住まいの今と未来をつたえる

特集

物を捨てさせてくれない家族とどう折り合いをつけたらいい?【ミニマリストおふみの相談室】

2020.06.16


共同生活は折り合いをつけながら営んでいかなければなりませんが、毎日過ごす部屋のインテリアや物の量などは各々のこだわりが強いとなかなか折り合いをつけるのが難しいところでもあります。今回のご相談はミニマリストになりたいものの、ご家族と折り合いがつかず捨てるのを止められてしまうというご相談です。すべてを思い通りにすることができる一人暮らしと違い、共に暮らす人の理解を得なければ進めることのできない場合はどのように折り合いをつけたらよいのでしょうか。

ミニマリストを目指しています。
家族は、私が捨てようとする物をいつか使うと言い、捨てさせてくれません。
私の考えでは、今使わない物は捨て、また必要になったら買うという考えです。
しかし、家族はもったいないというばかりです。
物を捨てたくなる私も変わった方がいいと思いますが、何かアドバイスをいただけると幸いです。  

あしあさん(女性)


というご相談をいただきました。今回のご相談に回答するにあたって、追加で下記のご質問をさせていただきました。

Q.今、お部屋の状態(物量や、視覚的なすっきり具合)は、理想に対して何割くらいまできていますか?
A.部屋の状態は現在、妹と共有しており、私の空間は狭く、部屋も好みではないので理想に対しては私自身の机がある1割程です。

Q.家族構成を教えていただけたら幸いです。
A.父、母、妹(18歳)と私(22歳)の四人家族です。

Q.捨てようとするけれど反対される物は、具体的にはどんな物でしょうか?
A.USJで私が自分で買ったハリーポッターの杖や、数年後に使うかもしれないサンダル、数の多すぎる(5本程度)ジーンズなどです。

Q.捨てようとして、反対されずに捨てることができたのはどんな物でしょうか?
A色あせたズボン、ずっと使ってボロボロになってきたリュックなどです。

Q.捨てたい物を捨てられない時、どんな感情が湧きますか?
A.もどかしさと怒りです。


(追記)
妹に貰ったプレゼント(スターウォーズのフィギュア)を捨てたいことを打ち明けた時、喧嘩しましたが貰った当時は嬉しいという気持ちがあったから、と捨てることを許してくれました。
時々、こっそりと勝手に物を捨てたこともあります。

ご相談いただきありがとうございます。
物を持ちたいタイプのご家族と共同生活を営みながら、ご自分の理想のお部屋を実現していくのって大変ですよね。
私もかつて、インテリアに目覚めた大学生の頃は実家に住んでいました。物が多く、床中にカーペットが敷かれていてテレビ台にはレースが敷いてある家の中で、どうやってウッディーでシンプルな部屋にできるのか考えて「無理では…?」と途方に暮れていました。

あしあさんはご家族と同居されているので、視界に入る全ての空間を思い通りにすることは難しいです。ただ、今はそれができなかったとしても、今の状況が一生続くわけではありません。この先妹さんが家を出たり、あるいはあしあさんが家を出る可能性もあるでしょうし、住まいの環境が変わると自由にできる領域は変わっていきます。また、この後お伝えする「部屋の見方のスイッチ」によって、気持ちを切り替えることもできます。
すっきりしたお部屋を好ましいと思うあしあさんの感性を大事にしていただけたらと思います。これらのことを前提に、ご家族と共同生活をする上で、割り切りも身につけながらご自分の感性も大切にする方法について考えていきたいと思います。

家族共有スペースは「駅」みたいなもの、人の個室は「他人の家」みたいなものだと捉えてみる

Q.今、お部屋の状態(物量や、視覚的すっきり具合)は、理想に対して何割くらいまできていますか?
A.部屋の状態は現在、妹と共有しており、私の空間は狭く、部屋も好みではないので理想に対しては1割程です。

