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「大規模修繕工事は遠い先」の油断は危険!早めに知っておくべき長期修繕計画とは

2018.04.13

あなたはマンションの管理についてどのくらいご存知ですか? 「大規模修繕工事はまだ先だし、契約している管理会社が考えてくれるから大丈夫」と油断している人は、少し甘いかもしれません! 大規模修繕工事は事前の準備がとっても大事なのです。事前準備次第では大規模修繕工事ができなくなってしまうことも……そんな大事な事前準備に必須となる『長期修繕計画』について解説していきます。

長期修繕計画って?

長期修繕計画とは、その名前の通りマンションの長期的な修繕工事の計画のことで、長期修繕計画書にはどのタイミングでどのような工事を行うかが明記され、修繕積立金の額もこの計画書をもとに設定します。長期修繕計画書には管理組合の運営の上で、下記のようなメリットがあるのです。

・どのタイミングでどこの修繕工事を行う必要があるかが分かる
長期修繕計画には設備や場所ごとに、どのような修繕工事を行うかが記載されています。例えば、配管などの設備に関しては数年に一度塗りなおさなければなりませんが、現在築30年を過ぎた建物の場合には、それくらいの時期に塗りなおしだけではなく交換が必要となってきます。また、壁の塗装もある程度塗り重ねたところで塗膜をはがして塗りなおすことが必要です。一口に補修を行うにしてもその内容は時期によって異なりますので、いつどのような修繕工事を行う必要があるか明確にすることで、計画的に工事を行うことができるようになります。各箇所の耐用年数や補修年数に関してはマンション管理センターの長期修繕計画サンプルに詳細が記載されていますので、長期修繕計画を見直しされる場合にはぜひご覧になってください。
マンション管理センター長期修繕計画書サンプル
http://www.mankan.or.jp/07_skillsupport/pdf/shuzen-sample2.pdf


・必要な修繕積立金の見込みがたてられる
大規模修繕工事には多額のお金がかかりますので、大規模修繕工事の際に一度に集めるのではなく、一般的には管理費とともに定期的に修繕積立金を集めます。この修繕積立金は入居の段階で徴収される額が決まっていることが多いですが、その金額が適正でなければ大規模修繕工事の際に資金が足りない! ということになりかねません。大規模修繕工事も建物が古くなるにつれ金額が大きくなっていきますので、毎月の修繕積立金も大規模修繕工事のタイミングごとに見直して増額していく方法のほか、早い段階から増額しておくことで将来の負担を軽減させる方法もあります。つまり、長期修繕計画は修繕積立金計画でもあるのです。

・事前に修繕方法などを計画することでスムーズに修繕工事が行える
大規模修繕工事の時期が近づき工事に向けて準備を始めると、修繕委員会の立ち上げや工事前の建物調査依頼など、その忙しさに驚かれる方も多いと言われています。大規模修繕工事は「大規模」とつくだけあって、施工箇所も多く金額も大きいため、その分慎重に判断しなければならないことが山ほどあります。
また、何かを決めるにも修繕委員会や理事会で検討することが必要になります。そのような会の開催の日に合わせて調査をしたり、予定の会議までに準備が間に合わなかった場合などは、臨時の修繕委員会や理事会を開く手配をしたりといった準備も意外と大変です…。特に工事内容といった重要な検討事項がいくつも重なってしまうと、すべての決議事項についてきちんと話し合い、承認を得るまでに時間がかかります。無計画の状態から始めようと思ってもこれでは工事がなかなか行えなくなってしまいますね。こういった大きな決め事をできるだけ事前に理事会で検討したり、総会で承認を得ておくことで、工事直前の負担を減らしスムーズに工事を行えるようにするためにも長期修繕計画が大事なのです。

長期修繕計画の見直し

長期修繕計画書のメリットについては前述しましたが、このメリットはあくまでも長期修繕計画が正しい情報であることが大前提になります。長期修繕計画書はあればいいのではなく、状況にあわせて見直していく必要があるのです。国土交通省のガイドラインでは5年に1度の見直しが勧められていますが、見直すことによってどのようなメリットがあるのでしょうか。

・建物の状態に合わせた、適切な時期に適切な修繕を行うことができる
新築時の長期修繕計画は新築の時点で予想される、適切な修繕方法や修繕時期を基に作成されているため、あくまでも目安として捉えなければなりません。なぜならば、全く同じ建物だったとしても立地条件によって劣化状況は異なるためです。例えば海沿いの建物であれば潮風による塩害で劣化しやすくなりますし、日陰・日向でも劣化の具合は変わります。適切な時期に修繕を行わないと、もう1年早く塗装していればあと10年は持った配管を取り替えなければならなくなったり、まだ塗装で済む補修箇所を交換してしまい無駄に修繕積立金を使ってしまったり、といった状況に繋がってしまうことがあります。

・材料性能の進歩により適正な修繕期間も変わってくる
IT技術の発展などと違いニュースに取り上げられることはあまりありませんが、実は建設業界の技術も日々進歩しています。計画の見直し時に、最新の技術や塗料などを取り入れることで、技術や材料の進歩によって補修後の修繕周期が伸びたり、工程が減ったりすることで工期が短くなる効果が期待できます。

・適正な修繕積立金の額が分かる
修繕積立金の大切さについては前述した通りですが、見直しによって修繕内容の計画が変わると、当然修繕積立金の金額も変わります。長期修繕計画の見直しの結果、修繕積立金が今のままで良いのか、それとも増額が必要なのかに加え、これ以上の増額が難しそうであれば、管理費で節約できるところはないか検討が必要になる場合もあります。適正な修繕積立金の金額が分かるということは、結果的に管理組合全体の財政負担を減らすことにもつながりますので、定期的に見直すことが必要です。

事前準備で変わる大規模修繕

すべて家庭内で決めていい一戸建ての修繕工事と違い、さまざまな人が住んでいるマンションで大規模修繕工事を行うのはとても大変です。そのため、事前準備がとても大事になります。事前にできるところは事前におこない、直前の作業量や検討事項を減らしておくことがトラブルを防ぐ手段となりますので、先延ばしにするのではなく少しでも早く大規模修繕工事に向けて長期修繕計画に取り組みましょう。
大規模修繕工事はマンションの居住性だけではなく、資産価値にも直結しますので長期修繕計画を正しく利用して納得のいく大規模修繕工事を行いましょう。

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