住まいの今と未来をつたえる

暮らし

外壁タイルの剥離問題

2017.12.26

最近、外壁がタイル張りマンションの大規模修繕工事で、「壁一面のタイルが浮いている」といった状況を良く聞かれることがあります。その原因と対策についてまとめました。

1.タイル下地(モルタル下地)について

築年数の古いマンションは、基礎コンクリートの精度がすぐれていないということもあり、その多くは20~30mm程度のモルタル(水・セメント・砂を混ぜたもの)を左官工事※にて、躯体コンクリートの上に塗ることにより、平滑な「タイル下地」をつくっています。
タイル浮き調査の打診調査で「コロコロ」と鈍く低い音がした場合、躯体コンクリートとこのモルタルの層の間で浮きが生じています。上の写真でグレーの箇所がモルタルで、白い箇所が躯体コンクリートになります。
※モルタルなどをコテで塗る工事のこと

2.タイル下地(躯体コンクリート下地)について

建物の新築工事では、今世紀に入った頃から、躯体コンクリートの傾きや段差の精度を良くして、左官による下地補修を極力少なくするようになりました。そのため、補修の必要がない非常にきれいな躯体コンクリート面に、直接タイルを張ることによってモルタルによる左官補修の必要がなくなり、左官補修の材料・手間の削減、工期の短縮につながりました。このようなタイルの浮きは、打診を行うと「カラカラ」という比較的高い、乾いたような音がします。

モルタル下地がない壁は、右下の写真からも分かるように、白い部分の全面が躯体コンクリートで、タイルと躯体コンクリートの間には、タイルを張るための薄い圧着セメントしかありません。

3.タイルの剥離問題について

タイルの剥離原因については、下記の原因が挙げられます。

4.タイルの圧着不足について

タイルの裏面は「裏足」と呼ばれ、凹凸した形状になっています。これは圧着セメントとタイルを喰いつきやすくし、タイルの剥離を防止してくれます。しかし写真のタイルの裏足の様に、圧着セメントが完全に充填されていないと空隙が出来てしまいタイル剥離の原因の1つになります。

5.コンクリート型枠について

新築工事ではコンクリートを流し込むために、木製や金属製の型枠を使用します。その種類は右写真のように、コンパネ(コンクリートパネル)と呼ばれる合板(薄く切った単板を90°方向に重ね合わせたもの)や、打ち放し用に使用されるパネコート(コンパネにアクリル系樹脂を塗布したもの)等を使用します。特にパネコートを使用した場合、コンクリート表面が「ツルツル」に仕上がるため、タイルや塗装の付着性が低くなってしまいます。タイルの浮きが多く発生しているマンションでは、タイルが剥がれた箇所の躯体コンクリートの表面は、「ツルツル」の仕上がりの場合が多くなっています。

また、これらの型枠を剥がしやすくするために、型枠表面に塗っている剥離剤もタイル剥離の原因に拍車を掛けていると考えられます。

6.補修方法について

部分的なタイルの浮きの場合は、対象箇所に穴をあけエポキシ樹脂とステンレスピンを入れ補修を行うピンニング工法で補修することが可能ですが、タイルが広範囲に浮いている場合は、一度全部のタイルを剥がさなければなりません。右写真のように、躯体コンクリートをディスクサンダー※や超高圧水で目荒らしを行い、タイルの圧着セメントを付着しやすくする工法があります。最近の圧着セメントは改良され、付着強度が良くなっているので、上記の工法が必ず必要という訳ではありませんが、発注者・施工者・監理者で現場の形状や下地の状況、予算等を検討して、工法の選定を行いましょう。

また、最近の新築マンションでは、このようなタイル剥離が起きないように、躯体コンクリート下地に最初から凹凸を付けている場合もあり、タイルの剥離問題を改善する方法が取られています。
※コンクリートなどの研削研磨に使用される電動工具

タグ TAG