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買えば終わりは大間違い! 本当は怖いマンションの管理不全問題って知ってる?

2018.04.09

マンションを購入された方、これから購入を検討されている方は、最近深刻化しているマンション管理不全問題をご存知でしょうか。自分ですべてを管理しなければならない一戸建てと違い、集合住宅ではなんとなく管理費や修繕積立金を納めていれば大丈夫という心理が働きがちですが、管理費や修繕積立金は管理のためのお金であってその運営はマンションの管理組合(つまり、居住者)で行うことが必要なのです。マンション管理不全問題は数日や数ヵ月といった短い期間ではなく、数年~数十年かけて徐々に進行していきます。そのため気が付いたときには事態が深刻化している……なんてことも少なくありません。あなたのマンションは大丈夫ですか?

マンション管理不全って?

マンション管理にあまり携わったことのない方だと「マンションの管理不全って具体的にどういう状況? 」と疑問に思う方も少なくないかと思います。実際のところマンションを購入するまでは間取り、お金の問題、入居後のライフスタイルなどについては熟考しても、その先数十年に渡るマンション管理のことまで、しっかりと考えて購入する人はそう多くはないでしょう。マンションの管理不全とは、管理組合がきちんと機能しておらず、マンションとしての資産価値や機能を損なってしまっている状態を指します。

普段の清掃や点検などの日常的な業務や、十数年に一度行われる大規模修繕工事およびそれらに必要な管理費・修繕積立金の管理などは、区分所有者の集まりである管理組合が行う事項なのですが、東京都の『マンション実態調査』によると、管理組合自体が存在しない分譲マンションがなんと約515棟(6.5%)存在するのです。調査用アンケートに未解答のマンションが80%を超えることから、その数は更に多いと思われますので、マンションの管理不全問題は決してヒトゴトではないと言えるのではないでしょうか。

マンションが管理不全に陥り、日常的な管理や大規模修繕工事が行われなくなると、建物が時間とともに劣化して見た目が悪くなり資産価値が下がるだけではなく、タイルの落下などの危険性もあります。管理費や修繕費がどの程度積み立てられ、どういう風に使われているかは、管理組合の総会で報告がされているかと思いますが、もし内容を思い出せない、もしくは報告自体がなされていないという場合は、管理不全予備軍かもしれません。

管理不全に陥ってしまいやすいマンションとは

管理組合が機能していない、管理組合がそもそも存在しないなど、マンションの管理不全状態については前述しましたが、「管理組合はあるし、理事会もしっかりしているから、わたしのマンションは大丈夫! 」と思っている方も気をつけなければいけないのが、「管理不全はじわじわ進行していく」という点です。今は管理不全に陥っていなくとも、将来的に管理不全となってしまう可能性は十分にあります。では、管理不全に陥りやすいマンションとはどのようなマンションなのでしょうか。

・築年数が古い
管理不全に陥りやすいマンションの特徴としてまず挙げられるのが、築年数の古いマンションであるということです。マンションを購入される方は住宅ローンのこともあり30代の方が多くなりますが、仮に購入者の年齢平均が35歳だとすると30年後の平均年齢は65歳になります。健康寿命が延びてきているとはいえ、時間および体力面で組合の理事ができる余裕がある方はそう多くないでしょう。そして、新築時はマンションの資産価値を保とうという意識も働きますが、時が経つにつれ徐々に理事に立候補するような積極性が薄れて、理事のなり手が減ってしまうことも、管理不全に陥りやすい原因のひとつだと考えられます。
前述の調査アンケートの「日常的な管理の問題は?」という質問の回答では最も多かったのが「マンション管理に無関心な人が多い」となり、次いで多かったのが「理事のなり手がいない」という結果でした。どちらも築年数の古いマンションのほうが築年数の浅いマンションよりもその割合は大きくなることから、築年数が経つにつれ管理不全のリスクが高くなるということは否めないでしょう。


※画像は東京都『マンション実態調査結果』より引用

・空室・賃貸になっている部屋が多い
皆さんの住んでらっしゃるマンションには、マンションを購入した区分所有者が賃貸用に貸し出していたり、住んでおらず空室になっている部屋はありますか? 世帯数の多いマンションにお住まいの方は、そういった状況の部屋に心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

