住まいの今と未来をつたえる

マネー

「オール電化」VS「電気とガスの併用」では光熱費はどっちがお得で安い?

2021.01.22


新築の家を建てるときに、オール電化にすべきかどうか悩む人は多いかもしれません。賃貸住まいの方でもオール電化かどうかをポイントとして選ぶ人も増えているようですが、コスト面や安全性、家族構成、ライフスタイルなどによってどちらを選ぶかはさまざまです。オール電化または電気とガスを併用した場合のメリット・デメリット、それぞれにかかるコストを把握し、どちらがよりあなたのライフスタイルに合っているのかを考えてみましょう。

オール電化のメリット


まず、オール電化にも電気とガスを併用する場合にもメリット・デメリットがあります。光熱費だけでなく、メリット・デメリットもきちんと把握したうえで選択することが必要です。具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのか見ていきましょう。

 安全性が高い

火を使わないため、火災のリスクが軽減され安全性が高くなります。またガス漏れや不完全燃焼による一酸化炭素中毒などの心配もありません。

支払い先をまとめられる

ガス会社への支払いがなくなるため、支払先を電力会社にまとめることができます。ガス料金の基本使用料の支払いがなくなり、電気の基本使用料のみになるのも支払先をまとめるメリットです。

お湯や暖房を安く利用できる

オール電化では夜間の電気料金の単価が割安に設定されているため、夜間に沸かしたお湯をタンクにためておき昼間に利用したり、※蓄熱暖房機を使うことでコストを安く抑えることができます。
※蓄熱レンガや耐火レンガを加熱することでその放熱を利用する暖房。オール電化では、蓄熱暖房機を使うことで夜間に蓄熱した熱を暖房として活用することができる。

災害時にタンクの水の利用が可能

災害などで断水した場合、オール電化では一度水を貯水タンクに貯めて加熱する給湯方式が採用されているためタンク内に貯めた水を、一時的な生活用水として利用することもできます。飲料用には適していませんが、トイレや洗面用などに活用することができるのは大きなメリットです。

災害時の復旧が早い

災害時に電気・ガス・水道のライフラインが使用できなくなった場合に、もっとも早く復旧するのが電気といわれています。ガスの復旧を待つことなくお湯を使ったり調理ができるようになるというメリットがありそうです。

キッチンの手入れが簡単

オール電化の場合の調理に使用するIHクッキングヒーターはガスコンロよりも汚れにくく、フラット面になっているため手入れが楽で見た目もスッキリしています。

ガス管の引き込み費用がかからない

新築住宅の建築では住戸にガス管を引き込む工事の必要がないため、その費用がかからないというメリットもあります。

オール電化のデメリット

オール電化にした場合のデメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

昼間の電気料金が割高

オール電化向けのプランでは夜間の電気料金が割安に設定されている代わりに、昼間の電気の単価は割高に設定されています。給湯や蓄熱暖房機の電気代は夜間の安い料金で使うことができますが、日中の家事や家電にかかる電気代や、日中に給湯器のタンク内のお湯が足りなくなった場合の焚き増し分は割高になってしまうため、日中の電気使用量が多くなるご家庭では注意が必要です。

初期費用が高額

オール電化のメリットを活かすには、最初に蓄熱暖房機やIHクッキングヒーターといった機器を設置する必要があります。これには機器本体の購入費用だけでなく、設置工事費などの初期費用がかかります。

停電時に不便

ガスと併用していれば停電時にも乾電池式のガスコンロや小型湯沸かし器などは使えますが、オール電化にするとほぼすべてのライフラインが止まってしまうリスクもあります。

設備の設置場所が限られる

エコキュートなどのオール電化用の給湯設備は大きさも重量もあるため、ある程度の広さと重量に耐えられる設置場所が必要になります。場合によっては設置場所の補強が必要になることもあります。

調理器具が限られる

IHクッキングヒーターは電磁波を利用して鍋を発熱させるため、IH用の調理器具しか使用できず、ガスと比較すると限定されてしまいます。

電気とガスを併用する場合のメリット

オール電化ではなく、電気とガスを併用した場合にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

都市ガス併用だとコストが安い

ガスには都市ガスとプロパン(LP)ガスがありますが、都市ガスの場合は併用するとオール電化よりもコストを抑えることができる場合もあるようです。

停電時に給湯・調理ができる

オール電化では停電するとすべての給湯設備や調理機器が使えなくなってしまいますが、ガスを使用する乾電池式ガスコンロや小型給湯器は停電時にも使用することができます。

電気とガスを併用のする場合のデメリット


電気とガスを併用した場合に考えられるデメリットは、次のようなことが挙げられます。

電気とガスの基本料金がそれぞれにかかる

電気とガスのそれぞれの契約に対して基本料金がかかるため、基本料金自体は増えることになります。

オール電化と比べると火災など、安全面でリスクが高くなる

ガスコンロは火を使うため、IHクッキングヒーターに比べると火災のリスクが高くなります。

プロパンガスとの併用は割高となる場合が多い

電気と都市ガスの併用ではオール電化と比べ安くなることもありますが、プロパンガスでは割高となる場合が多いため、事前に確認しておく必要があります。

「オール電化」と「電気とガスの併用」の場合の基本料金の比較


使用量にかかわらず必ず発生する基本料金は光熱費節約の上で大きなポイントです。オール電化では、調理・空調・電気・給湯などをすべて電気で賄いますが、その場合の基本料金はどのくらいかかるのでしょうか。電気とガスを併用した場合と比較すると基本料金がどのくらい違ってくるのか見てみましょう。

