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DIYには水性塗料がおすすめ? 水性塗料と油性塗料のメリット・デメリット

2020.11.06

近年のDIYブームも手伝って、自分で室内のリフォームをする人が増加しています。同時に、壁や家具をペンキで塗ったり既存の塗装の塗り替えにも挑戦する人も増えていますが、いざホームセンターに行っても、ずらりと並んだ塗料の中からどれを選べばよいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。塗料には油性塗料と水性塗料の2種類ありますが、どのような違いがあるのでしょうか。それぞれのメリット・デメリットと合わせて解説していきます。

水性塗料とは?水性塗料のメリットとデメリット

かつて塗料といえば、その独特なシンナー臭のイメージが強い油性塗料が主流であり、水性塗料は臭いが少なく扱いやすいものの塗膜の強度や耐久性に欠けるという問題がありました。

しかし現在では水性塗料の性能は向上し、耐久性についても油性塗料に劣らないほど進化しています。さらに、環境や人体にも優しく、初心者でも扱いやすいことからニーズも増えてきているようです。では、そもそも水性塗料と油性塗料では何が違うのでしょうか。

水性塗料の特徴とともに、メリットとデメリットについて解説していきます。

水性塗料とは?

そもそも塗料の原料は、主に「顔料」「合成樹脂(シリコンやフッ素など)」「添加物」「溶剤」で構成され、水性と油性の違いは「溶剤」で区別されています。

「溶剤」とは、顔料(着色)成分や樹脂成分を溶かしている液体のことです。塗装後、溶剤は蒸発し、乾燥した塗膜には残りません。

油性塗料の場合は、溶剤に「有機溶剤」を使用します。塗料を薄めるために使用される溶剤が有機溶剤を混合させて作られたものがほとんどなため、独特の刺激臭が発生してしまうのです。

一方、水性塗料の溶剤は「水」を使います。そのため塗料が乾燥するときに水が蒸発していくだけなので、臭いはほとんど発生しません。

塗料の特徴として、シンナーなどの強い有機溶剤が配合されているほど強い塗膜をつくることができます。以前は水性塗料では塗膜が弱く、屋外の塗装には不向きといわれていましたが、近年の技術進歩もあり、水性塗料は改良が重ねられ、油性塗料にも劣らないくらいの強い塗膜をつくるレベルにまで近づいています。

環境問題や身体に及ぼす影響を考えると、安全で優しい水性塗料のほうが、今後は需要が伸びていきそうです。

 

水性塗料のメリット

油性塗料に引けをとらないレベルにまで改良されつつある水性塗料ですが、油性塗料にはない、本来の水性塗料独自のメリットもたくさんあります。

・価格が安い

水性塗料は油性塗料のような有機溶剤を含んでいないため、その分価格も安くなっています。

・臭いがほとんどない

シンナーなどの刺激臭のある溶剤を含んでいないため、換気のできない狭い室内で使用しても臭いが気になることはほとんどなく、屋外で使用しても近隣に強い臭いが漂ってしまうこともありません。

・人体に害がなく安全

シックハウス症候群の原因物質でもある揮発性有機化合物(VOC)の含有量が、油性塗料の1/4~1/9以下で、人体に与える影響も少なく、溶剤中毒になる心配もありません。

・混合後の塗料が使える時間が長い

油性塗料は当日の数時間内に使用し切らないと乾いて使えなくなってしまいますが、水性塗料は蓋を閉めておけば翌日まで使うことができます。

・使用時に手間がかからない

油性塗料が2つの液体を混ぜ合わせる塗料が多いのに対し、水性塗料のほとんどは1つの液体のみでできており、買ってきた状態ですぐに塗ることができるので初心者でも扱いやすくなっています。

・保管がしやすい

引火性のあるシンナーなどの危険物が含まれていないため、安心して保管をすることができます。

水性塗料のデメリット

加速度的に進化を遂げている水性塗料ですが、まだ改善途中の課題もあるようです。水性塗料のデメリットとなるものには次のようなことが挙げられます。

・温度や湿度などで乾燥度合が左右されやすい

一般的な水性塗料は、一定の温度に達しないと固まらない性質があるため、塗膜形成過程で気温が下がると硬化(塗料が固まる)機能が低下し、特に気温5度以下では乾燥が遅くなり、作業効率が悪くなります。

・強度・耐久性が劣る

有機溶剤が含まれていない分、油性塗料よりも塗膜の強度や耐久性の面で劣りますが、現在では水性塗料の塗膜の強度や耐久性もかなり改良もされています。

・金属には不向き

鉄、アルミ、ステンレスなど、金属は塗料を弾いて密着しにくい性質があります。ただし下地をサンドペーパーで磨く、下塗り材を上手に使用するなどの方法で対処できる場合もありますが、専門の技術が必要となります。

・ツヤがなくなりやすい

有機溶剤を含んでいない分、時間の経過に伴ってツヤが落ちやすい傾向にあるため、屋外など、目立つ場所の塗装には注意が必要です。

・水に弱い

完全に硬化するまでは水に弱いため、塗装工程で雨が降ると塗料が流れてしまうこともあります。

油性塗料とは?油性塗料のメリットとデメリット

油性塗料はシンナーなどの有機溶剤を含むため、取扱いや保管に注意が必要ではありますが、やはり仕上がり具合と塗膜の強度や耐久性においては水性塗料に譲れない安定感があります。

ここでは油性塗料の特徴とメリット・デメリットについて解説していきます。

油性塗料とは?

