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管理組合が2回目以降の大規模修繕工事のために気を付けておきたいこと

2019.03.27


築二十数年を目安に行われることが多い2回目の大規模修繕工事。ゼロからスタートした1回目の大規模修繕工事と違い、経験済みで迎える2回目の工事は楽になるかと思いきや、施工箇所が増えて1回目よりも大変になる場合が多いというのをご存知でしょうか。何回目かに関わらず大規模修繕工事で大切なのは、その時に合った修繕を行うことです。1回目の大規模修繕工事と2回目の大規模修繕工事では一体何が異なるのでしょうか。2回目の大規模修繕工事で気を付けたいポイントとともに見てみましょう。

1回目の大規模修繕工事となにがちがう?


1回目の大規模修繕工事を終えた後、10年ほど経ったあたりで2回目の大規模修繕工事に向けて長期修繕計画の確認や準備、検討などを始められる管理組合が多いのではないでしょうか。初めての大規模修繕工事から修繕委員も理事も変わってしまっていることがほとんどかと思いますが、1回目の大規模修繕工事の修繕委員や理事から当時の情報をもらうことができたりすると、1回目と同じような工事をイメージしがちです。しかし、1回目の大規模修繕工事時よりも築年数が経っている2回目の大規模修繕工事では、修繕が必要な箇所や施工内容も増え、その分工事金額も大きくなりますので修繕積立金のやりくりや、優先すべき施工箇所の選定など1回目の大規模修繕工事時よりも考えることが多くなるのが実情です。

長期的な大規模修繕工事の見通しを立てるためにある長期修繕計画書も、建物の立地環境などによって劣化状況は変わってきますので、長期修繕計画を一度も確認していなかった場合には、必要な修繕箇所や金額に大きな誤差が発生している可能性も。長期修繕計画書の想定よりも劣化していなければ問題ありませんが、逆に想定以上に劣化が進んでいた場合、修繕積立金が不足する可能性があります。多少の不足であれば施工範囲の絞り込みでやりくりすることもできますが、著しく不足していた場合には金融機関での借り入れや、一時金の集金といった対応も必要となりますので、2回目の大規模修繕工事では早めに専門委員会を立ち上げて検討を行うようにしましょう。

2回目の大規模修繕工事の工事内容


1回目の大規模修繕工事よりも2回目の大規模修繕工事は施工箇所が増えるということを前述しましたが、具体的にはどのような部分が増えるのでしょうか。ここで見るべきなのが、長期修繕計画書の中にあるです。この項目では共用内部、屋上といった共用部ごとにどのような工事を何年目で行う必要があるのかの目安が書いてあり、何回目の大規模修繕工事でどのくらいの金額が必要になるかの目安となります。国土交通省の作成している長期修繕計画標準様式の記載例によると1回目の大規模修繕工事から工事内容の変更や、新たな施工対象箇所となるのは下記のような場所です。

屋上防水
1回目の大規模修繕工事では部分的な補修で済んでいた屋上防水も、塗膜防水やシート防水など全体的な修繕が必要となります。また、屋根などは既存の屋根材をすべて撤去してから新しい屋根材で施工を行う必要があるため、部分補修と比べて費用がかなり上がってしまいますので、屋上が広い多棟タイプやルーフバルコニーが多い造りのマンションではその分金額が上がることを考えておきましょう。

金物類
普段使用している集合郵便受けや、バルコニーにある各部屋を仕切る隔て板、掲示板なども20年以上経った2回目の大規模修繕工事時にはサビたり故障したりするため、取り替える必要がでてきます。普段使用する場所のため、故障する前に取り替えておくのがいいかもしれません。

貯水槽
普段目にする機会はあまりありませんが、集合住宅のように大量の水を消費する場所では安定的に水を供給するための。各戸に直接水道局から水を送るのではなく、一度受水槽に水を溜めて各戸に水を送ることで安定的に水を供給できるという仕組みのものです。貯水槽が劣化すると中の水の水質に悪影響を与えたり、供給量が安定しなかったりと生活に直結する不便がでてきますので、25年程度で取替を行う必要があります。

