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住まいのリフォーム用語集

建築基準法とは?

建築基準法と聞くと建築関係の職業の方でない限り、耳にしたことはあるけれどあまり耳なじみがない言葉なのではないでしょうか。法律関係の仕事でもないし、ましてや建築基準法なんてわからない! という方も多いとは思いますが、実は建築基準法は普通に生活をしているだけで関わっているものなんです。今回はそんな建築基準法について、詳しくご説明いたします。

 

建築基準法の役割

建築関係の法律も細かいところまで見るとかなりの数がありますが、それぞれの法律には異なった役割があり、建築基準法には「建物の最低基準を定める」という役割があります。ほかの住宅関連や建築関連の法律は、建築基準法では定められていない詳細部をサポートするものであり、建築基準法は建築関係全般のベースとなる大事な法律なのです。関係性としては以下のような形です。

 

建築物関連の法律
建築物関連の法律を目的と段階別にまとめた表

建築基準法で定めている項目について

前述したように設計段階から維持管理の段階まで、幅広く住宅関連の法律の基盤となっている建築基準法ですが、主に以下の12項目について定めている法律です。

 

1.建築使用までの手続き

この項目は、着工前から建物として使用するまでの間の事項について定めています。設計図書などで建築基準が守られているか、着工後の仕様が適切であるかどうか、完成後の耐久度に問題がないかなどについての確認事項があり、さらに以下の3つの規定があります。

 

イ)単体規定

建物の安全を確保するための規定です。雨水の排水溝や耐震構造、火災時の避難経路が確保できているかなどについて定められています。

 

ロ)集団規定

周囲の環境や土地の利用についての規定です。火災時に消防車がしっかりと通れるスペースを確保しているか、土地の利用制限に沿った造りになっているかについて定められています。

 

ハ)建築基準関係規定

バリアフリー法や消防法、土地計画法等の一部の規定等のうち建築物の敷地、構造または建築設備に関わるものについて定められています。

 

 

2.建築工事と手続きの流れ

建築工事を行う際は3度の確認および検査があり、その流れについて定められている項目です。3度とは、建築主事という公務員または指定確認検査機関によって、着工前の建築計画の時点で行われる建築確認、着工後に建築基準法を守り建築されているか確認する中間検査、工事完了後に完成した建築物が法令の基準を満たしているかを確認する完了検査があります。

 

3.建築確認及び検査に関わる特例

建築工事の手続きである建築確認の特例について定められている項目です。建築工事を行う際には前述の3度の確認および検査をする決まりがありますが、2階建て以下の木造住宅等の小規模建築物については建築士が設計を行った場合、建築確認において構造耐力関係規定などの審査を省略することになっています。また、上記で審査を省略した建物については建築士である工事監理者が設計図どおりに施工されたことを確認した場合、構造耐力関係規定に関しての検査も省略することになっています。

 

4.建築確認および検査に関わる特例(型式適合認定・型式部材等製造者認証)

型式適合認定と型式部材等製造者認証について定められている項目です。型式適合認定とは建築物が構造耐力、防火避難など一連の規定と適合することをあらかじめ指定認定機関により認定してもらうことで、一連の規定の審査や検査が省略される。ただし、認定をうけた通りに作られているかの審査・検査は必要になります。

 

型式部材等製造者認証は型式適合認定を受けた上で、製造設備や検査設備等の生産体制が一定の基準に適合している場合に認証され、建築確認において一連の規定の審査上認証に関わる型式との照合が省略されます。また、建築士である工事監理者が設計図書どおりに施工されたことを確認した場合は、検査において認証に関わる型式との照合が省略される。

 

5.既存不適格建築物について

法令改正などによる規定変更時に、既存の建築物に対する対応について定められている項目です。新しい規定の施行時または都市計画変更などによる新たな規定の適用時に、その時点で存在する建築物で新しい規定に適合していないものに関しては適用を除外し、原則として増改築等を実施する機会に規定に適合させることになっています。

 

6.定期報告制度について

既存の建物について一定の建築物、建築設備について専門技術を有する資格者に調査・検査させ、その結果を特定行政庁へ報告することを義務付けている項目です。建築物については映画館やホテル、百貨店などの特殊建築物、設備についてはエレベーターや排煙設備が対象となっています。

 

7.違反建築物等に対する措置について

違反建築物や保安上危険な既存不適格建築物に対する措置について定められた項目です。違反建築物については建築物の所有者に対して、工事の施工停止命令、建築物の除去、修繕、使用制限などの違反是正措置命令を行うことができます。

 

また、特殊建築物や一定規模以上の事務所などの既存不適格建築物については、特定行政庁は建築物の所有者に対し、建築物の除却、修繕、使用制限等必要な措置をとることの勧告を行うことができ、そして勧告に関わる措置をとらない場合に勧告に関わる措置をとることの命令を行うことができます。

 

8.構造関係規定の構成

積雪、風圧、地震等による倒壊の防止のために、建築物の規模別に規定が定められている項目です。規模別分類で小規模な建築物とされている建築物、中規模・大規模な建築物、超高層建築物の3種類に分けられ、それぞれに仕様規定や構造計算が一部または全部適応されるようになっています。

 

9.防耐火・避難規定の構成

火災が発生した際の人命保護のため、設備等についての制限や設置を定められている項目です。おもに排煙設備や非常用進入口の設置、敷地内の防火制限が項目になっています。

 

10.一般構造・建築設備関係規定

建築設備関係規定では、その建築物で過ごす人たちの衛生環境と安全の確保を目的として環境整備について定められた項目です。基準内容は多岐にわたりますが、衛生面では採光や綺麗な空気や水を提供できる環境について規定されており、安全の確保では落雷などの天災についてや設備機器について規定されています。

 

11.都市計画区域における建築規制(集団規定)

建築物の用途や容積、建ぺい、高さなどについて地方公共団体が都市計画で定めた項目です。例えば京都市では地区計画の活用により道路斜線制限の緩和を行い、軒の連続性を確保したりということに使われています。

 

12.集団規定の体系

集団規定では敷地内のことだけではなく、道路との距離なども規定に含まれた項目です。原則として幅員4m以上の道路に2m以上接することや、用途地域に応じて建築物の用途が制限されたりといったことが定められています。

 

意外と身近な建築基準法

普段あまり法律を意識することが少ない方でも、意外と身近なことが建築基準法に定められていて驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。今お住まいになられている家で快適に暮らせているのも建築基準法のおかげです。新しく家を建てる方も、現在の家に住み続ける方も安全で快適な住環境を維持するためきちんと法規が守られているのかを改めて意識してみるといいかもしれません。