住まいの今と未来をつたえる

住まいのリフォーム用語集

大規模修繕工事とは?

大規模修繕工事とは、建物の全体または複数の部位について長期修繕計画に基づきマンションの快適な居住環境を確保し、資産価値の維持・向上を図るために建物等の経年劣化に対して行う大規模な計画修繕工事のことをいいます。 マンションには専有部分と共用部分があり、共用部分については区分所有者が全員で管理組合を構成し管理を行います。日常の清掃や定期点検、法定点検(エレベーター、消火設備等)は管理組合から管理会社へ委託し行うことが一般的ですが、建物等については経年により劣化しますので、それに対処するため適時適切に修繕工事等を行う必要があります。

大規模修繕工事の範囲

大規模修繕工事を行う際、対象になる箇所と対象にはならない箇所があります。一般的に住戸内の設備や内装を専有部分、その他の部分を共用部分といいます。大規模修繕工事の施工対象となるのは主に共用部分であり、ベランダやルーフバルコニーなどは専用使用権が設定されている共用部分という扱いとなるので対象になることが一般的です。

大規模修繕工事とお金

修繕工事の費用は基本的に修繕積立金によりまかなわれますが、積立金が不足している場合は金融機関から借入れるか、区分所有者から一時金の徴収でまかなう必要があります。 金融機関から借入れる場合は、住宅金融支援機構のマンション共用部分リフォーム融資※や民間金融機関から借入れることになります。また、地方公共団体の中には、住宅金融支援機構の共用部分リフォーム融資に連動して、一定の融資制度等を設けているところもあるので確認してみることもおすすめです。 ※管理組合が実施する共用部分のリフォーム工事や耐震改修工事などの工事費用が対象となる融資のこと。区分所有者が負担する一時金への融資も可能。

大規模修繕工事の流れ

主に以下の流れに沿って大規模修繕工事を実施していきます。 1.修繕委員会の設置 大規模修繕工事を行うには、専門的な知識や技術が必要です。一般的に、会社選定などの準備から工事完成までに3~5年程度かかるといわれています。これを通常1~2年ごとに理事が交代する理事会のみで対応するには、知識や時間に限界が発生してしまうので、大規模修繕工事の期間だけ専門委員会(修繕委員会)を設置して、継続的に検討を行うことが理想的です。 2.調査診断及び改修基本計画の作成 専門会社に依頼して建物の調査診断を行い、建物各部の現状の劣化・損傷の程度・不具合点や問題点、およびマンションが有している性能の程度等を正確に把握し、改修基本計画を作成します。調査診断の時期は、資金計画や合意形成などの運営面からみて、長期修繕計画に定められた工事実施時期の2年前程度に行うことが望ましいと考えられます。 3.改修設計の作成 改修基本計画に基づき、改修設計を作成します。改修設計では、工事をすることで実現しようとする目標値(耐久性・耐用性・居住性等)を定め、そのために工事で必要な材料・工法を記した設計図書(工事仕様書及び設計図)を作成します。 4.工事費見積・施工会社の選定 施工会社を選定するにあたり、まずは工事費の見積りを依頼する会社を選定する必要があります。推薦式または公募式があり、いずれかで選定した会社の工事費の見積りを比較・検討し、最終的に適切であると考える施工会社を決定します。この際、見積書や提示された資料の検討のみでなく、実際に工事を担当する現場代理人(施工担当者)を呼んで、経歴や人柄をチェックするヒアリングも行われることが一般的です。 5.契約の締結 管理組合(発注者)と施工会社(受注者)の間で工事請負契約書を締結します。また、工事監理者との間で工事監理業務委託契約書を交わします。 6.施工実施計画・工事説明会の開催 工事実施請負契約の前提となる工事計画をもとに、施工会社が施工実施計画(工事工程計画・仮設計画・工事施工計画)を検討し、管理組合の意見を踏まえて最終決定します。施工実施計画が出来上がると、工事説明会の資料(簡易な工事実施のしおり等)を配布し、工事説明会を行います。 7.工事着手と監理 工事の適切な実施に向けて、工事工程の進捗状況や施工状況等を厳正にチェックすること(監理)が重要となります。工事の実施期間中は、管理組合、施工会社および工事監理者による報告会を月1回程度は開催し、工事の進捗や施工状況の確認、問題点に対する対策の検討を行ったり、追加・変更工事の検討や承認等を行います。 8.工事検査と竣工後の手続き 工事実施期間中には、管理組合の立ち会いの下で定期的に検査を行います。また、工事の 施工が最終工程を終えた時点で竣工検査を行います。竣工検査では、施工者(会社)検査、監理者検査に加え、管理組合による検査も行います。竣工検査の終了後、施工会社から提出される竣工図書を確認して、調印すると手続きは完了となります。

大規模修繕工事をスムーズに行うためには

建築業界には「段取り八分(だんどりはちぶ)」という言葉があるほど、実際に行う前の準備が大切だといわれています。この言葉は工事を行う側の言葉ですが、工事を契約する顧客側にも言えることではないでしょうか。工事をスムーズに行うためには事前準備として修繕委員全員が大規模修繕工事について学ぶこと、その上で信頼できる設計監理会社や施工会社を選ぶことはとても大切なことです。特に施工会社とは工事後もアフターメンテナンスなどで関わりますし、困ったときに相談できるような信頼関係の築ける施工会社を選ぶためにも、事前にしっかりと知識をつけて大規模修繕工事を行いたいですね。