賃貸と空室では人がいるかいないかで大きな違いがありますが、この二つに共通して言えるのは、区分所有者が所有しているマンションに住んでいない状態であるということです。自分で住んでいれば建物の劣化や管理が行き届いているかを知る機会もありますが、賃貸として貸し出している物件は、他の人が住んでいる安心感からつい疎かになりがちです。区分所有者が遠方に住んでいる場合、毎年総会の委任状を書くだけで、マンションの管理については分からないという方がほとんどかもしれません。賃貸契約で住んでいる居住者はそのマンションの管理組合員にはなりませんので、賃貸が増えるということはそれだけ管理組合員がマンション内にいない状態になります。つまり賃貸や空室が多いマンションは、その部屋数だけ管理の人手がなく、管理不全に陥りやすくなるのです。

・修繕積立金の見直しが行われていない
管理組合が機能していて1回目の大規模修繕工事も行ったけれど、修繕積立金の見直しが一度もされていないマンションも危険な状態と言えるでしょう。管理費があれば日常管理は管理会社に委託できますので、見た目もきれいに保つことができるため、あまり問題がある状態には見えません。しかし、2~3回目の大規模修繕工事の時期になると、時間の経過とともに修繕工事を行わなければならない箇所が増え、その分工事金額も上がることが多くなります。当初設定されている修繕積立金は、あくまでも目安金額だったり、大規模修繕工事の際に一時金を集めることが前提の金額だったりするケースもありますので、先々の大規模修繕工事でいくら必要なのかを定期的に見直し、大規模修繕の際に一時金を管理組合員が全員本当に払えるのか、払えないとすれば月々いくらにすれば足りるのかを調整する必要があるのです。

大規模修繕工事の時期になっても修繕積立金が足りず工事が行えないと、劣化が進行しさらに工事費がかさむ……という悪循環を生んでしまいます。特に3回目以降の大規模修繕工事の時期には大きな設備の劣化も進んでいるため、劣化の影響が生活に出てくる可能性も。資産価値を守るだけでなく、住戸としての機能を守るためにも適切な時期に大規模修繕工事が行える状態を作るというのは管理の上で必須条件なのです。

管理不全に陥らないためには

今回ご紹介した管理不全に陥りやすいマンションの特徴の中に、あなたにも心当たりがある内容があったのではないでしょうか。しかし、築年数が経つことも他の区分所有者が賃貸として活用することも、個人で止めることは難しいですよね。では、管理不全に陥らないためにはどうしたらいいのでしょうか。

・管理規約に基づき管理組合を機能させる
マンション管理において区分所有者の集まりである管理組合がない、もしくは機能していない場合は致命的です。マンションの管理に関わるものはすべて理事会で検討を行い、検討事項によっては総会で決議を行う必要もあるので、管理組合が機能していないとマンション管理は行えません。

管理組合は管理規約に基づいて活動を行うのが基本ですが、管理規約がない場合には、国土交通省の『標準管理規約』を読むと管理組合の役割について記述がありますので、是非参考にしてみてください。『標準管理規約』の他にもマンションの長期的な修繕計画書の作り方が載っている、『長期修繕計画作成ガイドライン』などもありますので、困ったときには国土交通省のページを参考にすることをおすすめします。

・専門家に頼る
これはマンション管理だけに限ったことではないですが、マンションの管理状態に不安を感じた場合には、手を付けられなくなるほど状況が悪化する前に専門家に頼ることも大切です。マンション管理の専門家といってもピンと来ないかもしれませんが、マンション管理士というマンション管理の専門資格があり、国土交通省指定の相談センターもありますので、まずは相談してみましょう。継続的な管理に不安があればマンション管理士と契約を結んで、継続的にサポートしてもらうのもひとつの手です。

管理不全を予防しよう

だんだんと増えていくことが予想される管理不全のマンション、あなたのマンションがいつそうなってもおかしくはありません。じわじわと進行する管理不全は、気づいたときには既に莫大なお金がかかる事態になってしまい、手の施しようがなくなってしまうことが、大きな問題点です。マンション管理は1日にして成らず、管理不全にならないためには予防することがそのまま対策となります。毎回の総会の出席はもちろんのこと、理事会へ積極的に参加をして状況をしっかりと把握することが、あなたのマンションを管理不全から守る最善の手段と言えるのです。

参考文献
東京都マンション実態調査結果
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/mansion-tokyo/shisaku/01data-jittaichousa.html

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