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シーリングとは? 住宅に存在するありとあらゆる隙間を埋める防水工事において必要不可欠なもの

2019.03.05


修繕工事を行う中で、多くある質問の1つに「シーリング工事とは何か?」ということがあります。一般的には「シーリング」では無く、「コーキング」と呼ばれることが多いと思います。シーリングとコーキングは同意語と使用されることが多いですが、はっきりした定義の違いはありません。しかし建築業界では、おおよそ「外壁の目地やサッシまわりに、止水や緩衝(クッション)の目的のために埋め込むゴム」をシーリングと呼び、「内装や建具や家具等のすき間を埋める地材」をコーキングと呼び分けています。
今回は建物にとって大切な工事である「シーリング工事」についてご紹介します。

シーリングの目的


まずは写真でタイルの色が異なる部分の境目の隙間を確認してみてください。同じ色のタイル同士の境目よりも隙間が大きくなっているのが確認できると思います。この部分がタイル同士の「目地(めじ)」と呼ばれるもので、主な役割は部材同士がぶつかり合うことを防ぐことです。建物を構成するコンクリートなどの部材は、例えば電車のレールのように、冬季期間は寒さにより縮み、夏季期間は暑さにより膨張します。もし隙間を設けずにタイルを設置すると、夏季では圧迫された部材同士がぶつかりあってしまい、ひび割れや欠けなどの原因ともなります。それを避けるためにわざと「隙間=適度なゆとり」を設けているのがこの目地となります。縮みや膨張のみでなく、台風や地震の際にも風圧によるしなりや地震による振動による負荷を分散させる役割も持ちます。
隙間は雨風を通すため、防水だけを考えると隙間は無くしたほうが良いのですが、前述のように目地としての役割を保ったままで水密性および気密性を確保するために必要とされているのがシーリング工事となります。

シーリングの種類

シーリングにはいろいろな種類がありますが、修繕工事で使用されるシーリング材は、大きく分けて4種類になります。
外壁がタイルのマンションで最も使用されているシーリング材が、「変成シリコーン系」になります。外壁まわりの全般に使用されますが、特にまわりの動きに合わせる機能に優れるため、動きの大きいサッシ等の金属のまわりに使用されます。
また、タイルとタイルとの間の「目地」と呼ばれる部位には、「ポリサルファイド系」が使用されることがあります。「ポリサルファイド系」は接着性に優れるというメリットがありますが、「変成シリコーン系」と「ポリサルファイド系」を使い分けることが大変なため、タイル目地とサッシまわりの両方に「変成シリコーン系」が使用されることが多くあります。
以上の2種類が「露出」と呼ばれる塗装が被らないシーリングですが、外壁が塗装仕上げの場合、「ポリウレタン系」を使用し、シーリングの上に塗装を被せます。「ポリウレタン系」は、シーリング表面の付着性が良く、完全にシーリングが硬化した後も、手で触ると表面がベタベタしています。最後にごく一部ですが、ガラスのまわりに、「シリコーン系」を使用します。他の3種類に比べ耐候性、耐熱性、耐久性に優れますが、施工箇所の周辺に撥水汚染が発生することがあります。

シーリング工事のポイント

1.既存シーリングの完全撤去
通常はカッターで切れ目を入れ、ペンチを使用して引っ張れば既存のシーリングは撤去が出来ます。しかし、既存のシーリングが硬化不良により固まっていなかったり、逆に古い建物では材質が油性のものを使用していて、ガチガチに固まっていたりして、簡単に撤去することができない場合もあります。

2.プライマーの選定
プライマーとはシーリングを充填する前に塗る「接着剤」になります。雨上がり後、下地が濡れている状態ではしっかりした性能を発揮できず、剥離や漏水の危険性がありますので乾いてから施工することが必要です。また下地がコンクリートなのか、金属なのか、シーリング材が変成シリコーンなのか、ウレタンなのかによりプライマーの種類が異なります。当然、仕様と間違ったプライマーを使用すると、剥離の原因となりますのでシーリングの種類にあったプライマーを使用します。

3.シーリング材の攪拌
シーリング材は一成分形のものと二成分形のものがあります。通常の仕様では主剤と硬化剤の二液を混合して使用する二成分形のシーリング材を使用します。少量であったり、施工性を考慮する箇所の場合、一部一成分形のカートリッジタイプを使用します。二成分形シーリング材の攪拌は、タイマーがセットされた電動撹拌機が用いられます。適正な攪拌時間を守らないと硬化不良が発生します。

シーリング工事の検査の種類

1.ダンベル試験
この試験は、主に既存のシーリングの状態を確認するために行います。現状のシーリングを撤去し、「ダンベル状」にカットし、シーリングの物性(伸び等)を調べます。通常12~13年で行われる大規模修繕工事でシーリングの打ち替えを行いますが、この試験結果が良好な場合、打ち替えを行わない場合もあります。

2.抜き取り試験
シーリング打ち替え後、既存のシーリングがしっかり撤去されているかを確認するために、打ち替えたシーリングをカッターで切り取り、撤去したシーリングの断面と撤去した目地の状態を確認して、新規のシーリングがしっかり打ち込まれているかを確認します。

3.簡易引張試験
抜き取り試験といっしょに行うこともありますが、シーリング打ち替え後(14日目以降)、シーリングが適正な接着性と伸びを持っているかを確認します。シーリングを幅10mm、長さ100mmにカッターで切れ目を入れ、10mmごとにマーキングして引っ張ります。材質によって基準が異なりますが、あるメーカーでは、変成シリコーン、ポリサルファイド系で伸ばす前と比較して伸び率200%、ウレタンで150%が合格となります。

シーリングの寿命


シーリングの寿命は、使用環境によっても異なりますが5年~10年を過ぎるとひび割れる現象が起きるといわれています。こちらの写真は、とあるマンションのタイル目地のシーリング部分です。痩せ始めたシーリングを放っておくと劣化がさらに進み、ひび割れてきます。さらに放っておくとシーリング材周辺の壁面のひび割れ、室内への漏水、建物基礎の腐食を招いて、家の寿命を縮めてしまうことになります。

まとめ

日頃から目につかない、注意して見ることもない隙間に詰められたシーリングは、実は寿命が近い状態にあるかもしれません。特に劣化が顕著に表れやすいのが外壁部分のシーリングとなります。外壁材の隙間、窓と外壁の継ぎ目などをふとした時にセルフチェックしてみてはいかがでしょうか。
マンションにお住まいの方であっても修繕委員会や理事会の方に任せっきりにするのではなく、共用部分についても「わたしの家」であるという意識を持って、より安全・安心して快適に過ごすことのできる環境を保っていきましょう。

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