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住まいのリフォーム用語集

インスペクションとは?

現在、建物の劣化状態を知るための検査=“インスペクション”が中古住宅売買における活用で注目されています。リフォーム前に活用されることも多いインスペクションですが、具体的にどのようなことを行うのでしょうか。またインスペクションを行うことのメリット、デメリットをご紹介していきます。中古住宅を購入したい方、売却を考えている方は、インスペクションを知って有効利用を考えてみてはいかがでしょうか。

インスペクションとは?

インスペクションとは、建築士などの建物のプロがその建物の状態をチェックし、修理の必要性や必要な費用をまとめてアドバイスするものを指し、日本では住宅診断と呼ばれることもあります。リフォームを検討時に利用する場合は、プロの診断によるアドバイスを参考にして、今後のリフォーム計画を立てるための指針にとして使われますが、中古アパートやマンションなどの売買を行う際のインスペクションは、建物の価値を正しく把握するために行われるものです。専門家によって住宅が適切な状態であるかや、修繕の必要な場所を診断することで、売る側と買う側の両者がそれを踏まえた上で正しい価値を把握できるというメリットがあります。 インスペクションでチェックされる範囲は基本的には目視することで確認できる部分は全て対象となりますが、いくつかのカテゴリーに分かれており、含まれるのは屋根、外壁、内壁、天井などの表面的な部分、柱や床、床下などの耐久性に関わる部分、そして排水管や給水管、給湯管、換気扇などの配管に関わる設備面などです。その他にも住宅によって有無が分かれるベランダや門なども含まれます。 インスペクションにかかる時間は、物件の広さや形状、チェックをする範囲によっても異なるため一概には言えませんが、ベーシックなチェックを行う場合、平均的には30坪で約2~3時間程度が目安です。しかし、シンプルな作りでチェックする箇所が少ない場合や、一度に診断するスタッフが複数人いるという場合には当然所要時間は短くなりますし、逆に床下や屋根裏などに立ち入る必要がある場所が多い場合や家具などがある状態で行う場合などは、侵入経路の確保などでそれだけ余計に時間が必要となります。 ただし、インスペクションは検査当日に依頼人が立会いをしなくても行えるものなので、物件に行くことができないという方でも依頼は可能です。もちろん、当日立ち会うことで、実際にチェックしている箇所をその場で見ることができますし、調査スタッフにその場で質問をすることができることを考えると、できれば立会いを行なったほうが安心であることは間違いありません。

インスペクションのメリット・デメリット

インスペクションのメリットは、調査を行うことによって物件の状態を客観的に正しく把握することができるため、修理やリフォームの計画を立てやすくなるということが言えます。また、インスペクションを行うことにより、実施前の想定価格よりも高い価格(価値)をつけられる場合もあります。修理やリフォームは行わずに売却をするという場合でも、買い手に事前にインスペクションを実施した事実を伝えることができますので、評価を含めた金額での売買が可能になり、それは売却後のトラブルを防ぐ役割も果たしてくれるでしょう。インスペクションは物件の売却・購入を検討している双方にとってもメリットがあります。統一されたわかりやすい基準で住宅価値を示すことで、中古物件であっても自信を持って売買や安心して購入することができますよね。 このようにメリットが多いインスペクションですが、逆にデメリットもあります。まず挙げられるのはインスペクションを行うことによるコストです。依頼する物件の規模や地域、会社などによって料金は変わってきますが、基本料金は4~5万円、そこにオプション料金などを加算する場合は15万円以上が必要な場合もあります。更に、ここで修理の必要性が判明した場合は修理費用が必要ですので、インスペクションを行うことで売却前に少なくない費用が発生する場合も。しかし、売却する前の初期費用はかさみますが、これによって買い手を見つけるまでの時間を短縮することができる場合もありますし、販売価格を上げることができる可能性もあるので、これは投資とも捉えることができるでしょう。 インスペクションはプロの診断士がチェックするとは言っても目視でのチェックになるため、目視できない部分などによる物件の欠陥は見つけられない場合もあります。さらに、老朽化などが進み、売却ができないほどの状態であるという診断結果がでてしまう可能性もあるのです。もちろん危険な物件を売る訳にはいきませんが、せっかく売却を検討してインスペクションを依頼したものの、改めて売却計画をゼロから見直す必要が出てくる場合もあると考えると、これもデメリットと言えるかもしれません。

インスペクションにより中古住宅市場が変わっていく

これまでの中古住宅は、例え同じ作りで同じ築年数であったとしても、使用状況や周辺環境によって物件の状態は大きく変わるため、新築住宅と比較した場合にその資産価値や販売価格の見極めが難しいという課題がありました。しかし、インスペクションで物件の状態を専門的な視点でチェックができることによって、それを目安にその住宅価値を判断できる可能性が生まれました。住宅購入を予定されている人で、これまでは新築の物件しか考えていなかったという人でも、耐久性の面で安心感のある中古物件であれば検討の幅もひろがるのではないでしょうか。また、中古住宅だからという理由で適正価格が正しく判断されないというリスクも下げることができるため、今まで以上に取引はスムーズにかつ活発に行えるようになると考えられます。インスペクションによって、売り手、買い手、更には不動産会社にとっても良い状態となるため、中古住宅は今後さらに売買されていく可能性があります。

インスペクションが安心安全ないい住まいへの一歩となる

会社や商業施設の場合は定期的に防災設備などの点検が義務付けられており、見直す機会が持たれますが、個人住宅の場合は何をもって安全と言えるのか、どの程度の住宅価値があるのかといった判断が難しいですよね。住宅のプロによって物件の状態を客観的にチェックしてもらえるインスペクションは、ご自身の住まいの安全性を確かめる良い指針になるだけでなく、物件を所有している場合にはその資産価値の目安を正しく捉えることにもつながります。また、日頃の住まいの安全性を守るだけでなく、物件の売却を視野に入れている人にとっても、このインスペクションは買い手に対する信用を得られる投資の1つとも言えるのではないでしょうか。実際にチェックにかかる費用、そして修繕が必要な場合は修繕費用を加えた上でそれに対する販売価格を設定することで、修繕費用以上に販売価格が上がることもあります。安心安全ないい住まいへの一歩として、このインスペクションの利用を検討してみてはいかがでしょうか。