好きなインテリアや物量、及びお部屋空間を実現して暮らすことについて、100%を目指すなら一人暮らしするしかありません。今ご両親とお住まいということは、そのお家はご両親の物ですよね。持ち家・賃貸の形態を問わず、ご両親のどちらかが名義人なのではないかと思います。もしいずれ相続するご予定だったとしても、相続するまではご両親の物です。その家のインテリアの決定権は基本的に持ち主にあります。

あしあさんには、一人暮らしをするという選択肢はあるのでしょうか。
例えば、ご実家で妹さんと一緒のお部屋となると、お部屋を100%自由にはできませんが、家賃がかかりません。ご実家に生活費を納めているかもしれませんが、それでも一人暮らしにかかる金額よりは少額なのではないでしょうか。家事も家族で分担できるかと思います。
一人暮らしにするとお部屋を100%コントロールできますが、毎月家賃がかかりますし、家事分担もできません。
一人暮らしを検討し、このあたりの部分を天秤にかけた上で、ご実家で生活すると決めたのであれば、やはり割り切りが必要です。

自分でコントロールできるのは、あしあさんと妹さんのお部屋の中の、あしささんのスペースとして与えられている場所です。それ以外の共有エリアは、「もっとすっきりさせようよ」等、家族の一意見として提案することはできても、あしあさん主導で勝手に変えていくことはできません。人と暮らすということは、絶対に”割り切り”が必要になってくるのです。自分でコントロールできる領域と、それ以外の領域に分けて、視界に入れる際の”スイッチ”を切り替えましょう。

例えば最寄駅の構内が理想のインテリアでなくても、「こう変えたい、なぜ変えられないんだ」ともどかしくなったりはしませんよね。
そこが自分の管理下ではない、公共空間だと認識しているからです。
同じような感覚で、家の中のあしあさんの管理スペース以外の部分を認識することをおすすめします。
家の空間を区分けしてみましょう。

まずリビング・ダイニング・水回りなどの「家族共有スペース」、こちらは例えるなら駅です。公共空間のような感覚で捉えてみましょう。
次に、ご両親の個室や、妹さんの物が置いてあるスペース、こちらは例えるなら「他人の家」です。友人や親戚の家に遊びに行った時に、駅同様に「ここをもっとこう変えたい、もどかしい」とは思わないのではないでしょうか。それは「人は人、自分は自分」と切り分けて考えることができているからです。
最後に、あしあさんの物が置いてあるスペースです。あしあさんがコントロールできるのはこの空間です。
人の空間は人の空間、共有の空間はみんなの空間、妹さんと共同のお部屋は妹さんとふたりのもの、その中のあしあさんのスペースはあしあさん一人のものです。
家の面積全体で考えたら十数%かもしれませんが、自分のコントロールできる範囲だけに目を向ければ、あしあさんのスペースは100%自由にできるわけです。
このあしあさんのスペースに焦点を当てて、満足のいくお部屋にしてみましょう。

また、妹さんと同室ということなので、一部屋の中に「あしあさんの私的スペース」「妹さんの私的スペース」「ふたりが使う共有のスペース」があると思います。
例えば仮にですが、二段ベッドと勉強机とクローゼットと本棚があったとして、あしあさんのベッド・机・クローゼットはあしあさんの私的スペース、妹さんのベッド・机・クローゼットは妹さんの私的スペースです。イラスト内青色部分のベッドまでの通路的スペースは共有スペースです。
この共有スペースについては、妹さんと相談して整えてみましょう。妹さんにすっきりした理想のお部屋のお写真を見せて「こんな部屋良くない?」と話してみて、もし妹さんも「いいね!」と言ってくれたなら、二人で共有スペースをすっきりとさせていくことができるでしょう。
お部屋全体をすっきりさせたい場合はお互いの意見を融通させなければなりません。もし二人の好みが全く異なる場合は、潔く諦めましょう。
自分の意思で変えられるのは自分だけであって、人は変えられません。コントロールしようとしてはいけません。

