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住まいのリフォーム用語集

塗膜剥離工法(集塵機付きサンダーケレン工法)

1. 塗膜剥離工法(集塵機付きサンダーケレン工法)とは

には超高圧水洗浄工法や超音波ケレン等いくつかの工法がありますが、今回はサンダーケレン工法とその応用工法についてご紹介します。サンダーケレン工法とはベビーサンダーという電動工具を使用して古い塗装を除去し、新しく塗装面の補修を行う工法のことをいいます。

2.サンダーケレン工法による問題点

ベビーサンダーと呼ばれる電動工具によって行う通常のサンダーケレンでは、大量の粉塵が発生します。コンクリートに付着した塗膜を、ダイヤモンドの入ったカップと呼ばれる刃で削り落とすため、粉塵の他にコンクリートを削る音と機械のモーター音により、劣悪な騒音環境での作業になります。またサンダーケレンの場合、刃が均等にコンクリート面に接地しないため、削り過ぎた刃の跡や削り残しの薄い塗膜が残ってしまいます。

3.粉塵の清掃

通常、掃除機や集塵機を使用して作業を行いますが、大部分が飛散しほとんど効果がありません。サンダーケレン作業完了後の粉塵の回収や高圧水での洗浄に多くの手間が掛かります。また作業員だけでなく、マンションの居住者に対しても、以下のような多大な迷惑が掛かってしまう場合があります。
①換気ガラリからの粉塵の侵入による部屋の内部の汚れ
②サッシの隙間からの粉塵の侵入による部屋の汚れ
③粉塵の付着によるエアコン室外機の故障
④粉塵の侵入によるガス給湯器の基盤の故障
⑤騒音によるストレス

4.左官補修

高圧水洗浄を行った後、凹凸になったコンクリート下地を補修する為、左官工事※にて平滑に仕上げます。サンダーケレンで作業を行った場合、凹凸が多いのでほぼ全面補修になり、工期的にも費用的にも大きなロスが発生します。厚膜塗装を行う場合、下地の凹凸が隠れると考えられ、仕様によっては左官工事の工程が省略されている場合があります。しかし、最終の仕上がりで必ず凹凸が目立ってしまうので左官補修を確実に行う必要があります。
※モルタルなどで躯体の補修を行う工事のこと。

5.集塵機付きサンダーケレン

通常のサンダーケレンに対して集塵機付きサンダーケレンとは、ベビーサンダーにカバーとホースを付け、大型の掃除機のような集塵機で粉塵を吸い込みながら塗膜剥離を行うものです。塗膜の固さや塗膜の塗り重ね回数、塗膜の劣化の状況により変わりますが、1回の作業で塗膜剥離ができない場合は、写真右下のような超音波剥離を先行して行います。超音波剥離とは、大きな「ノミ」の先を超音波のように細かく振動させて塗膜を剥がす工法です。
集塵機付きサンダーケレンは粉塵が出ないだけでなく、サンダーの刃の廻りに付いている丸いカバーによってサンダーの刃が壁に対して平行に保たれるため、削りすぎがなくなり、均一な塗膜剥離が可能になります。よって全面左官補修ということはなくなり、新築時のコンクリートの細かい凹凸や段差補修を行うだけで済むとともに、粉塵が格段に少なくなるため、その後の高圧水洗浄でも多くの手間が軽減されます。

6.養生

集塵機付きサンダーケレンといっても、窓や手摺のコーナー部や幅の狭い部分については、カバーが完全に壁に接しないため、粉塵が飛散する場合もあります。そのため窓や室外機、ガス給湯器、換気ガラリ等の養生が必要になります。なお、この期間は窓を開けて換気が出来なくなり、エアコンの使用も制限されます。ただし、施工状況によっても変わりますが、2~3日間なので他の剥離工法より短い期間で工事が完了します。

7.超音波ケレンの併用

下の写真のような、壁の入隅部や手摺の裏側、雨樋・エアコン室外機の裏側等、集塵機付きサンダーケレンの刃が届かない箇所やサッシや玄関枠との境目で、サンダーの刃と接触するとキズを付けてしまう恐れがある箇所があります。そのような部位に関しては、前述した超音波剥離工法にて刃の先を奥まで入れて、サッシ等をキズ付けないように細かい作業を行います。そのため、建物の形状が複雑になればなるほど剥離の手間が掛かります。

8.塗装仕上げ

最終仕上げで塗装工事を行いますが、通常マンション改修工事での塗り重ねの仕様では、微弾性フィラー1回(下塗り)+水性シリコン(上塗り)2回の合計3回塗りで仕上げます。しかし既存塗膜を撤去しているため、新築時と同様のコンクリート下地となり、通常はシーラーの工程が1回増えますが、この工事は特別な仕様で、カチオンフィラー1回+溶剤シーラー1回+高弾性下地保護材(リベルマイスター)2回+水性シリコン2回の通常より3回塗装工程が多い、合計6回の塗装を行いました。なお右下の写真のように、新築時のコンクリート下地の凹凸が埋まらないことがあります。塗装工事が完了してからの補修は非常に手間が掛かるため、下地の左官補修の段階でしっかり凹凸を処理しておくことが重要になります。