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思い出の物を手放すにはどうしたらいい?【ミニマリストおふみの相談室】

2019.11.18


生活環境に合わせて物を持っていても、引っ越したり家族が増えたりと新しい生活環境になるると少なくない物を減らさないといけないことがあります。特に引っ越し先の方が狭いという場合は、物が入りきらないため手放さなければならない物も多くなりがちです。
今回のご相談は引っ越しに伴って、お母様の思い入れのあるタンスを手放さなければならず、気持ちの折り合いがつかないというご相談です。自分の物ではなくとも家族にとって思い入れのあるものであれば、手放すのが心苦しいもの。どのように折り合いをつけたら良いのでしょうか。ミニマリストおふみさんにお答えいただきました。

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お悩みの種類:物を捨てたいお悩み

お悩み:家を建てようとしています。小さいため今までのタンスなどは持って行けそうにありません。ただ母が少ない給与の中から頑張って購入してきた物たちなので、折り合いの付け方が分かりません。  

今回は上記のようなご相談をいただいたのですが、追加でご質問させていただいたところ、下記のような状況とのことでした。

・新しい家に住まわれるのは、ご両親、アキコさん、ワンちゃんが1匹。
・タンスはお母様が所有されているもの。
・タンスの他にあるのは着物などの衣類や本棚、食器棚。
・現在のご自宅が67坪ほどで、47坪ほどのお家への引っ越し。
・元々物持ちがよく、特にタンスはお母様が独身時代からコツコツとお金を貯めて自分で1つずつ購入されたため、思い入れが強い。

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この度はご相談いただきありがとうございます。
ご自宅を新築されるとのこと、おめでとうございます。間取りの決断から設備の決定、果ては壁紙の色などいろんな事柄を決めなければならないので大変だと思いますが、その分完成したお家に足を踏み入れる瞬間というのは感慨深いものだろうと思います。理想の暮らしが実現しますようにと祈っております。

現在のお住まいよりもお部屋の面積が小さくなるとのことで、今まで使っていたタンスなどの家具を持っていけないのですね。
坪数を㎡数に換算して比較してみましょう。

現在 67坪=221.488㎡≒220㎡

新しい住まい 47坪=155.372㎡≒155㎡

現在の住まいから30%ほど小さくなるということですから、持っていけるものにも限界がありますね。

コツコツお金を貯めて買ったものなので思い入れもあり、手放すことについて気持ちの折り合いがつけられないというお悩みです。そうですよね。思い入れのあるものを手放すのは強い決心が必要なので、折り合いがつけられないのも無理はありません。

折り合いをつけるのは持ち主本人


ところでここで一つ確認ですが、折り合いをつけられないのはどなたでしょうか?
ご相談者様のアキコさん自身でしょうか。それとも、タンスの持ち主であるお母様自身が折り合いをつけられないのでしょうか。ご相談文から推察するに、恐らくお母様自身も折り合いがついておらず、それをご覧になっているアキコさんもまた、お母様の大切なタンスを手放すことについて心苦しく思っており、気持ちの折り合いがついていないのではないでしょうか。

先にアキコさんの気持ちの折り合いについてご回答させていただくと、そもそもこちらのタンスはお母様の持ち物ですよね。それであれば本来は、持ち主であるお母様の折り合いがついていればば問題ないはずです。第三者が相手を慮ってもかわいそうに感じても、それは本人の問題であり、折り合いをつけるのも手放すかどうかの判断をするのもお母様ご自身です。

もちろんアキコさんがお母様から相談された時には、自分のスタンスをお話しして相談に乗ることはできますし、実際に処分する時にお手伝いすることはできます。でも決断はお母さまご自身がすることです。なので、このご質問への回答で言えば、アキコさんは特に気持ちの折り合いをつける必要はないのではないでしょうか。

お母様の大切なタンスを手放さなければならないことについて心苦しい面もあるかと思いますが、最終的な決断をするのはお母様ご自身です。アキコさんご自身はお母様ご自身の決断を受け入れる、という心持ちでいらっしゃれば良いと思います。

思い出だけで料理は作れない。

タンスの持ち主であるお母様自身が折り合いをつけられないと仮定してお話ししますね。明らかに新しいご自宅に持っていけないことはわかっているとのこと。新しいお部屋の面積が決まっている以上、現実を変えることはできません。今よりも部屋の面積を広げることはできません。できることといえば、タンス以外のものを減らしてタンスを入れられるスペースをつくること。もしくは、タンスの持ち込みを諦めることのどちらかです。

この時に考えてほしいのが、“思い出”と“暮らし”を分ける必要があるということです。“思い出”は過去にフォーカスを合わせたものですが、“暮らし”は基本的に「今」にフォーカスしなければなりません。なぜなら、生活は実際的なものだからです。


例えば、思い出だけで料理はできません。思い出が詰まっているけれど折れたおたまや、柄の折れたフライパンなど、壊れている物では料理はできません。本来、調理用品や家具は全て道具として人の暮らしを便利にするために使っている物であり、それぞれに火を通す、汁物をよそう、といった用途のために作られています。

そして、それらを使ううちに思い入れが込められていきます。こうしてただの道具から、思い入れのこもった道具になるのです。けれど、壊れてしまって道具としての機能を失うと、それは道具として使うことができなくなってしまい、思い出の品となります。思い出は思い出としてしまっておくか、捨てるかの選択ができます。結婚した時に買った思い出のフライパンだからと、思い出ボックスを用意してそこに保管しておいて、たまに取り出して見るのもいいでしょう。

そこまで想像すると、フライパンは思い出の品として残すには大きすぎる。やはりもう少し小さいもので代用できないかと考えるのでは。あるいはフライパンは写真に収めておいて実物は手放し、写真で思い出を楽しもうという考え方もあると思います。

私は、思い出のために今の生活スペースが狭くなったり、我慢を強いられるのは本末転倒だと考えています。思い出の品全てを手放そうということではなく、生活を圧迫しない程度に思い出を残していこう、という考えです。

調理用品で例えましたが、タンスなどの家具も同じです。
タンスとしての機能を保っていたとしても、今にフォーカスを当てた時に、新しい家で使えないのだとしたら、それは「思い出の品」です。思い出の品を工夫して生活で使えるようにするのは大いにありだと思います。でもそれが難しそうなほどのサイズ感で、お部屋の面積との釣り合いが取れないのであれば、やはり手放すしかないと思います。

思い出の品を残そうとして生活において我慢を強いられることになるのは本末転倒である、ということを頭の片隅に置いておくことで、タンスを手放す折り合いをつける手助けになると思います。

物を持ったら防災対策をしなければならない

また、日本は台風や地震の多い国です。

東京消防庁が実施した地震被害の調査によれば、負傷者の3~5割の方々が、屋内における家具類の転倒・落下によって負傷していることが判明したそうです。

(東京消防庁 家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-bousaika/kaguten/handbook/all.pdf


寝室を囲むようにタンスがあると、就寝中に倒れてくるリスクがあります。また、引き出し式のものは振動によって中身が飛び出してくる危険もありますので、タンス一段一段の飛び出し防止対策をする必要があります。突っ張り棒やL字の金具などで対策することはできますが、それでもやはり作り付けのクローゼットと比べると安心感は比でないと思います。

思い出を手放すことになるけれど、安全や安心を手に入れることができるかもしれないと思えば、タンスを手放すことに対して少しだけ折り合いがつけられたりしませんか?

新築の家ということで手放すもの、残すもの、たくさん決断しなければならないのできっと大変だと思いますが、新しい暮らしを気持ちよく始められますように。

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