手掘りした工芸品がある。
>>お盆、お椀などメルカリに出したところ、欲しい人は沢山いる。
>>が、作った当時、素材が高価で、手もかかっているし、上手くできているオシャレなので、安売りしたくない。
>>実家にあった作品のうち、茶びつは売った。1万ちょっとで。
>>私の家にも母が手掘りした菓子器や茶びつがあり、全く使っていない)
>>花の彫刻などとても美しい。使わない理由は、和菓子を食べないし、来客もない。木は汚れると痛みそうで美観をそこねそうで使いづらい…

上記はまさに、価値があるので捨てるよりも売った方がいいと思われるものですね。
安売りしたくないと書かれていますが、一度納得のいく価格をつけて一度全てフリマアプリなどで出品してみてください。
それでも反応のないものは値下げすることになると思いますが、値下げしてでも手放したいと感じたら値下げして様子を見てみましょう。
また、フリマアプリなどは出品しっぱなしにせず、期限を決めて売れるよう手を入れていきましょう。値下げしたり、コメントをつけたり(「明日中に売れなければ出品を取り下げます」など)、再出品するなどして人の目に触れる機会を設けることで売れる可能性があります。それでも売れなければリサイクルショップやフリーマーケットなど販売する場所を変えていきましょう。
案外Twitterなどで作品の写真を載せてツイートしてみたら、拡散されて欲しい人の元まで情報が届けられる可能性もあります。売ることにこだわるのであれば、色々試してみてください。

もし上記のような行動を億劫に感じるなら、元を取るよりも手放すことを優先する方向に切り替えて、欲しいという人に譲ったり寄付するなど、売る以外の手放し方もあります。
売ることよりも「すっきりと優雅に生活を楽しむ暮らし」という理想を叶えたいという欲求の方が大きいようなら、必要な空間を得るために手放しましょう。

原価割れが気になるかもしれませんが、手放したいと思っているものは視界に入るだけで少しずつ「早く手放したい」「これを出品して値下げして場合によってはまた再出品して……」と考えるストレスが蓄積されていきます。
原価割れしても確実に手放すことで、そのものが視界に入るたびに感じているストレスごと手放せます。はーさんの理想に近づくための空間も手に入ります。
お金にならなくても、手放すことで得るものがすでにあります。
どれを得たいか天秤にかけて、行動してみてください。

何か少しでもお役に立てる部分があれば幸いです。
ご無理なく片付けを進めていけますように。

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