自分に与えられた私的スペースを理想に近づける作業に徹しましょう。
もしくは、ご実家を出る可能性があるのであれば、家を出たらこんな空間にしたいという理想について、具体的に洗い出していく作業をしてもいいと思います。「統一感のあるインテリアにしたい。白系+ナチュラルな色みの木を組み合わせた物がいい。アクセントカラーはグリーンがいい。具体的にはこういうテーブル、カーテン、ベッドがいい」というように、理想を書き出してみてもいいと思います。実際の引越しの際に、手助けしてくれる存在になると思います。
それだって十分にクリエイティブで面白い作業のはずです。

持ち物を管理している人が、捨てるかどうかを決める。人は人、自分は自分と切り分けて考える。

>>物を捨てたくなる私も変わった方がいいと思いますが

とありますが、物を捨てたくなる自分を無理に曲げる必要はありません。
ただ、人と共同生活をするなら、適合する形にしなければなりません。人の物は勝手に捨てられません。

>>家族は、私が捨てようとする物をいつか使うと言い、捨てさせてくれません。

とありますが、あしあさんが捨てようとしている物は「ご自分の物」だけでしょうか?それとも「家族の物」も捨てようとしたことがありますか?

もしあしあさんがご自分の物を捨てようとしているのに、ご家族が口を出すようであれば、「自分は自分、人は人。人は自分の一部ではない」という、自分と個人を別個の人間として切り離して考えるということができていない状態と言えるかと思います。たとえ家族であっても、家族は自分ではありません。
あしあさんも自分以外の持ち物について過剰に干渉してはいけませんし、ご家族もあしあさんの持ち物について行き過ぎた干渉をすべきではありません。お互いに自立して、口出ししたくなる自分の心の声を、一度心のダムにとどめて口に出さないようにする努力が必要です。それが人と共同生活をするということだと私は考えています。もし、あしあさんが捨てようとしている物が「家族の物」となると、それは過干渉と言えるかと思います。

>>私の考えでは、今使わない物は捨て、また必要になったら買うという考えです。

とあり、この考えは間違っていません。
すっきり暮らすためには、今使わない物は捨てるべきだと私も考えます。

日本の住宅事情を考えると、広大な大地に家を建てているわけではないので面積に限りがありますし、生活をするとどうしても必ず物は増えていきます。人からもらう物、ノベルティ、今年の気分に合った服、移り変わる趣味……物は増えていくものです。なので、基本的に1つINしたら1つOUTして、収納量10割に対して、しまう物の物量が10割を超えないようにしないといけないわけです。なので、今使わない物は手放すという意識は大事です。
ちなみに、その手放したい物ってご自分で働いて稼いだお金で買いましたか?

>>(捨てようとしている物は)USJで私が自分で買ったハリーポッターの杖や、数年後に使うかもしれないサンダル、数の多すぎるジーンズなどです。

とありますが、サンダルやジーンズもご自分で買いましたか?

もしご両親に買ってもらった物が含まれている場合は、お金を出した人がひとこと言ってしまうのも頷けるかもしれません。しかし、やはりその物を管理しているのがあしあさんで、それをあしあさんのお部屋に収納して、お部屋の掃除や片付けをあしあさんがされているのであれば、あしあさんのお部屋にある物についてはあしあさんの判断で要・不要を決めていっていいと思います。
あしあさんのお部屋に置く物について、
「これを手放したい。部屋のスペースを確保したいので、もう使わないこれは部屋に置いておけない」と判断しているのに
「あしあさんの部屋に置き続けてほしい」と主張されるのであれば、やはり物について必要以上に干渉している状態ではないかなと思います。

物を手放すことについて反対するのであれば、家族共有の納戸やクローゼットなどにそれを移動させてもらう、といったことはできないでしょうか。物はやはり、基本的には管理している人が要・不要を判断する権利を有していると思います。