オール電化

電気使用量の多いオール電化では電気代を安くするため、一般的にはアンペア数が大きく夜間の料金が安くなるオール電化向けのプランを使用します。これは夜間に蓄熱したりお湯を沸かすタイプの給湯設備が多いことや、50~60Aが必要といわれているためです。そのため、ガス併用時のプランでは電気代が高額になってしまう可能性があります。お住まいの地域の電力会社によってさまざまなプランが設定されているようですので、事前に確認をしておきましょう。

【基本料金】60Aの場合:1,716円(東京電力:スマートライフSより)

電気+都市ガス

ガスを併用した場合の電気のアンペア数は30Aが平均的です。これに都市ガスを併用した場合の基本料金は次のとおりです。

【基本料金】1,914円
<内訳>
電気:858円(東京電力EP「従量電灯B」30A)
都市ガス:1,056円※平均使用量30.0m3/月(東京ガス東京地区等「一般契約料金」より)

電気+プロパンガス(LPガス)

電気とプロパンガス(LPガス)の併用の場合の基本料金です。

【基本料金】2,750円
<内訳>
電気:858円(東京電力EP「従量電灯B」30A)
LPガス:1,892円(石油情報センターの東京都都心部の「基本料金」(2020年8月時点)より)


電気会社や地域により基本料金に多少バラつきがありますが、基本料金のみの比較ではオール電化がガスの基本料金がかからない分、少し安くなっています。ただしオール電化にした場合はプランが併用の場合と異なるため、都市ガスと電気を併用した場合とそれほど大きな差はなくなってくるようです。

お風呂を沸かす場合のコストを比較

電気代やガス代は毎月の請求額で確認できても、日常生活の中でのお風呂を沸かすときにコストがいくらかかっているのかまで把握できている人はほとんどいないかもしれません。ここでは例として、電気とガスそれぞれで、お風呂のお湯を1回沸かすのにいくらかかっているのかを検証していきます。お湯を300リットル、10℃から40℃にあたためる場合にかかるコストで比較しています。

<オール電化>

・270円/回(電気温水器)
※電気代=(40-10)(℃)×300(L)÷860(kcal)×25円80銭
25円80銭は、東京電力スマートライフS昼間の料金です

<プロパン(LP)ガス(東京地区)>

182.41円/回
なおガス代金を計算する式は以下です
ガス代=(40-10)(℃)×300(L)×90%÷24,000(kcal/m3)×540.5円/m3
※ガス料金は2020年6月時点の石油情報センター(東京地区)の平均料金です。

<都市ガス(東京地区)>

109.48円/回
なおガス代金を計算する式は以下です
ガス代=(40-10)(℃)×300(L)×90%÷10,750(kcal/m3)×145.31円/m3
※ガス料金は2020年6月時点の東京ガス東京地区等A表の料金です。


コストを比較する限り、お風呂を1回沸かすには、都市ガスを使用した場合が効率的だという結果になっています。ただし湯の量や設定温度により料金は上下し、使用するときの状況によってもコストの幅が広がってくるため注意が必要といえそうです。

結局「オール電化」と「電気とガスの併用」どっちがお得?

「オール電化」か、「電気とガスの併用」にすべきかで、メリット・デメリットやコストを比較してみましたが、結局どちらがお得と言えるのでしょうか。たとえば日中家族の誰かが必ずいる家庭ではガスを併用したほうがコストを抑えられる可能性が高くなりそうですし、逆に日中誰もいない家庭では、夜間の料金が安くなるオール電化にしたほうが経済的かもしれません。
また、日中在宅の事が多い家庭でも、プロパンガスの場合は割高となるため、都市ガスが使えない地域では、オール電化にしたほうがお得な場合もあります。また人数の多い家庭では、コスト面だけでオール電化にしたほうがお得に感じたとしても、給湯器のタンクに貯められる湯量が足りず昼間に沸き増しが必要になると余分に電気代がかかることも考えられます。結局、住んでいる人の事情や状況、好みなどで、コスト面だけで判断できない側面もあるようですが、光熱費を節約するという点では、在宅時間や生活スタイルに合わせてお得な方を選ぶというのがよいといえそうです。

まとめ

「オール電化」と「電気とガスの併用」の場合でどちらがお得なのかを検証していきました。
自分または家族の日常のルーティンやライフスタイルに合わせて選ぶことで光熱費を抑えられますが、それに加えて自分自身や家族の状況も変化することもあれば、電気やガスの料金プランも更新されていくものです。そういった変化に応じて定期的にプランを見直すことも必要になってくるかもしれません。また、単にお得という視点からだけではなく、実際に生活している家族の状況に合わせていくことも必要です。お子様が産まれて家庭が増えたり、高齢の家族が多くなってくると、安全面を重視してオール電化を考えたほうがよいこともあります。

何を最優先にすべきかを考え、経済的にも住環境にも優しい方法で、自分や家族に最適な選択をするのがよいといえるでしょう。

タグ TAG