住まいの今と未来をつたえる

住まいのリフォーム用語集

長期修繕計画とは?

皆さんはマンションに「長期修繕計画」というものがあるのをご存知ですか? マンションを購入したのにご存じない方、これから購入される方にぜひ確認していただきたいのが、この「長期修繕計画」です。一戸建てであれば所有者が時期を見計らい、その都度、修繕工事を実施していけばいいのですが、マンションのような複数の所有者が集まった集合住宅となるとそういうわけにはいきません。 なぜならば、金銭的・時期的に所有者にとって都合のよいタイミングを自分で決められる一戸建てと違い、ひとつの世帯の都合に合わせられないマンションの場合には事前に金額や工事時期の目安を出しておき、必要であれば修繕積立金の調整などの管理が必要となってくるためです。それでは長期修繕計画で何をやるべきなのかを、以下で具体的にご説明いたします。

長期修繕計画の目的とやるべきこと

1.将来的に必要な工事の内容や時期、費用の目安を明確にする 最初にマンションを購入した際には、30年を目安に長期修繕計画が組まれています。これは、将来的な劣化に伴う大規模修繕工事の時期や工事内容、費用の目安を明確にすることによって修繕積立金が足りるかどうかを検討するほか、大規模修繕工事に伴う修繕委員会の設置などの準備を行う必要があるためです。 2.必要な修繕積立金の根拠を明確にする 管理組合は毎月、各世帯から管理費と修繕積立金の2種類を集めていますが、管理費は管理人や清掃員などを普段的に見ているので、必要なことが分かりますが、修繕積立金は、修繕工事の際にしか意識することのないお金なので、なかなか理解を得にくいものです。まして長期修繕計画の見直しを行った結果、増額の必要があったり、大規模修繕工事の際に一時金が必要となる可能性があったりする場合は、その根拠を明確にしたうえで、総会で承認を得ることが必要となります。 また、最初の大規模修繕工事の際は修繕積立金が充足していても、2回目以降は建物や設備の劣化も進んでいるため、より多くの修繕費が必要となります。そのため、2回目の大規模修繕工事にむけて修繕積立金を増額しなければならない場合は、なぜ1回目よりも多くかかるのかといった理由も明確に説明しなければならず、劣化状況を含め、より細かい情報が求められます。 3.修繕工事の長期計画について合意することで円滑な修繕工事を行う 大規模修繕工事の検討を開始する際は、修繕委員会を立ち上げるなどして、そこで工事について協議を行った後、理事会で承認を得る流れとなります。検討が必要な内容として、工事の時期や工法、仕様などがありますが、これらを検討・決定するには一定の期間が必要となるはずですので、余裕を持って協議を行い、総会で事前に承認を得ることでスムーズに着工をすることができます。

長期修繕計画の見直し

国土交通省のガイドラインによると、長期修繕計画は5年ごとの見直しが推奨されています。なぜならば、数年経ってみると計画していたほど劣化していなかったり、逆に劣化が激しかったりと同じような建物でも立地条件や管理条件によって状況は異なってくるためです。 また、修繕工事で使われる材料も日々進化していますので、一時的なコストはあがりますが、修繕周期を長くすることができる材料を使うことで、結果的に修繕費を節約できる場合もあります。修繕積立金の見込みに対して修繕費用が安ければ、修繕工事の際に新たな設備を増設することも検討できますので、マンションの資産価値向上にもつながります。長期修繕計画の見直しの手順は以下の通りです。

長期修繕計画の見直しの手順

1.理事会・専門委員会での検討 まずは理事会で見直しについて検討する必要があります。その際、必要に応じて専門委員会を立ち上げる必要もあります。そして理事会や専門委員会で見直しについて検討した後、専門家に依頼し、長期修繕計画の見直しを行うこととなります。 2.専門家への依頼 国土交通省作成の標準様式を参考として長期修繕計画作成業務発注仕様書を作成し、管理組合から専門家へ長期修繕計画の見直しを依頼します。長期修繕計画作成業務発注仕様書を作成することにより、依頼する業務を明確にすることができます。 3.専門家による調査・診断 専門家に依頼した後は、設計図面や修繕履歴を調べ、実際に建物の調査なども行います。必要に応じて区分所有者へのアンケートを行うことで、劣化状況や区分所有者の要望も把握します。 4.工事内容の検討 マンションの現在の状態を踏まえ、区分所有者の望むマンションの性能や機能について検討を行います。また、マンションの築年数によっては建て替えや、耐震工事等が検討されることもあります。 5.総会での決議 理事会や専門委員会で検討を行った後、総会で決議を行います。なお、総会の前に管理組合は説明会などを開催し区分所有者から理解を得るとともに、決議後も資料を配布するなどして周知することが必要です。

長期修繕計画を確認してみよう

マンション購入時は、管理費や修繕積立金など毎月の支払額に注目しがちですが、長期修繕計画から考えてその額が適正なのかどうかも合わせて確認することをおすすめします。なぜならば、最初の大規模修繕工事よりも2回目以降の大規模修繕工事は劣化が進んでいるため高額になることが多く、最初の大規模修繕工事は修繕積立金で足りたけれど2回目は足りなくなったから修繕積立金を増額する……ということもありえるのです。支払うのは区分所有者の義務ですので、修繕積立金が適正額に設定されているのか、また適正に使われているかをしっかり確認してみてはいかがでしょうか。