しかし、我が子のおもちゃなどは子育ての「思い出」のアイテムでもあります。
USJのハリーポッターの杖はあしあさんがご自分で買った物かもしれませんが、ご両親にしてみれば、未就学児時代に遊んでいたおもちゃなどと近い意味合いで、我が子の成長を感じられる思い出の品なのかもしれません。

そう考えると、ご両親にとって思い出の品となっているならご両親の管理のもと保管もらうというのがいいのではないかと思います。
また、人と話し合うときは内容も大事ですが、同時に伝え方も大事です。
正しいことを言っていても、強い口調でたたみかけるように言われると、同じことを言っていてもスッと内容が入ってこないという経験はありませんか?
どうしても家族だと思ったことをどんどん口にしてしまいがちだと思うので、建設的に話を進めるために、少なくともあしあさんは平静を保ってお話しされてみてください。
意見の相違があっても、喧嘩に発展させないということを念頭において話してみましょう。

プレゼントの手放し方について考える

>>妹に貰ったプレゼントを捨てたいことを打ち明けた時、喧嘩しましたが捨てることを許してくれました。
>>時々、こっそりと勝手に物を捨てたこともあります。

頂き物は手放し難いということで、よくご相談をいただきます。
結婚祝いや内祝いの品、就職祝いなど親戚などからの贈り物、友人からの贈り物などが多いです。
これらに共通しているのは、「プレゼントを贈ってくれた人がそばにいない」ということです。離れて暮らす人同士の場合、贈った相手も何を贈ったかって案外覚えていなかったりします。結婚祝いでいろんな物を友人に贈ってきましたが、誰に何をあげたのか挙げてみようとしても「えーと、バスタオルあげたのは誰の時だっけ?」という具合に、すらすらとは思い出せません。なぜなら、贈った物がもう手元にないからです。

反対に頂き物は「誰に何を」もらったのか正確に覚えています。毎日使って目にしている上、開封したその日からずっと贈ってくれた人のことを思い出しながら使っているからです。離れて暮らす人からもらった物を使わなくなった場合、「見るたびに手放そうかと迷うのであれば、写真に撮って思い出としてデータで残して、実物は手放してしまっていいと思います」とお伝えすることが多いです。相手へのお祝いの気持ちをのせて物を贈り、物の授受がされた時点で、プレゼントとしての役目は九割方達成していると考えるからです。相手に無理してでも使ってもらいたいとは思っていないはずです。

しかし、これは離れて生活している場合の話です。贈ってくれた人と一緒に暮らしている場合は、贈り手側も何を贈ったのかしっかり覚えていますよね。そうなると、自分の贈った物を「手放すよ」と宣言されるのはいい気分にならないと思います。

>>時々、こっそりと勝手に物を捨てたこともあります。

とありますが、一緒に暮らしている人からの贈り物は、この方法がいいのかもしれません。あるいは、一緒に暮らしている間は思い出の品として箱に入れて保管し、普段使いはしないものの捨てることもしないという「保留」状態にしておくのも一つの手です。人間はどうしても趣味が変わっていくものです。洋服も、気に入っているものも、聞く音楽も変わっていきます。
一緒に暮らす人と「物を贈り合う」のはなかなか難しいところだなと思います。

例えばケーキや好きな食べ物を買って帰ってきたり、ランチをおごったり、お茶やコーヒーなどの「消え物」を贈り合うのはいかがでしょうか。
そうすれば、贈り物にまつわる喧嘩がなくなると思います。

文章から汲み取りきれずに的外れなことを言っている部分もあるかもしれません。
少しでもお役に立てる部分があれば嬉しく思います。
あしあさんの理想のお部屋に近づけていけますように。

おふみの相談室へのご相談はこちらからご応募ください。
皆さまのご応募お待ちしております。

タグ TAG