油性塗料は水性塗料と違い、塗料に「有機溶剤」が含まれていることが大きな特徴です。一般的に知られているシンナーも有機溶剤として使用されていますが、この「有機溶剤」こそが、塗装した下地(木材、モルタル、サイディング、金属など)に強固に付着し、耐久性のある塗膜を作るために大きな役割を果たしているのです。

冬場や寒冷地域での塗装、または耐久性を重視する外壁の塗装には水性塗料での対応は難しく、断然、油性塗料の強みが引き出せます。

しかし、「有機溶剤」は取扱いを誤ると中毒になるなど、人体や環境にも悪影響を及ぼす危険性があるため、十分な注意が必要です。

油性塗料のメリット

水性塗料に比べ、取扱いが難しそうなイメージですが、油性塗料ならではのメリットもたくさんあります。

・強く耐久性のある塗膜になる

有機溶剤が含まれているため、強く耐久性のある塗膜を作ることがでます。

・はがれにくい

密着性が高い性質があるため、はがれにくい塗膜に仕上がります。

・金属などの素材にも塗布できる

水性塗料では塗布しにくい(塗り付けにくい)ような、金属やツルツルした素材にもしっかり密着します。

・速乾性がある

有機溶剤は蒸発が早い性質があるため、塗布後の乾燥時間も短く効率的に作業を進められます。

・ツヤを長時間キープできる

有機溶剤を含むことで、仕上がりが美しく、塗膜のツヤを長期間維持しやすくなります。

・温度、湿度に左右されず、乾燥時間が一定である

季節や地域、天候など、気温や湿度に影響されることなく使用することができます。

・密着性を良くするための下地塗りをしなくても塗装できる

水性塗料は下地塗りが必要なものが多いですが、油性塗料の多くは下地塗りが不要です。

油性塗料のデメリット

油性塗料のデメリットとしては、次のようなことが挙げられます。

・刺激臭がある

シンナー(有機溶剤)には独特の刺激臭があり、健康や環境に害のある揮発性有機化合物(VOC)を排出するため、室内での作業する場合は、換気に気を付ける必要があります。そのため、屋外の塗装時にはご近所への配慮も必要です。

・価格が高めである

有機溶剤を含む分、水性塗料と比較すると、価格が高めになっています。

・保管場所や管理方法に注意が必要

シンナーは引火しやすいため、火気が発生しない保管場所や管理方法に注意が必要になります。

・塗装作業や後片付けの手間がかかる

塗料を薄める際や使用する刷毛などを洗うときにも専用の液が必要となり、手間がかかります。

・混合後の塗料が使える時間が短い

すぐに乾く性質上、長時間や翌日まで塗料を保存することができないため、作業を素早く効率的に進める必要があります。

水性塗料はどの部分をリフォームする時に良いのか?

水性塗料のデメリットが改良されつつ、現在では油性塗料とそれほど遜色ないほどまでに進歩してきていますが、実際のリフォームではどの部分で使用するのが適しているのでしょうか。

水性塗料はどの部分に塗るのが適しているのか

以前に比べ、水性塗料のデメリットとなる耐久性や密着力が油性塗料よりも劣る点が改善されてきたとはいえ、水性塗料本来の良さを最大限に引き出せる場所や対象物がやはり適していると言えるでしょう。

刺激臭がなく環境にも安心などのメリットを活かして塗装できる物とは、具体的には次のような物ではないでしょうか。

・室内で使用する木製品

・室内の壁

・床

・家具・建具

・窯業系サイディングやモルタル

現在では水性であっても、屋外で十分に適応できる塗料が増えてきています。今後はさらに用途が広がっていくことを期待できそうです。

油性塗料はどの部分に塗るのが適しているのか

油性塗料は、塗料の密着力が高く、耐久性に優れていることから、屋外での使用が適しているといえます。特有の刺激臭や扱いに手間がかかる等のデメリットはありますが、仕上がり具合は圧倒的に安定感があります。

そんな油性塗料は次のようなところで、実力を発揮しそうです。

・屋根

・屋外で使用する木製品

・プラスチックや金属などのツルツルした材質のもの

・アルミ、ステンレス、鉄などの金属サイディングの塗装(シリコン・ウレタンなど)

・コンクリート

まとめ

かつては耐久性や美しい仕上がり具合という点で、油性塗料が好まれていました。しかし、最近では水性塗料の性能が進化し、加えて環境や人体への配慮やその扱いやすさから水性塗料の使用率が増えてきています

DIYでの自宅リフォームを考えるときに、耐久性や強度を重視するか環境に優しいものにするかは個人の判断だとしても、近年の技術・開発の向上とともに今後ますます改善を重ねて油性塗料と同じ効果を発揮できるのであれば、環境問題が重要視される昨今、水性塗料は理想的であり、用途はより多方面に向いていく可能性があるといえます。

DIYにチャレンジされる場合には水性塗料・油性塗料のメリット・デメリットを確認した上で、あなたのお住まいに最適な塗料で快適なリフォームを実現できると良いでしょう。

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