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火災保険の値上げ幅は食料品より大きい!?消費者物価指数から比較する”食料品”と”火災保険”の値上げ幅

2024.05.01

近年、私たちの生活にかかせない食料品が値上げ傾向にあります。2021年頃から始まった“値上げラッシュ”を受けて、実際にどの分野・品目がどれくらい値上げされたのか。ソニー損保損害保険株式会社が消費者物価指数をもとに振り返りました。

指数上昇率が大きかった食料分野のなかで最も値上げ幅が大きかったのは「魚介類」。なんと2020年比で+25.7%であることが判明しました。同様に、値上げが続く火災保険の参考純率の引き上げ幅は2020年比で+25.3%でした。これは魚介類の値上げ幅と同水準であり、火災保険の参考純率が食料品の多くの品目を超える引き上げ幅であることがわかりました。

ここからは、値上げ幅が大きかった食料品TOP10と、火災保険の参考純率の引き上げ幅を比較したインフォグラフィックをもとに、値上げの主な原因を振り返ってみましょう。

2020年と比較して最も値上げ幅が大きかった食料品は?TOP10を公開!


総務省統計局が2024年1月19日に発表した「2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)平均」(※1)によると、2023年の消費者物価指数(2020年を100とした場合)の総合指数は、値上げラッシュ開始前と比較して年間平均105.6と、5.0%以上の値上げ幅となっています。前年と比較しても3.2%と大きな値上げ(指数上昇)幅になった要因は、原材料価格の高騰に円安の影響が重なり、食料品の値上げが相次いだことが考えられます。

10大費目(食料/住居/光熱・水道/家具・家事用品/被服及び履物/保健医療/交通・通信/教育/教養娯楽/諸雑費)のうち、最も上昇したのは前年比8.1%増の「食料」でした。ここでは、家計に最も密接な「食料」の費目から、実際に値上げした分野や品目、その要因について見てみましょう。

「食料」の項目のうち、どの分野の値上げ幅が大きかったのか、22023年12月の指数(2020年を100とした場合)をもとにしたランキングがあります。それによると、上位から、1位「魚介類(125.7)」、2位「乳卵類(122.3)」、3位「菓子類(120.0)」、4位「油脂・調味料(117.5)」、5位「調理食品(116.6)」という結果になっています。

1位 魚介類(+25.7%)


「魚介類」の主な品目の中には、まぐろなどの魚類に加えて牡蠣やほたて貝などの貝類、かつお節や缶詰などの加工食品も含まれます。農林水産省は、近年不漁が続くサンマやスルメイカは価格が上昇傾向にあると発表(※2)しています。サンマは、2010年頃を境に漁獲量が減少しています。地球温暖化によって海洋環境が変化し、サンマが東の沖合に移動したことによる漁獲量減少が原因であると調査(※3)から判明しており、それが値上げ幅の増大につながっています。


※2 農林水産省「令和4年度 水産白書 全文 第2章 我が国の水産業をめぐる動き」
https://www.jfa.maff.go.jp/j/kikaku/wpaper/R4/attach/pdf/230602-7.pdf
※3 国立研究開発法人 水産研究・教育機構「サンマの不漁要因解明について(調査・研究の進捗)令和5年4月」
https://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr2023/20230407_col/20230407col_press.pdf

2位 乳卵類(+22.3%)


「乳卵類」の主な品目は、牛乳、ヨーグルト、バター、チーズなどです。乳卵類に含まれる鶏卵の小売価格は、30ヵ月連続で前年同月を上回っています(※4)(2023年10月時点)。以前は“物価の優等生”と呼ばれるほど、価格変動が起こりにくいとされていた食品でしたが、近年の養鶏飼料の高騰により値上げが続いています(※5)。

養鶏飼料の多くは海外輸入に依存しています。 円安や海外情勢などの影響を受けて輸入価格が引き上げられ、養鶏飼料の値上げにつながり、それらが鶏卵価格に反映されています。また、鶏卵の選別やパック詰めに使う機械を動かすための電気代や燃料代などのエネルギー価格の上昇も一因となっています。

※4 独立行政法人 農畜産業振興機構「畜産の情報鶏卵卸売価格、3カ月連続で200円台で推移」
https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_002996.html
※5 農林水産省「フェアプライスプロジェクト 2023年8月18日生産者インタビュー動画(卵)を公開しました。」
https://www.maff.go.jp/j/shokusan/fair-price-project/category/egg/

3位 菓子類(+20.0%)