消防用設備
火事の時に必要な消火栓ポンプや火災報知器、送水口などの消防用設備は定期的に点検を行いますが、点検を行っていても劣化して使えなくなってしまっては意味がありません。非常時に使えなくならないように、20年~25年で取替を行いましょう。

機械式駐車場
世帯数の多いマンションや都心部では機械式駐車場が多くなりますが、この機械式駐車場も20年を過ぎると動きが悪くなって使えなくなったり、サビている場所が多くなってきます。状態によってはサビた場所の補修で済む場合もありますが、動かない場所が増えるなど安全面での不安がある場合には交換が必要となってきますし、空きが多くなってきていた場合にはメンテナンスの多い機械式から、メンテナンスの簡単な平置きの駐車場に変更するということも検討が必要です。

外構(駐車場・排水溝等)
機械式駐車場だけではなく平置きの駐車場や排水溝なども時間の経過とともにヒビが入ったり、段差ができたりといった劣化が起こります。段差があると駐車がしにくくなるため段差が出てきた部分の補修を行ったり、薄くなった白線を引きなおしたりといった補修が必要となります。

付属施設(自転車置き場・ごみ集積所)
毎日のように使う自転車置き場やごみ集積所なども、2回目の大規模修繕工事の頃にはサビたり汚れたりして劣化してきています。居住者ほとんどの人が使う場所だからこそ、補修や交換を行ってきれいに保ちましょう。

2回目の大規模修繕工事に向けて気を付けておきたいこと


2回目の大規模修繕工事では、1回目の大規模修繕工事よりも検討する項目が多くなることはわかりましたが、2回目の大規模修繕工事に向けてどのようなことに気をつけておけば良いのでしょうか。

1回目の大規模修繕工事は2回目の大規模修繕工事を見据えて計画をたてる
まだ1回目の大規模修繕工事を検討しはじめて間もない、または1回目の大規模修繕工事を行っていない段階であれば、2回目の大規模修繕工事の方が大規模なものになることを想定して工事内容を選定しましょう。1回目の大規模修繕工事の場合にはそれほど劣化が進んでおらず、軽微な補修で済む場合も多くあります。改修する箇所をのぞき、修繕では不必要にグレードの高い工事にしたりせず、あくまでも劣化した部分を補修するだけに留め、2回目の大規模修繕工事にしっかりとお金を残せるように計画を立てられている管理組合もあります。各管理組合で自分たちに合った大規模修繕計画を立てましょう。

劣化具合を確かめて優先順位をつける
2回目の大規模修繕工事では前述したとおり工事項目が多くなるため、すべての項目にお金をかけていると修繕積立金が不足してしまいがち。1回目の大規模修繕工事と同じく劣化の著しい箇所と劣化が進んでない場所を調査で見極めて、施工箇所や工事内容の優先順位を決めましょう。3回目の大規模修繕工事ではさらに補修・交換する場所が増えますので3回目も見据えた計画を考える必要があります。

設備の不要・必要を見極める
20年以上経過してから行う2回目の大規模修繕工事時には、新築時に親子で暮らしていた世帯も子どもが独り立ちして夫婦二人暮らしの世帯も増えてきます。そうなると、自転車で移動する人数が減って自転車置き場に空きができたり、車を手放して駐車場に空きができたりと新築時には必要だった設備が不要になるケースも。補修や交換が必要なほど劣化している設備については現時点で必要かどうかも検討して、不要な設備についてはメンテナンスコストがかからないようにするのも一つの手です。

つい1回目の大規模修繕工事と同じように考えてしまいがちな2回目の大規模修繕工事ですが、内容が増えたり居住者の家族構成が変わったりと居住者の住環境が大きな変化を迎える時期の工事でもあります。住み心地だけでなく、修繕積立金などの資金面も含めて長く快適に暮らせる住まいとなるよう、早めから検討を行っておきましょう。

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