「菓子類」の主な品目は、ようかん、ケーキ、プリン、ポテトチップス、チョコレート、アイスクリーム、チューインガムなどです。                     値上げの要因として、菓子類の主な原材料である砂糖の価格高騰があげられます。砂糖の原料となる高糖度原料糖などは主にオーストラリアから輸入しています。2023年5月におけるオーストラリアからの高糖度原料糖の1トン当たりの輸入価格は、9万2,101円となっており、前年同月比で29.1%も上昇しています(※6)。

原材料価格の上昇に加えて、包装資材や物流費の上昇も値上げの一因となっています。また、2024年の傾向として、内容量の減少による価格維持ではなく、本体価格を引き上げる値上げが多くみられるとされています。

※6 独立行政法人 農畜産業振興機構「砂糖類の国内需給」
https://www.alic.go.jp/content/001230125.pdf

4位 油脂・調味料(+17.5%)


「油脂・調味料」の主な品目は、食用油、マーガリン、食塩、しょう油、みそ、砂糖、ケチャップ、マヨネーズ、カレールウ、乾燥スープ、ふりかけ、パスタソースなどです。

帝国データバンクの調査によると(※7)、 調味料は、2022年は5,953品目、2023年は8,052品目の商品の値上げが実施されました。要因として、物流費の高騰やエネルギーコストの上昇、食用油価格の高騰が価格に大きな影響を及ぼしていると考えられます。

※7 帝国データバンク「食品主要 195 社 価格改定動向調査」
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231215.pd

5位 調理食品(+16.6%)


「調理食品」は、弁当、おにぎり、調理パン、冷凍米飯などの調理された食品全般を指しています。
前述の「魚介類」「乳卵類」などの原材料価格の高騰、包装資材や物流費、エネルギー価格の上昇など複合的な要因が、値上げにつながったと推察されます。エネルギー価格に注目すると、2021年から上昇傾向にありましたが、 2022年に世界規模で高騰したことにより、 世界各地の天然ガス市場は過去最高値を記録しました(※8)。また、日本は一次エネルギー自給率が低く海外に依存しているため、エネルギーの輸入コストも値上げ要因のひとつになっていることがうかがえます。

※8 経済産業省 エネルギー庁「第1節 世界的なエネルギーの需給ひっ迫と資源燃料価格の高騰」https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/1-2-1.html

6位〜10位の分野ランキングと主な品目


6位 果物(+15.9%)…りんご、みかん、梨、ぶどう、柿、桃、すいか、メロン、いちご、バナナなど
7位 穀類(+15.3%) …うるち米、食パン、ゆでうどん、そうめん、カップ麺、小麦粉、もち、シリアルなど
8位 肉類(+13.5%) …牛肉、豚肉、鶏肉、ハム、ソーセージ、ベーコン、味付け肉など
9位 飲料(+12.6%) …緑茶、コーヒー豆、果実ジュース、ノンアルコールビール、ミネラルウォーターなど
10位 野菜・海藻(+10.9%) …キャベツ、ねぎ、トマト、わかめ、納豆、こんにゃく、野菜缶詰など

消費者物価指数をもとに紹介した食料をはじめ、さまざまな品目の物価が値上げしているなか、火災保険も近年値上げが続いています。火災保険の値上げの主な要因は、気候変動に伴う自然災害の増加です。豪雨や台風等の自然災害による被害の増加に伴い、保険金の支払いが近年急激に増加していることから、火災保険料の基準となる参考純率(※9)の引き上げが続いています。

2020年の参考純率を100とした場合、直近の引き上げ幅を計算すると、2021年には全国平均+10.9%となる参考純率の改定が行われています。さらに、2023年6月には2014年以降最大となる全国平均+13.0%の参考純率の改定についての届出が、損害保険料算出機構から金融庁に行われました(※10)。この2つの料率改定をあわせると、火災保険の参考純率の引き上げ幅は2020年と比較して+25.3%となります。食品の値上げ幅第1位の魚介類(+25.7%)に迫る水準であり、そのほかの食品の値上げ水準を超える幅になっていることがわかります。

※9 参考純率とは、火災保険料を決める際に損保各社が参考にする基準値であり、損害保険料算出機構が制定しています。
※10 損害保険料算出機構「火災保険参考純率改定のご案内」
https://www.giroj.or.jp/ratemaking/fire/202306_announcement.html

この改定は、2024年度を目処に各社の火災保険料に順次反映される見込みです。加えて、今回の改定では、洪水や土砂災害といった水災リスクに対応する水災料率が市区町村の水災リスクに応じて細分化されています。

これを機に、火災保険の補償範囲や、居住エリアのハザードマップを確認して水災リスクを把握し、補償内容について適切な選択や見直しをしてみてはいかがでしょうか。

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